印刷と水の深い関係|濡れないのに水を使う理由を新潟の印刷会社が解説!

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第1章|そもそも印刷って水を使うの?

「印刷=乾いた紙」のイメージのウラに

印刷というと、乾いた紙にインクをのせるドライな工程──そんなイメージがあるのではないでしょうか?たしかに完成品はサラサラと乾いていて、濡れたような印象はどこにもありません。だからこそ、「実は印刷って水を使っているんです」と言うと、多くの人が驚きます。

でも、実はこれは印刷の“常識”のようで“非常識”な面でもあるのです。特にオフセット印刷という最も広く使われている印刷方式では、「水」がとても重要な役割を果たしています。むしろ水がなければ成立しないといっても過言ではありません。

実は“水なし”では成立しない印刷もある

とくに商業印刷や出版物の多くで使われている「平版印刷(オフセット印刷)」は、水と油(インク)が混ざらないという性質を利用しているのが特徴です。ここでは、「印刷しない部分に水を付けることでインクをはじく」という仕組みが使われています。

つまり、水はインクの“ストッパー”として機能しているわけです。
そしてその水は、印刷のたびに版の上に供給される必要があるため、印刷機には専用の“湿し水(しめしみず)”供給システムが組み込まれています

印刷の裏方では、紙の上にインクをのせるより前に、「水で塗り分ける」という大切なプロセスが行われているのです。


第2章|オフセット印刷と“湿し水”の関係

水と油は混ざらない性質を逆手にとった技術

オフセット印刷の原理は、「水と油は混ざらない」という自然界の法則をうまく利用した印刷方式です。
印刷版の表面には、「画像を印刷する部分(親油性)」と「画像を印刷しない部分(親水性)」があります。

印刷工程ではまず、親水性の部分に水(湿し水)を供給し、そのあとインクをのせるという順序をとります。すると、油性インクは水がついている部分にははじかれて定着せず、画像部分のみにインクが乗る、というわけです。

このようにして、水は“印刷しない部分を守るバリア”として働いているのです。


版の非画像部に水をつけて、インクをはじく

湿し水は常に微細な膜として版の表面に供給され、インクの付着を防ぎます。版の寿命や印刷の品質を左右するため、湿し水の量や成分のコントロールは極めて重要です。

実際の印刷現場では、湿し水には水道水だけでなく、pH調整剤や界面活性剤、アルコール類などが加えられた専用の液体が使われます。これにより、水とインクの境界が安定し、ムラなく美しい印刷が可能になります。


印刷後はどうして紙が濡れないの?

ここで気になるのが「水を使っているなら、紙は濡れてしまうのでは?」という疑問です。
確かに紙に水が付けばふやけたり波打ったりしそうですが──

答えはNO。紙は濡れていません。

理由は以下の通りです:

  • 湿し水はあくまで「版の表面」に使われるもので、紙にまで届かない

  • インクが紙に転写される時点では、すでに水と油の役割が終わっている

  • 印刷直後に熱風乾燥や吸収で水分が飛ばされる仕組みがある

つまり、水は印刷の“裏側”で使われている存在なのです。

紙は濡らさず、版の上だけで水を使い分ける──まさに**印刷職人の技と機械の精度が光る“絶妙なバランス”**がここにあります。


第3章|水性インクって何?水に濡れるの?

水性=にじむと思ってない?

「水性インク」と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは“にじむ”“消える”“水で落ちる”といったイメージかもしれません。実際、子どもの頃に使った水性ペンや、家庭用プリンターのインクが、少し水がかかるだけでにじんだ経験がある方も多いでしょう。

でも、印刷現場で使われる水性インクは、それとはまったく別物です。

特に近年では、水性インクが劇的に進化し、商業印刷やパッケージ、段ボール印刷などの分野でも広く活用されるようになっています。


速乾性・顔料・コーティング技術で進化

現代の水性インクは、「にじまない・落ちない・くっきり発色」の三拍子がそろっています。
その理由は主に以下の3点:

  1. 顔料ベースのインク
     水に溶ける「染料」ではなく、紙の表面に定着しやすい「顔料」を使用することで、耐水性が大幅アップ。

  2. 速乾性の向上
     紙にのせた瞬間に乾くよう、インクの成分バランスや粒子サイズが精密に調整されている。

  3. 専用コーティング紙の併用
     インクの吸収や定着に優れた用紙と組み合わせることで、にじみを防止。

つまり、「水性=水に弱い」というのは、もはや過去の話。条件がそろえば、油性インクに匹敵する仕上がりが可能なのです。


環境対応型インクとしても注目

さらに注目したいのが、水性インクは環境負荷が低いという点。
揮発性有機化合物(VOC)がほとんど発生しないため、印刷工場の作業環境改善や、SDGs対応の観点からも注目されています。

段ボール、食品パッケージ、エコバッグなど、環境を意識した印刷物に最適なインクとして、今後ますます需要が伸びていくと考えられています。


水に強く、環境にもやさしい──
「水性インク」の常識は、すでに大きく塗り替えられつつあるのです。


第4章|湿度と印刷|実は湿気も大敵

紙が吸湿すると印刷ズレやシワの原因に

印刷において“水”は欠かせない存在ですが、空気中の“湿気”はむしろ大敵です。
なぜなら紙は植物由来の素材で、空気中の水分を吸いやすい性質を持っているからです。

たとえば湿度の高い梅雨や夏場などでは、紙が湿気を吸ってしまい、

  • 紙がふやけて伸びる

  • サイズが微妙に変わる

  • 裏面が波打つ

  • インクの定着が不安定になる

…といったトラブルが起こることも。
結果として、印刷面のズレやにじみにつながり、仕上がりの品質が落ちてしまいます。


湿度管理には日々気を配る

印刷会社は湿度による印刷トラブルを防ぐために、日々の温湿度に注意を払いながら作業を行っています。
印刷機や用紙の状態にあわせて空調を調整したり、紙の保管方法に工夫を加えたりと、設備に頼りきらない“現場感覚”の対応を大切にしています。

  • 印刷前後の空調をしっかり管理

  • 紙は必要な分だけ開封し、なるべく湿気を吸わないよう保管

  • 季節や天気に合わせて、紙や印刷タイミングを工夫

また、紙の種類によっても湿気への強さは異なるため、用途に応じた用紙選びも大切なポイントです。


「少しジメジメしてるな」と感じたときこそ注意。
見えない湿気との向き合い方ひとつで、印刷の仕上がりは大きく変わります。

水を味方につける一方で、湿気には細心の注意を払う──それがプロの現場です。


第5章|じゃあ濡れた紙に印刷できる?

基本はNG。でも乾燥が不十分な紙も実はある

結論から言うと──濡れた紙に印刷するのは基本的にNGです。

なぜかというと、水分を含んだ紙は次のようなトラブルを引き起こすからです。

  • インクがはじかれて定着しない

  • 印刷面にムラやにじみが出る

  • 乾燥時に波打ちや変形が起きる

  • 印刷機内部が湿気で劣化する可能性も

このため、印刷現場では**「紙は乾燥していることが大前提」**とされています。

とはいえ、実は「完全に乾いた紙」などというものは存在しません。
紙は常に空気中の水分と“呼吸”していて、印刷会社に届く時点でも数%の水分を含んでいます。

印刷前に行う「紙の環境順応(アクライマタイジング)」も、この“わずかな水分差”によるトラブルを防ぐためなのです。


乾燥工程・吸水性・紙の種類によって変わる

紙の“濡れやすさ”や“にじみやすさ”は、紙の種類によっても大きく異なります。

紙の種類 吸水性 特徴
上質紙 高い インクが染み込みやすい。乾きやすいがにじみやすい。
コート紙 低い 表面が滑らかで水を弾く。水分が残るとムラが出やすい。
クラフト紙 中程度 やや粗めで吸水はするが乾きも早い。

また、印刷方式によっても対応できる水分量は異なります。たとえばフレキソ印刷やグラビア印刷では、ある程度湿気に強い設計がされていますが、それでも過度な水分はNG。

つまり、「ちょっと濡れてるだけなら大丈夫でしょ?」と思っていると、思わぬ印刷不良につながるリスクがあるというわけです。


紙は“乾いているようで乾いていない”、そして“湿っているようで濡れてはいない”──
そんな微妙なバランスの中で、印刷現場は繊細にコントロールされているのです。


第6章|印刷現場での“水”の使われ方まとめ

オフセット印刷機での水循環システム

印刷工場で最も多く水を使うのが、オフセット印刷機の「湿し水」循環システムです。
印刷中、湿し水は版に常に供給され続けるため、印刷機には専用の「水供給装置」と「回収・ろ過装置」がセットで搭載されています。

湿し水は循環しながら再利用されますが、印刷が進むにつれてインク成分や紙粉が混じるため、定期的にフィルターでろ過され、必要に応じて新しい水と交換されます。

つまり、**水は「使いっぱなし」ではなく、「管理された資源」**として活用されているのです。


湿度調整や紙の保管でも水分との闘い

また、水は「液体」として使うだけではありません。
空気中の湿気=水分をコントロールすることも、印刷の品質管理には不可欠です。

印刷工場の空調は、通常のオフィス以上に精密です。なぜなら、湿度が変わると…

  • 紙の状態が変化する

  • インクの乾燥スピードが変わる

  • 静電気や摩擦トラブルが起きやすくなる

…など、**印刷品質に直結するさまざまな問題が発生するからです。

さらに、紙の保管庫や資材置き場でも、湿度を常に一定に保つよう管理されています。


水は「印刷物に直接かけるもの」ではなく、

  • 版の上でインクの動きを制御し、

  • 工場の空気の中で紙の状態をコントロールし、

  • 設備の中で循環されながら品質を支えている。

つまり、印刷現場は“見えない水”との戦いの場でもあるのです。


第7章|印刷=ドライな仕事じゃなかった!?

“濡らしてるのに濡らさない”プロの技術

「印刷って、インクを乗せるだけの乾いた作業でしょ?」
そう思っていた方にとって、このブログは驚きの連続だったかもしれません。

実際は、印刷の多くは“水を制する者が品質を制す”世界です。

  • インクがのるかのらないか、湿し水の量とタイミングにかかっている

  • 紙が波打たないよう、湿気の吸収を制御する

  • にじませないために、インクと紙と湿度のバランスをとる

どれも一見目立たない工程ですが、ここに印刷のプロの技術が詰まっています。
“濡らしているのに、濡らしていないように見せる”──これはまさに、職人芸といえるのです。


水と紙とインクの絶妙なバランスで成り立っている

印刷の現場は、ただの機械作業ではありません。
水・紙・インクという異なる性質のものを、絶妙なバランスで組み合わせる繊細な仕事です。

水が多すぎればにじみ、少なければインクが広がりすぎる。
紙が湿っていればズレるし、乾きすぎていれば静電気や巻き取り不良が起きる。

まさに“水の扱い方”ひとつで、仕上がりの善し悪しが決まるのが、印刷という世界。

印刷物が手元に届いたとき、その裏側には「見えない水との格闘」があった──
そう思うと、なんだか紙一枚がちょっと誇らしく見えてきませんか?


🧴コラム|お風呂で読める?耐水印刷とユポ紙の世界

「水は印刷の敵」と言われてきた一方で、“濡れても読める印刷物”が求められる場面もあります。
たとえば──

  • お風呂に貼る学習ポスター

  • 雨天でも配布される屋外チラシ

  • 防災マップや救急マニュアル

  • 漁業・農業などの水場で使う伝票

  • キャンプや登山の装備品ラベル

こういった用途に使われているのが、「耐水印刷」と呼ばれる技術です。


ユポ紙とは?印刷できる“紙っぽいプラスチック”

耐水印刷の代表的な素材が「ユポ(YUPO)紙」。
これは実は“紙”ではなく、ポリプロピレン(PP)樹脂をベースとした合成紙です。

特徴は以下のとおり:

  • 完全耐水・耐油

  • 破れにくく丈夫

  • 発色が良く、印刷適性が高い

  • リサイクル可能な環境配慮素材

ユポ紙は見た目も手触りも紙に近いため、水に強いけど紙っぽい印刷物が欲しいときに最適な選択肢です。

▶併せて読みたい記事 ユポ紙とは?耐水・耐久に優れた合成紙を印刷会社がわかりやすく解説|株式会社新潟フレキソ


インクも耐水仕様に進化中

耐水性を持たせるには、紙だけでなくインクの選定も重要です。
油性インク、水性顔料インク、UVインクなどを使い分けることで、ユポや合成紙にもしっかり印刷できて、濡れても落ちない印刷が可能になります。


つまり、現代の印刷は「水から守る」だけでなく、
「水の中でも使える」印刷へと進化しているのです。


🧾まとめ|見えない“水の力”が、印刷を支えている

「印刷って水を使うの?」──そんな素朴な疑問から始まった今回のテーマ。
実際には、印刷は“水とインクと紙”のバランスの上に成り立つ、極めて繊細な世界でした。

  • オフセット印刷では、湿し水がインクの定着をコントロール

  • 水性インクは“にじむ”どころか、今や環境対応の主役に

  • 紙は湿気に弱く、印刷品質は湿度管理に左右される

  • 濡れた紙はNGだが、印刷前から水分調整は始まっている

  • 工場では水を循環・管理しながら、高精度な印刷を実現

  • そして今では、水に強い耐水印刷・ユポ紙なども登場

「水は印刷の敵であり、味方でもある」
この微妙な関係を操るのが、印刷のプロフェッショナルたちなのです。

普段手にしているチラシや本、パッケージの一枚にも、“濡らしてないのに、濡らしている”ような繊細な職人の技術が込められている──
そう思うと、印刷って、やっぱりすごい。


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