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1.選挙ポスターとは何か――役割と法的枠組みから読み解く
選挙が近づくと、街の掲示板にずらりと並ぶ候補者のポスター。
その一枚一枚には、顔写真や名前、政党名、そして想いが込められています。
でも実はこの「選挙ポスター」、ただの広告や宣伝とはまったく違う存在なのです。
実際には、公職選挙法という法律に基づき、サイズや掲示のルールが細かく定められた“公的な掲示物”。ここでは、その役割や法的な枠組みについて、できるだけやさしく、でも正確にご紹介していきます。
候補者の“第一印象”を届ける大切なツール
ポスターが果たすもっとも大きな役割は、候補者の顔や名前を有権者の記憶にしっかりと刻むことにあります。
SNSやテレビのように動画や音声は使えませんが、通勤や買い物の途中など、誰もが日常的に目にする掲示板に貼られることで、自然と繰り返し視界に入り、「あの人の顔、なんとなく見たことあるな」と印象に残る。これが、ポスターの持つ視覚的な強みです。
とくに、普段あまり政治に関心のない層にとっては、選挙ポスターこそが候補者と出会う“最初の接点”になることもあります。
一目で顔がわかり、名前と政党がセットで記憶に残る──。そうした第一印象が、投票行動につながるきっかけにもなりうるのです。
サイズ・枚数・期間――すべて法律で決まっています
選挙ポスターは「どこに」「どれくらい」「いつまで貼っていいか」がすべて公職選挙法に定められています。
とくに重要なのが、第143条と第144条。ここでは、ポスターの掲示が許される場所や方法について細かく規定されています。
具体的には、次のようなポイントが挙げられます:
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掲示できるのは、公的に設置された「選挙ポスター掲示板(掲示場)」のみ
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貼ることができるのは、候補者1人につき1枚まで/1掲示場あたり
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掲示の期間は、選挙の公示日(告示日)から投票日前日まで
このように、ポスターは“自由に好きなところに貼っていい”ものではなく、きちんと管理された掲示スペースに、期間限定で貼るものなのです。
選挙の種類によってサイズも違う
ポスターのサイズは選挙の種類によって異なり、印刷会社でも用途に応じたテンプレートが用意されています。
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衆議院小選挙区・参議院選挙区・都道府県知事選挙:
仕上がりサイズは 400mm × 420mm 以下(いわゆる「国政・首長選サイズ」) -
参議院比例代表・地方議員選挙(都道府県議・市区町村議など):
仕上がりサイズは 300mm × 420mm 以下
このサイズは、公職選挙法施行令や各自治体選管が発行する「候補者向け手引き」などに明記されており、印刷の現場でも厳密に守られています。
たとえば、わずかにサイズが超過するだけでも掲示が認められないケースがあるため、正確な仕上がりと断裁精度が非常に重要になります。
“掲示板方式”はいつから始まった?
いま私たちが見慣れている、きれいに整列された掲示板スタイルは、1952年(昭和27年)に法改正されたことで導入されました。
それ以前は、候補者ごとに好きな場所へ貼っていたため、同じ電柱や塀にポスターが重なって貼られたり、剥がし合いのトラブルが起きたりと、混乱が絶えなかったのです。
この問題を解決するために登場したのが、「候補者に等しく割り当てられた掲示板制度」。
以後、選挙管理委員会が掲示場を設置し、候補者ごとに番号付きの枠を与える方式が全国的に広がりました。
第164条にも注目――演説会場にポスターは貼れない
ちなみに、演説会場でのポスター掲示は禁止されています。
これは公職選挙法第164条で明文化されていて、個人演説会の場所や周辺であっても、選挙運動用ポスターを掲示することはできません。
このような禁止規定があることで、「ポスター掲示=どこでも自由にできるものではない」という原則がよりはっきりしてくるのです。
公平性とルールが、選挙の信頼を守っている
ポスターは、単なる宣伝ツールではありません。
「サイズ・場所・枚数・掲示期間」まで厳格に管理されるのは、有権者に公平で信頼性のある情報を届けるためです。
だからこそ、印刷会社の立場からしても、こうした法的ルールに即した制作・納品がとても大切。
サイズのズレひとつで掲示不可になることもあるため、熟練の印刷技術と選挙運動の理解が求められます。
このように、選挙ポスターは見た目以上に「制度」と「信頼」に支えられた存在なのです。
2. 日本に「貼る」選挙文化が芽吹くまで──明治の立て札から昭和の印刷ポスターへ
選挙期間中、街角に並ぶポスター掲示板は今や当たり前の光景です。
けれどもこの「貼る文化」が定着するまでには、印刷技術の進化と選挙制度の整備という、長い道のりがありました。
この章では、明治から昭和にかけて、ポスターがどのように選挙の現場に登場していったのかをたどっていきます。
明治・大正期|立て札や標語板が中心だった時代
明治時代の選挙運動では、現在のようなポスターは存在していませんでした。
代わりに「立て札(たてふだ)」や「標語板」と呼ばれる掲示物が使われ、候補者名やスローガンを街頭に掲げるスタイルが一般的でした。
この頃の印刷技術は、活版印刷や石版印刷(リトグラフ)が中心で、文字情報を刷ったビラや案内状の配布はありましたが、視覚的に訴える“ポスター”的な媒体はまだ珍しかったのです。
しかも、当時は公職選挙法のような選挙活動を細かく規制する法律が整備されておらず、掲示の仕方もバラバラ。候補者ごとに自由な方法で情報を発信していたのが実情でした。
戦後の制度改革|選挙掲示板と印刷ポスターの普及
大きな転機が訪れたのは、第二次世界大戦後。1945年の終戦を経て、選挙制度が民主的に整えられていく中で、印刷物による情報発信が本格化します。
とくに、1946年の第22回衆議院議員総選挙以降は、各地に「選挙ポスター掲示板」が設置され、候補者ごとに一定のスペースが与えられるようになりました。
これは、情報の公平性を確保し、過熱する選挙活動の混乱を防ぐための施策であり、現在の掲示板方式の原型ともいえる仕組みです。
ポスターそのものも、文字だけでなく訴えや政策を盛り込んだ印刷物が増え始め、選挙運動において“掲示するメディア”としての役割が強まっていきます。
昭和30年代〜|印刷技術の進化がポスター文化を後押し
昭和30年代に入ると、印刷業界において大きな技術革新が起こります。
なかでも、オフセット印刷の普及は、選挙ポスターにとって大きな変化をもたらしました。
それまで主流だった二色刷りから、安定した四色(フルカラー)印刷が可能となり、より鮮明でインパクトのあるポスター制作が行えるようになります。
この時代には、候補者の名前だけでなく、表情や雰囲気を“紙面で伝える”意識が高まり、デザイン性の高いポスターが次々と登場するようになりました。
こうした技術の進歩によって、ポスターは単なる掲示物から、有権者の心に訴えるビジュアルツールへと変化していったのです。
結び|「貼る文化」の誕生は、印刷の進歩と制度の整備が育んだ
現在のようなポスター掲示が選挙に欠かせない存在となった背景には、戦後の選挙制度の整備と、それを支えた印刷技術の進歩がありました。
明治の立て札から始まり、昭和の制度改革を経て、ポスターは「情報を公平に、わかりやすく伝える手段」として定着していったのです。
候補者の姿勢や政策が、一枚の紙にどれだけ丁寧に表現できるか。
そこには、ただの印刷物ではない、社会に訴えかけるメディアとしての“選挙ポスター”の姿がありました。
3. デザインの黄金期――平成初期に花開いたコピー×ビジュアル戦略
平成に入り、選挙ポスターは大きな転換期を迎えます。
それまでの「顔写真と名前を並べるだけ」のシンプルな構成から、候補者のメッセージ性や個性を際立たせる“魅せるポスター”へと進化を遂げていくのです。
その背景には、印刷技術の進化とデザイン環境の変化、そして何より「選ばれるためには印象に残らなければならない」という、有権者意識の変化がありました。
この章では、平成初期に起きた選挙ポスターのビジュアル戦略の革新について、印刷会社の視点も交えながら見ていきましょう。
デザイン革命の幕開け──DTPの登場が変えた“つくり方”
1987年、日本に初めて本格的なDTP(デスクトップパブリッシング)ソフトが登場しました。
それまでは、写植機で文字を打ち、製版カメラで版を作り、手作業でレイアウトを調整するという複雑な工程が必要でしたが、このDTPの出現により、一台のパソコンでレイアウトから印刷データの作成までを完結できるようになったのです。
この変化は、選挙ポスターの制作現場にとっても革命的でした。
デザインの自由度が飛躍的に高まり、イメージカラーや視線の誘導、候補者の“言いたいこと”を端的に伝えるキャッチコピーなど、あらゆる要素を一貫して考えながら設計することが可能になりました。
とくに地方の選挙では、少人数のチームでも質の高いポスターを作れるようになったことで、**「内容で勝負する」**という文化が根付き始めた時期でもあります。
ポスターは雨風に耐えなければ──耐候性素材の進化
街角に掲示される選挙ポスターは、晴れの日も雨の日も、風の強い日も、何週間にもわたって人々の目に触れ続けなければなりません。
つまり、単にきれいに印刷するだけでなく、**“屋外で耐えうる紙と加工技術”**が不可欠です。
平成に入り注目を集めたのが、**ユポ紙(合成紙)**の活用です。
水に強く、引き裂きにも強く、インキの発色も良いこの素材は、選挙ポスターの定番として定着していきました。
加えて、グロスやマットのラミネート加工を施すことで、紫外線による色あせや、砂ぼこりによる汚れ、湿気による劣化を防ぐ工夫が進みます。
こうした技術革新により、印刷会社は単なる「印刷を請け負う存在」ではなく、**候補者の戦略を形にする“パートナー”**としての役割を担うようになっていくのです。
平成ポスターは、表現力で戦う時代へ
DTPの普及と屋外素材の進化によって、平成初期のポスターは表現の幅をぐんと広げました。
候補者の性格や政策、そして「誰にどう訴えたいのか」を視覚的に伝えることが当たり前となり、まさに“見せる政治”が始まったとも言えるでしょう。
そして印刷会社では、ポスターの見栄えを整えるだけでなく、「どう見せれば票に繋がるか」という視点で、書体の選び方や色のトーン、人物写真の明るさなどをトータルに提案する場面も増えていきました。
平成ポスターの本質は、「情報を並べる紙」ではなく、候補者の“らしさ”を一瞬で伝える広告です。
この転換が、有権者に届くメッセージの質を大きく変えていったことは間違いありません。
4. 令和時代の選挙ポスター――SNSとの連動とユニバーサルデザイン
令和に入ると、選挙ポスターの役割は“掲示して終わり”ではなく、情報の入り口としての機能を強く持つようになってきました。とくに、若年層の選挙参加が課題とされるなか、ポスターの中に「次のアクション」への導線を組み込む工夫が広がっています。
🔗 QRコード・SNSアイコンがつなぐ“拡張するポスター”
最近の選挙では、公設掲示板に貼られる公式ポスターにも、QRコードやSNSアイコン(X、Instagramなど)が印刷されているケースが目立ちます。
これは単なる装飾ではなく、ポスターを起点としてスマホで候補者のWebサイトや動画にアクセスできる仕組みで、有権者の「もっと知りたい」というニーズに応える導線となっています。
実際、あなたの住む街の掲示板を見てみると、QRコード付きポスターがいくつも並んでいることに気づくかもしれません。
令和のポスターは、印刷物でありながら「デジタルの入口」として機能し始めているのです。
🌈 誰にでも伝わる工夫──ユニバーサルデザインの視点
また、令和の選挙ポスターではユニバーサルデザインの要素も重視されるようになりました。
たとえば、
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読みやすい文字サイズや配色
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高齢者にも視認しやすいレイアウト
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名前や顔写真の明瞭な表示
といった要素は、すべての有権者にとって見やすく、わかりやすいことを意識した設計です。
視覚情報に頼らず、音声読み上げアプリとの連動を視野に入れたデザイン提案なども一部で始まっており、「誰にでも届く」ポスターづくりが着実に進んでいます。
令和のポスターは、かつての“顔と名前を見せる紙”から、情報への窓口となるメディアへと進化しつつあります。
印刷会社にとっても、ただ刷るだけではなく「どうつながるか?」という視点が問われる時代なのです。
5. 世界の選挙ポスターに見る文化の違い――比較でわかる日本独自の制約と強み
日本の選挙ポスターは、公的な印刷物として法的な制限のもと整えられていますが、世界中にはもっと自由で多様な“貼る文化”が広がっています。ここでは、代表的な5か国を取り上げ、それぞれの特徴とともに日本のポスターの強みを浮かび上がらせます。
🇺🇸 アメリカ|コピー重視 × カラーブランディング
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スローガン勝負が基本:「YES WE CAN」「Make America Great Again」など、文字で訴える力が主役。
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顔と背景は後付け:写真が入ることもありますが、言葉の力に重きがあり、投稿やバナーでもコピーが中心。
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政党カラーが明確:民主党=青、共和党=赤というブランディングが徹底。
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DIY文化:支持者自身が手作りで選挙ポスターを配布するなど、自由な発信文化が根付いています。
🇫🇷 フランス|アート性と公共性のバランス
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芸術的ポスター文化:街に出る政治ポスターには、まるでアート作品のようなデザインが共存。
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公共スペースでの統一性:掲示板やサイズなどは定められており、公共空間と調和するフォーマットで展開。
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日本との共通点は「公平掲示」が重視される点ですが、“表現の自由”を生かしたカラーや構図が日本よりも大胆です。
🇩🇪 ドイツ|秩序と統一が際立つルール社会
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党派カラーの徹底:各政党が統一スタイルで展開。街中に同系色のポスターが連なる光景も。
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法による整理:掲示場所や掲示期間は厳格に規定され、日本並みに制度が整備。
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高い視覚識別性:法律と調和したデザインによって、情報伝達の明確さが追求されています。
🇰🇷 韓国|視覚連動 × タレント訴求
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日本と似た構成:顔写真・名前・キャッチコピーという構成が一般的で、視認性を重視したシンプルなレイアウトが主流です。
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芸能人・スポーツ選手の訴求力:芸能界やスポーツ界出身の候補者も多く、知名度や外見の印象を前面に押し出したデザインが多く見られます。
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SNS活用の広がり:ポスターにSNSのアカウント名やアイコンを掲載する例が増えており、有権者との接点をオンラインにも広げようとする動きがみられます。
🇯🇵 日本|制約の中のデザイン力が強み
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厳格な法規制のもとで完成度を追求:サイズ・掲示場所・掲示期間が法律で定められ、すべての候補者が同じ条件下で表現を競います。
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印刷会社による高密度デザイン:「いかに限られた枠組みで印象を残すか」が職人技の見せ所。
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視覚×法的公平性の両立:これは、自由とは異なる枠の中でこそ求められる日本独自の“制約設計力”です。
📝 日本の強みと学びのカギ
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制約が創造を生む:枠があるからこそ、見る人の記憶に残る工夫が加えられる。
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選挙で表現力が磨かれる:政治広報で鍛えられた表現力が、広告・公共表示など他領域にも応用されています。
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国際的に注目されるデザイン力の源泉:「制限の中で際立つメッセージ」が、日本文化の美意識に通じています。
6.印刷現場のリアル──データ入稿から掲示完了までの5ステップ
選挙ポスターは、候補者の「顔」として街に掲示される、非常に重要な印刷物です。
その裏では、わずか数日のうちに企画・デザイン・印刷・納品・仕分けを終わらせるという、驚くほどタイトなスケジュールが動いています。
ここでは、印刷会社の視点から見た、選挙ポスター制作のリアルな流れを5つの工程に分けてご紹介します。
① 入稿チェック:原稿に潜む“うっかり違反”を見逃さない
選挙ポスターの制作が始まると、まず最初に行うのが「入稿データの確認」です。
候補者や選対スタッフから届いたデザインデータに、公職選挙法で定められた要素がすべて含まれているかどうかをチェックします。
たとえば、氏名、政党名、写真、連絡先の記載漏れがないか、また禁止された文言が入っていないかなどを細かく確認。
ここで見落としがあると、印刷後に再作成になってしまうため、初動のチェックが極めて重要です。
② 色校と刷版:写真の印象が票を左右する
デザインデータに問題がなければ、次は印刷用データへの変換と、色味の確認(色校正)に入ります。
候補者の顔写真が使われるポスターでは、「肌の色が赤すぎる」「暗くて印象が悪い」といった微妙な違いが、投票行動に影響することもあるため、慎重な調整が求められます。
実際に使う印刷機で試し刷りする「本機校正」や、印刷会社内のカラーマネジメント環境で確認を行い、RGB→CMYK変換による色のズレをできる限り最小化します。
③ 印刷と加工:耐候性のある仕上げで“雨にも負けない”
印刷工程では、掲示期間中の風雨や日差しにも耐えられるよう、紙やインキにも工夫を凝らします。
とくに推奨されるのが、ユポ紙などの合成紙や耐水性インキ、さらにラミネート加工の併用。
これにより、掲示後にポスターがにじんだり色あせたりするのを防ぎます。
仕上げまでの工程では、印刷→乾燥→断裁→検品→梱包と、一連の作業をすべて時間内にこなさなければなりません。
④ 納品・仕分け:掲示単位での“正確なパック分け”
選挙ポスターの掲示には、地域ごとの区画数に応じた正確な枚数が求められます。
そのため、自治体の指示に従い、エリアごと・候補者ごとにパックを分け、どこに何枚必要かを細かく仕分ける作業が必要です。
この工程では、ラベルの貼り間違いや仕分けミスが致命的なトラブルにつながるため、必ず複数人でのダブルチェック体制をとります。
「間違いゼロ」が求められる、緊張感の高い工程です。
⑤ 納期管理:告示日前の“秒読み”納品体制
選挙ポスターには「掲示可能期間」が定められており、多くの場合、告示日の午前中までに全掲示を完了させる必要があります。
つまり、印刷物はその数日前にはすべての納品・仕分けが完了していなければ間に合いません。
印刷会社では、納期遅延が起きた場合のバックアップ体制も整えており、例えば予備枚数の確保や、万が一の再刷りにも即対応できるよう工程を設計しています。
この“選挙特有の納期感覚”が、一般の商業印刷とは大きく異なる点です。
選挙ポスターの現場では、「とりあえず刷ればいい」という発想は通用しません。
一枚一枚が候補者の命運を左右するからこそ、印刷会社は法令、品質、納期、あらゆる面で“完璧”を求められます。
この緊張感のなかで培われた現場力こそ、選挙ポスターという特殊な印刷物を支える最大の強みなのです。
7.トラブル事例と対策――貼り損じ・色味クレーム・天候被害を防ぐには
選挙ポスターの印刷現場では、短期間で大量の印刷をこなす一方で、ちょっとしたミスが重大な支障に直結するというプレッシャーもあります。
候補者にとっては「人生を左右する選挙」、1枚のポスターで印象が大きく変わるからこそ、印刷会社側にも高い緊張感と責任が求められるのです。
ここでは、これまでに実際に発生した典型的なトラブル事例と、それを未然に防ぐための対策について解説します。
① うっかり違反ポスター──余白や記載内容のミスが命取り
もっとも避けたいのが、公職選挙法に抵触してしまう“違反ポスター”です。
たとえば、以下のようなケースは意外にも多く見られます。
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氏名や政党名、写真などの必須項目が抜けていた
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連絡先の記載漏れ
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選挙運動の事前活動と誤解される表現や文言の使用
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写真や文字が枠からはみ出してサイズ規定を超えていた
これらはすべて、印刷前の段階でチェック可能なミスですが、データ作成者の思い込みや確認不足から見落とされることがあります。
そのため、印刷会社では入稿時に「法令チェックリスト」を用い、1項目ずつ照合しながらレイアウトを確認。場合によっては、候補者サイドに差し戻して再修正してもらうこともあります。
② 色味クレーム──“顔色が変わった”だけで信頼が揺らぐ
選挙ポスターは、顔写真の印象が票に直結するため、色味の違いによるクレームも非常にシビアです。
よくあるのは、以下のような内容:
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「肌が赤すぎて不健康に見える」
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「表情が暗く、怒っているように見える」
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「画面では良かったのに、印刷物はくすんでいる」
これは、**RGB(画面色)とCMYK(印刷色)**の違いや、印刷用紙の質感・照明による見え方の違いなどが原因です。
対策として、希望があれば「本機校正」を実施。実際の印刷機・用紙・インキを使って試し刷りし、**候補者本人やスタッフに“生で確認”**してもらうことで、最終的な色のブレを防いでいます。
③ 天候による劣化──雨・風・直射日光でポスターが台無しに
選挙ポスターは屋外に掲示されるため、耐候性が非常に重要です。
掲示期間中に以下のようなトラブルが起きることがあります:
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雨でインキがにじみ、顔がぼやける
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強風で破れてしまう
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直射日光で色があせる
こうしたトラブルを防ぐため、印刷会社ではユポ紙(合成紙)+耐光インキの組み合わせを標準仕様とし、場合によってはラミネート加工を推奨。掲示期間中も劣化しにくい設計を行っています。
また、「濡れても剥がれにくい糊や裏加工」など、掲示方法を踏まえた対応も求められるため、自治体の指示に合わせて仕様を調整します。
④ 貼り間違い・区画ミス──人的ミスによる“掲示事故”
最後に多いのが、“貼り間違い”などの人的ミスです。
印刷会社が直接掲示するケースは少ないものの、選挙管理委員会や候補者スタッフに納品する段階で、部数や区画の誤配布、ポスターの上下逆貼りなどが発生するリスクがあります。
これを防ぐため、印刷会社では:
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候補者ごとのラベル管理
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梱包単位での目視チェック
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予備枚数の同封(通常5〜10%増し)
などの対策を徹底しています。
とくに掲示日前の夜間作業で発生しやすいトラブルは、「前倒し納品+簡易マニュアル添付」で予防することが実務上のコツです。
印刷会社の責任は「印刷」だけでは終わらない
選挙ポスターにおけるトラブルは、1つ発生しただけでも候補者の信頼を損なう原因になります。
だからこそ、印刷会社の役割は、単に「刷る」ことだけでなく、「確実に安全に届ける」「法律や気候まで加味して仕上げる」といった総合的なサポートが求められるのです。
選挙ポスターとは、候補者の顔そのもの。
その一枚を支える印刷現場には、見えない緊張と技術、そして経験が詰まっているのです。
8.変わるかもしれない選挙ポスター──他分野に見る技術の波と、その可能性
いまやポスターも、紙に印刷して貼るだけの時代ではありません。
商業広告や観光案内の現場では、AR(拡張現実)やQRコード連携、LEDビジョンといった最新技術が続々と導入され、情報伝達のあり方が変わりつつあります。
たとえば、ARポスターでは、紙面にスマートフォンをかざすと動画や音声が浮かび上がり、より立体的に情報を伝えることが可能です。
観光地や美術館、映画のプロモーションなどでは、すでに日常的に使われるようになっています。
また、デジタルサイネージ(電子掲示板)も、都市部を中心に急速に普及しており、公共施設や交通機関では、広告や案内表示を「貼る」から「映す」へと切り替える動きが進んでいます。
しかし、選挙ポスターに関しては、こうした技術の導入はまだほとんど見られません。
理由は明確です。公職選挙法により、掲示方法や公平性が厳密に定められており、新技術を使った掲示が制度上認められていないからです。
たとえばARや電子掲示が“候補者間での公平性を損なう”と判断される可能性がある以上、正式な導入には法整備が欠かせません。
それでも私たちは、こう問いかけることができます。
「選挙ポスターにも、いつかこうした技術が導入される日が来るのだろうか?」と。
現時点では、「紙に刷って、掲示板に貼る」ことが法的に義務付けられているため、しばらくは変わらないでしょう。
しかし将来的には、災害時の対応、情報のアクセシビリティ、選挙のデジタル化といった観点から、少しずつ変化が始まるかもしれません。
選挙ポスターの未来は、技術ではなく制度とともに動いていく――その兆しを、他分野の進化が静かに教えてくれているのかもしれません。
まとめ|選挙ポスターは“社会の鏡”――100年の技術とデザインが導く一票の重み
選挙ポスターは、ただの紙片ではありません。
その一枚には、時代の空気、技術の到達点、候補者の覚悟、そして社会全体の“目線”が映し出されています。
かつては、板に墨で候補者名を記しただけの立て札が、選挙広告の主役でした。
やがて顔写真が入り、色がつき、デザイン性が増し、今ではQRコードやAR技術まで取り込まれるようになっています。
そう、選挙ポスターはいつの時代も、その国の政治と技術、そして文化を映す“鏡”であり続けているのです。
しかし、どれだけ技術が進歩しても、根本にあるのは「人が人を選ぶ」という行為です。
ポスターは、有権者がその第一印象を受け取る“出会いの場”でもあり、「この人に託せるか?」を考えるきっかけでもあります。
だからこそ、私たち印刷会社にとって、選挙ポスターの制作は単なる“印刷業務”ではありません。
ミリ単位のレイアウト調整、色味のバランス、掲示環境に合わせた紙と加工の選定──そのすべてが、候補者の想いを一票につなげるための準備だと考えています。
街角に貼られたポスター一枚が、誰かの“決断”につながるかもしれない。
そう思えば、私たちが手がける印刷の重みは、けっして小さなものではありません。
このブログが、選挙ポスターを単なる掲示物としてではなく、社会と個人を結ぶ“対話の道具”として捉えるきっかけとなれば幸いです。
そして、次に街角でポスターを見かけたとき、その一枚に込められた背景や工夫にも、少しだけ目を向けてみてください。
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