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輪転機とは?──ロール紙を途切れなく走らせる“量産の王様”
もしあなたが朝の通勤列車で新聞を広げた経験があるなら、その紙面はほぼ間違いなく輪転機(web press)で刷られています。輪転機のいちばん大きな特徴は、紙を一枚ずつではなくロール状(ウェブ)で供給し、版が取り付けられた円筒(版胴)と圧胴が高速回転しながらインキを転写していく点にあります。平らな版を往復させる旧来のフラットベッド機に比べ、往復運動によるムダな停止がないため、理論上は止まらずに何万メートルもの紙を連続印刷できる──それが「輪転」の語源でもある“rotation(回転)”の力です。
枚葉印刷機との違い――“紙の送り方”がすべてを決める
枚葉機ではカット済みの紙を一枚ずつフィーダーで送ります。用紙サイズや厚みに柔軟ですが、紙をつかんで離す動作が入るぶん、常に加速→停止→加速の負荷がかかり、速度面ではどうしても輪転機にかないません。商業用の現行新聞輪転機なら1時間に6万部規模をこなすモデルも珍しくなく、部数が多いほどセット替えのコストも薄まるため、チラシやカタログのような大量・短納期案件で真価を発揮します。
どうして“新聞機”の代名詞になったのか
19世紀半ば、リチャード・マーチ・ホーが考案したシリンダー式輪転機は1846年に米紙The Sunへ導入され、従来の平圧機をはるかに凌ぐ高速性で新聞業界に衝撃を与えました。以降、ウィリアム・ブロックの自動給紙・自動折り機構など改良が続き、夜明け前に刷り上がった新聞を全国に配送する今日の“早刷り体制”が確立します。輪転機=新聞機というイメージは、この**「早く・大量に・折りまで一気通貫」**という要請とともに根付いた歴史的背景から来ているのです。
今も色あせない3つの価値
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速度:毎時数万部レベルのスループット
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コスト効率:ロール紙と連続運転で用紙ロスが少ない
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後加工の一体化:折り・断裁・綴じまでライン内で完結
デジタル化が進んでも、大量配布を前提とする紙媒体がゼロにはならない限り、輪転機は“量産のインフラ”として君臨し続けます。次章では、その仕組みを給紙・印刷・折りの3ステップに分け、図がなくても理解できるよう丁寧にひも解いていきましょう。
第1章|輪転機とは?──ロール紙でどんどん刷れる“スピード印刷機”
朝の通勤時間、新聞を広げる人の手元をふと見てみると、そこには毎日大量に印刷されている紙面が広がっています。こうした新聞やチラシなどを**ものすごいスピードで印刷できるのが「輪転機(りんてんき)」**と呼ばれる印刷機です。
輪転機のいちばんの特徴は、ロール状の紙(巻き取り紙)を使って、止まることなく連続で印刷できること。しかも、紙を挟んで回転する2本のローラー(版胴と圧胴)がぐるぐると動きながら、インクを次々と紙に転写していくしくみになっています。
この「止まらないでどんどん刷る」という特徴が、輪転機という名前の由来になっているんです。英語では “rotary press” と呼ばれていて、rotation=回転から来ています。
枚葉印刷機との違いは「紙の出し方」にある
印刷機にはもうひとつ、「枚葉(まいよう)印刷機」と呼ばれる種類があります。こちらは、あらかじめカットされた紙を1枚ずつ送って印刷する仕組み。小ロットや高画質を求める印刷に向いています。
一方、輪転機は切れていないロール紙をぐいぐい巻き出しながら、高速で印刷していくタイプ。そのスピード感は圧倒的で、1時間に6万部以上を刷れるモデルもあります。とくに、チラシや新聞のように「同じものを何万枚も」「短時間で」仕上げる必要がある印刷物にぴったりな印刷機です。
輪転機が「新聞印刷の代名詞」となった理由
輪転機が生まれたのは19世紀のこと。アメリカの発明家**リチャード・マーチ・ホー(Richard March Hoe)**が、シリンダー(円筒)を使った回転式の印刷機を考案したのが始まりです。
1846年には、ニューヨークの新聞『The Sun』に導入され、これまでの平らな版を使う印刷機よりもずっと速く印刷できると話題になりました。
さらに1865年には**ウィリアム・ブロック(William Bullock)という技術者が、自動で紙を送り、自動で折ってくれる機能まで搭載したことで、「紙をセットしたら、刷って折って出てくる」**という一体型の流れが完成します。
このようにして、毎日朝早くに刷り終え、全国に届ける新聞の印刷を支える仕組みができあがっていったのです。
そのため、「輪転機=新聞用の印刷機」というイメージが今でも根強く残っています。
今でも選ばれる輪転機の3つの強み
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とにかく速い:1時間に何万部も印刷できるスピード
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コストを抑えられる:ロール紙を無駄なく使えて、長時間の連続運転が可能
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仕上がりまで一気通貫:印刷だけでなく、折り加工や断裁も自動でできる
最近ではデジタル印刷も広がっていますが、「大量に・すばやく・安定した品質で」印刷したい場面では、今も輪転機が現役で活躍しています。
次の章では、この輪転機の仕組みを、できるだけわかりやすく3つのステップに分けてご紹介します。
第2章|輪転機の仕組みを3ステップで解説
輪転機って、実物を見たことがないと少し難しく感じるかもしれません。でも大丈夫。ここでは、複雑に見える輪転機の動きをたった3つのステップに分けてご説明します。
図がなくてもイメージしやすいよう、実際の印刷現場を想像しながら、順を追って見ていきましょう。
ステップ1:ロール紙が巻き出される「給紙部」
輪転機は、あらかじめ巨大なロール状に巻かれた紙(巻取り紙)を使います。
まず最初に、このロール紙が自動でほどけるようにして供給されるのが「給紙部」です。
この部分では、紙がたるまず、かつ引っ張られすぎないように張力(テンション)を調整する機構が働いています。紙は細く長く、1ロールあたり数キロメートルに及ぶこともあります。
給紙ユニットは、途中で紙が切れた場合にもスムーズに次のロールへ切り替えられるよう、2本のロール紙を同時にセットできる構造になっていることが多いです。
ステップ2:版胴と圧胴でインキを転写する「印刷部」
次に、ロール紙が向かうのは「印刷ユニット」と呼ばれるエリアです。ここが、輪転機の心臓部にあたります。
ここではまず、印刷したい内容を転写するための**「版胴(はんどう)」**が登場します。
この円筒状の版胴には、刷りたいデザインや文字がセットされており、インキがここに付けられます。
インキのついた版胴は、**「ブランケット胴」**と呼ばれるゴムローラーを経由して、紙にインキを押しつけます。そしてもう一方にある「圧胴(あつどう)」が紙を支えて、きれいにインキが転写される──このような流れで、回転しながら紙に印刷されるのです。
この構造は「オフセット印刷」によく使われていて、版から直接ではなく、一度ゴムに転写してから紙へ移すことで、よりシャープな印刷を可能にしています。
ステップ3:刷った紙を自動で仕上げる「折り・断裁部」
印刷されたロール紙は、まだ“長い帯状”のままです。そこで最後のステップとなるのが、「折機(おりき)」と呼ばれる部分。
ここでは、印刷された紙が決まったサイズに自動で折り畳まれたり、断裁されたりします。新聞なら見開きサイズ、チラシならA4・B4など。輪転機の種類によっては**ホチキス留め(中綴じ)やのり付け加工(無線綴じ)**までできるものもあり、1台で「刷って・折って・仕上げる」までが完結するのです。
この折りユニットが一体化していることが、輪転機が「大量印刷に向いている」最大の理由のひとつでもあります。
実は裏で、こんな制御技術も働いている
輪転機の運転中は、紙のズレを防ぐためにレジスター制御(見当合わせ)や、色ムラを抑えるためのインキ濃度センサーなど、細かい制御技術も同時に作動しています。こうした自動制御があるからこそ、何万枚刷っても同じ品質が保たれるのです。
まとめ:輪転機の仕組みは「走る紙に合わせて動く印刷工場」
こうして見てみると、輪転機はまるで「走っている紙に合わせて動く工場」のようなもの。
1本のロール紙が、止まることなく給紙され、印刷され、折られて、完成品として送り出されていく──それが輪転機のスゴさなんです。
次の章では、この輪転機がどうやって生まれ、今のカタチに進化してきたのか、その歴史をひもといていきます。
第3章|輪転機の歴史:新聞印刷に革命を起こしたふたりの発明家
いまでは当たり前のように毎朝届く新聞ですが、19世紀のはじめまでは、一枚一枚を手作業に近い形で印刷していた時代がありました。
そんななか登場したのが、紙を止めずに連続して印刷できる「輪転機」。
この仕組みを最初に形にしたのが、アメリカの発明家**リチャード・マーチ・ホー(Richard March Hoe)**でした。
1843年、世界初の「回転式印刷機」が誕生
ホーは、印刷のスピードと効率を高めるために、シリンダー状の版胴を水平に配置し、それを回転させる仕組みを考案しました。それまでは平らな版を上下に動かす「平圧機」が主流でしたが、回転させれば動きに無駄がなく、はるかに高速な印刷が可能になると考えたのです。
このアイデアは1843年に特許を取得し、数年の改良を経て、1846年にニューヨークの新聞社『The Sun』が初めて実用化しました。これにより、1時間あたり約8000枚という驚異的な印刷速度が実現され、新聞業界は一気に加速していきます。
▶併せて読みたい記事 リチャード・マーチ・ホーとロータリー印刷機の革命|“止まらない印刷”が新聞と社会を変えた日
1865年、ウィリアム・ブロックが「自動化」を完成させる
ホーが印刷のスピードを飛躍的に高めた一方で、その仕組みはまだ人の手で紙をセットする必要がありました。ここにさらに革新をもたらしたのが、同じくアメリカの技術者、**ウィリアム・ブロック(William Bullock)**です。
ブロックは1865年、紙をロール状のまま自動で給紙する輪転機を開発しました。しかも、印刷が終わった紙を自動で折る機構まで備えていたため、作業員の手をほとんど介さずに「印刷物がそのまま完成して出てくる」状態を実現します。
この機械は、“ブロック式輪転機”と呼ばれ、1870年代以降、アメリカ各地の新聞社に次々と導入されました。結果、大量印刷と短納期が可能になり、新聞というメディアの普及を後押しする原動力となったのです。
▶併せて読みたい記事 輪転機の常識を変えた男──ウィリアム・ブロックと“新聞印刷の自動化”が始まった日
なぜ新聞印刷で輪転機が広がったのか?
当時の新聞業界では、都市の人口が急増し、それに比例して読者数も増えていました。しかし、手作業に近い平圧機では部数を増やすにも限界がありました。
そこに登場したのが、回転による高速印刷と、自動給紙・自動折りまでを備えた輪転機。まさに時代が求めていた答えそのものでした。
「朝刊を朝までに何十万部も刷り終える」という、現代では当たり前の印刷スケジュールが実現できるようになったのは、この2人の発明家による功績にほかなりません。
まとめ:輪転機の誕生は「新聞のかたち」を変えた出来事だった
リチャード・ホーが回転式の印刷機を発明し、ウィリアム・ブロックがそれを自動化したことで、新聞は「一部ずつ刷って届けるもの」から「短時間で一斉に届けられる大量メディア」へと変貌しました。
輪転機は単なる印刷機ではなく、情報流通のスピードそのものを変えた発明だったのです。
次の章では、この輪転機がその後どのように進化し、いま私たちの身近に使われているのか、その種類と用途について見ていきましょう。
第4章|輪転機の種類と用途:どう違って、どう使われている?
輪転機とひとくちに言っても、実はひとつの形式だけではありません。
印刷の方式や使う用途によって、さまざまな種類の輪転機が開発されてきました。
この章では、現在主に使われている輪転機の代表的なタイプをわかりやすく紹介しながら、どんな印刷物に使われているのかを見ていきましょう。
凸版輪転機(レタープレス・ロタリープレス)──新聞に多く使われた原点
かつて新聞印刷の主役だったのが、凸版(とっぱん)輪転機です。
この方式では、文字や図が浮き出た金属版にインキをのせて、直接紙に転写します。
いわば、ゴム印を押すようなイメージです。
この凸版輪転は、耐久性が高くスピードにも優れていたため、長年にわたって世界中の新聞印刷所で活躍してきました。ただし、細かい色調表現には向かず、写真の再現などでは後述するオフセット方式に劣る場面もありました。
オフセット輪転機──チラシや雑誌で大活躍の高精度タイプ
現在もっとも多く使われているのがオフセット輪転機です。
この方式では、版につけたインキを一度ブランケット(ゴム胴)に転写し、そのあと紙に写すという“中継型”の構造が特長です。
直接印刷する凸版と違い、圧が均一にかかるため、細かい線や写真もきれいに再現できるのが最大のメリット。
また、色の重ね方も正確にコントロールできるため、チラシや雑誌などカラフルな商業印刷物に最適です。
フレキソ輪転機──段ボールや包装紙など特殊用途に強い
聞きなれないかもしれませんが、フレキソ輪転機(フレキソ印刷機)も重要な存在です。
これは、やわらかい樹脂版を使って、段ボールやフィルム、紙袋など厚みや素材にクセのあるものにも印刷できるのが特長です。
インキは水性やUV対応のものが多く、環境対応が求められるパッケージ印刷の分野で近年注目が高まっています。
また、乾燥が早くスピード印刷に向いている点も魅力のひとつです。
フル輪転・ハーフ輪転・4×2輪転…多彩な構成も存在
輪転機は、給紙幅や版面サイズ、同時に使う色数によっても分類されます。代表的な用語は以下のとおりです。
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フル輪転:新聞や大型チラシで使われるフル幅(1,000mm超)対応
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ハーフ輪転:用紙幅が半分(500mm前後)のコンパクトタイプ
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4×2輪転:両面4色を同時に印刷しつつ、2ページずつ断裁する構成(ページ物に強い)
こうした構成の違いは、**「どんな紙を、どれだけ速く、何色で印刷したいか」**という用途に応じて選ばれていきます。
用途別まとめ:輪転機はこう使い分けられている
輪転機のタイプによって、得意とする用途ははっきり分かれています。
印刷物の種類 | 主な輪転機タイプ | 理由 |
---|---|---|
新聞 | 凸版輪転 → オフ輪へ移行中 | スピードとコストが最優先だから |
チラシ・カタログ | オフセット輪転 | 発色と大量部数に対応できる |
段ボール・包装紙 | フレキソ輪転 | 素材対応と環境性が求められる |
雑誌・冊子 | 4×2オフ輪など構成重視 | 両面カラー・中綴じ対応などが必須 |
輪転機は、**「1枚ずつではなく連続で刷る」**という共通の仕組みを持ちながら、印刷物ごとのニーズに応じて進化してきたのです。
まとめ:輪転機の“多様性”こそが印刷を支えている
高速印刷という共通点はあっても、輪転機にはいろいろな“顔”があります。
新聞、チラシ、段ボール、雑誌…どの印刷現場でも、それぞれに適した輪転機があり、目的に合った選択が生産効率と品質を左右するのです。
次の章では、輪転機と枚葉印刷の違いを具体的に比較しながら、印刷方式の選び方についてお話ししていきます。
第5章|枚葉印刷との違いは?発注前に知っておきたい判断ポイント
「印刷物を作りたいけれど、輪転印刷と枚葉印刷、どちらを選べばいいの?」
この疑問は、印刷を発注するときに多くの方がぶつかるポイントです。
どちらも同じ「紙に印刷する機械」ですが、実は仕組みも、得意分野も大きく異なります。
ここでは、両者のちがいをやさしく整理しながら、用途に合った選び方を見ていきましょう。
輪転印刷は「大量・高速」、枚葉印刷は「多品種・高品質」が得意
まず、**輪転印刷(ロール紙方式)**の最大の特長は、やはりスピードです。
ロール紙を止めずに送り続けて印刷するため、1時間に数万部という規模でも対応できます。チラシや新聞など、「同じものを一気に大量に刷りたい」という場面に向いています。
一方の**枚葉印刷(カット紙方式)**は、あらかじめ切られた紙を1枚ずつ送る方式。1枚ごとに丁寧に扱えるため、厚紙・変形サイズ・特殊紙などにも柔軟に対応できます。小ロットやデザイン性を重視する印刷に最適です(※1)。
「品質が高いのはどっち?」──実は差があるようで、差がない
かつては、「輪転機=スピード重視で品質はそこそこ」「枚葉機=高精細」というイメージもありました。
しかし近年では、輪転印刷機も技術が進化し、オフセット輪転機では写真や細かい文字も十分きれいに再現できます。
用途に適した機種・条件で印刷すれば、両者の品質に大きな差は感じられなくなってきているのが現状です。
ただし、厚紙・凹凸紙・箔押しなどの特殊加工を施す場合は、やはり枚葉印刷の方が有利です。
「コスト面」でのちがいは、部数によって変わる
印刷コストは、部数と印刷方式のかけ合わせで変動します。
-
少部数(〜1,000部程度):セット替えの手間が少ない枚葉印刷が有利
-
中~大量部数(1万部〜):1回あたりの準備工程が薄まる輪転印刷が圧倒的に有利
とくに輪転印刷では、折りや断裁、綴じ加工などがライン内で完了するため、後加工費を抑えやすい点も見逃せません。
実際の例で比べてみると…
印刷物の種類 | 向いている印刷方式 | 理由 |
---|---|---|
新聞(数万部) | 輪転印刷 | とにかく速く、大量に。毎朝の配布に間に合わせるため |
高級パンフレット(1,000部) | 枚葉印刷 | 紙質や見た目重視。厚紙や特殊加工がしやすい |
折込チラシ(5万部) | 輪転印刷 | コストと納期を最優先。仕上げまで自動化可能 |
名刺やDM(少量多種) | 枚葉印刷 or デジタル | 多品種小ロット対応に向いている |
このように、何を印刷するか、何部必要かによって、ベストな選択肢は変わってきます。
まとめ:「どちらがいいか」ではなく「なにを作るか」で選ぶ
輪転印刷と枚葉印刷には、それぞれの強みがあります。
そしてそれは、優劣ではなく“向き・不向き”の違いです。
印刷の方式を知っておくことで、「なんとなく」で発注せずに、目的に合わせた最適な判断ができるようになります。
次の章では、こうした方式の進化を経て、輪転機が今も第一線で使われている理由について、時代背景も含めてお話しします。
第6章|なぜ今も輪転機が使われ続けているのか?
デジタル印刷やWeb広告が広がる今、「印刷の主役はもう変わったのでは?」と思われるかもしれません。
たしかに、少部数やパーソナライズにはオンデマンド印刷が向いています。
それでも、輪転機はいまも現役で使われ、進化を続けているのです。
なぜ、紙の時代が終わったとさえ言われる今も、輪転印刷は選ばれているのでしょうか?
そこには、“効率”と“実務”を支える理由がはっきりと存在しています。
理由①|「大量に・一気に・安く」印刷できる唯一の手段
輪転印刷の最大の強みは、やはりスピードとコスト。
1時間に数万部を超える印刷スピードをもちながら、ロール紙を無駄なく使い、折りや断裁までも自動でこなせます。
たとえば、新聞や折込チラシは、「全国に同時に配る」という目的のもと、短時間で数十万〜数百万部を一気に刷る必要があります。こうした“物量を前提とした印刷”に、輪転機以外の選択肢はほぼ存在しません。
しかも、1部あたりの印刷単価が圧倒的に下がるのも輪転機ならでは。
コスト効率を重視する発注者にとっては、いまもなお「最も合理的な印刷方式」と言えるのです(※1)。
理由②|「紙の信頼性」が必要な業界がまだまだ多い
意外に思われるかもしれませんが、紙媒体は“信用されるメディア”として、特定の業界で今も重宝されています。
たとえば、選挙の投票所で手渡される候補者情報、医療機関で配布される説明資料、大規模イベントで配られる案内チラシ──これらは一括大量印刷が求められますが、同時に正確で見やすく、物理的に手元に残る安心感も必要とされます。
こうした“紙の実用価値”は、どれだけデジタルが進んでも完全には代替できていません。
輪転機は、そのニーズにしっかり応えるポジションを維持しているのです(※2)。
理由③|技術革新で「より省エネ・高精度」な輪転機も登場
近年では、輪転機にもさまざまな技術革新が加えられています。
-
インライン品質検査装置(刷りムラや汚れをリアルタイム検知)
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省エネルギー乾燥ユニット(ガス使用量を大幅削減)
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色調整の自動化(オペレーター負担の軽減)
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高速フィーダー・断裁装置のモジュール化(メンテナンス性の向上)
これにより、従来は「とにかく大量印刷用」だった輪転機が、中ロット対応や多品種切り替えにも柔軟に対応できる機種へと進化してきています(※3)。
つまり、印刷方式の中でも“重厚長大”だった輪転印刷が、よりスマートで持続可能な選択肢へと変わりつつあるのです。
まとめ:輪転機は「紙で届ける」最後の砦
輪転機は、単なる古い印刷機ではありません。
物量・納期・コスト・信頼性を求められるシーンで、今も第一線で選ばれ続けているプロフェッショナルの道具です。
たとえ印刷の主流が変わっても、「一斉に、確実に、届ける」ことが必要とされるかぎり、輪転機の需要がなくなることはありません。
次の最終章では、ここまでの内容をまとめながら、輪転機という存在が印刷の現場にもたらす価値についてあらためて振り返ってみましょう。
第7章|まとめ:輪転機がビジネスにもたらす3つの価値
ここまで輪転機について、「仕組み」「歴史」「種類」「枚葉印刷との違い」「今も使われる理由」と順を追って見てきました。
最終章では、あらためてこの輪転機という印刷方式がビジネスの現場でどんな価値を生んでいるのかを、3つの視点から整理して締めくくります。
価値①|“短納期×大量印刷”に応える「スピードと量産性」
輪転印刷は、ロール紙を止めずに連続で印刷できるという構造により、1時間で数万〜数十万部の印刷を可能にします。
これは、以下のようなビジネスシーンで圧倒的な強みを発揮します。
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折込チラシを地域ごとに一気に印刷する販促施策
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会報誌や業界新聞を決まったスケジュールで発送する業務
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教材やカタログを数万部単位で短期間に配布する案件
こうした場面では、スピード=信用です。輪転機は、その信頼を物理的に支える存在といえます。
価値②|1枚あたりの単価を下げる「コスト効率」
輪転機は、準備工程(版出し、紙送り、折り調整など)の手間が初期に集中しますが、それを乗り越えれば、部数が増えるほどコストパフォーマンスが向上します。
たとえば、同じカタログを1000部刷る場合は枚葉印刷の方が安いこともありますが、10万部を超えれば輪転機のほうが大幅に単価が下がるケースが一般的です。
さらに、折り・綴じ・断裁といった後加工まで一気に済むため、人件費や物流工程も最小化できます。
つまり輪転機は、「一度にたくさん刷る」ことで、全体の印刷コストを最適化できる手段なのです。
価値③|「刷るだけで終わらない」ライン完結型の安心感
輪転機のもうひとつの価値は、単に“刷るだけ”ではない点にあります。
新聞や折込チラシのように、印刷→折り→断裁→仕分けまでを1ラインで完了できる設備構成は、輪転機ならではの魅力です。
これにより、納期がタイトな現場でも、外部加工に出す時間を短縮し、印刷から出荷までの時間管理を一元化できます。
ビジネスにおいて、**「工程が少ない=ミスや遅延のリスクも減る」**という意味でも、輪転機は極めて合理的な印刷方式だといえるでしょう。
まとめ:輪転機は“紙を武器にした情報戦略”に欠かせない存在
デジタル全盛の今でも、「とにかく早く、大量に、確実に届ける」ことが必要な場面は少なくありません。
輪転機は、そうしたニーズに**正面から応える“紙のインフラ”**です。
もちろんすべての印刷に輪転が適しているわけではありません。ですが、もしあなたが、
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数万部〜数十万部の印刷を予定している
-
短納期や定期発送が求められている
-
折り・綴じなどの工程まで一括で管理したい
という状況にあるなら、輪転印刷は最適な選択肢のひとつになる可能性があります。
印刷方式の理解は、より良い発注・より良い成果物につながります。
本記事が、その判断のヒントになれば幸いです。
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