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第1節|聖典と印刷――“正確さと普遍性”が最優先だった時代
「もし一文字でも間違えたら、教えそのものが揺らいでしまう」
印刷が誕生した理由は、壮大な“技術革新”というより、むしろ――
“神聖な言葉を一字も違えずに届けたい”という切実な願い でした。
ここではアジア・欧州における三つの代表例を通して、「正確性と普遍性」という価値観がどのように印刷技術を形づくったのかを見ていきましょう。
金剛経と敦煌――木版印刷が生んだ世界最古の“日付入り”書籍
868 年、中国・敦煌の石窟から発見された《金剛経》は、現存する世界最古の“日付入り”完全印刷物と呼ばれます。16 フィート(約 4.9 m)の巻物を七枚の紙に木版で刷りつなぎ、巻頭には挿絵まで添えられている。発願主の王怤(おうふ)※が「家族の功徳のために刷った」と記した奥書を残したことで、**“誰が・いつ・何のために”**を後世に正確に伝えることができました。印刷は、口伝や写経よりもはるかにブレの少ない〈真理の複製〉を可能にしたのです。
百万塔陀羅尼――奈良の小さな仏塔に込められた“百万通り”の祈り
奈良時代(764–770 年頃)、称徳天皇は国家鎮護を祈願し、高さ 20 cm ほどの木製小塔を 100 万基作らせ、その内部に一枚の“陀羅尼(真言)”を納めました。これが『百万塔陀羅尼』です。わずか数センチの紙片に刷られた経文は、全塔で同一内容。木版か銅版かは学説が分かれるものの、反復しても誤植が出ない方法が求められたことは確かです。大量・均質・高精度――「修羅場の写経所」では到底まかなえないスケールの信仰心が、印刷を後押ししました。
グーテンベルク聖書――活版印刷が叶えた“神の言葉の量産”
それから約 700 年後、舞台はドイツ・マインツへ。ヨハネス・グーテンベルクは金属活字、油性インキ、ぶどう搾り機由来のプレスという三つの技術を組み合わせ、ラテン語聖書(42 行版)を 180 部前後刷り上げました(1454–1455 年頃)。修道士が一年がかりで書き写す分量を、数か月で複製できる――この衝撃が「印刷革命」と呼ばれる所以です。ここでも核心は“正確性”。鉛と錫の合金活字は摩耗しにくく、一度鋳型を取れば同じ文字を何百回も再現できる。信仰の普遍性が、モジュール化された文字というアイデアを生みました。
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〈小結〉 “誤植は罪”という価値観が技術を磨いた
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敦煌の木版は、彫り直しの利かない一発勝負で「完全同一性」を追求。
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奈良の百万塔は、「百万回同じ内容を配る」という前代未聞の量産ニーズを提示。
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活版聖書は、「正確さを保ったままスケールさせる」ために金属活字と機械圧を採用。
三つの物語が示すのは、**“正確であればあるほど、広く届けられる”**という当時の信念です。ここに印刷の第 1 段階──“正確性 × 普遍性”の黄金律が成立しました。
第2節|新聞と印刷――“正確さにスピード”が加わった時代
「夜明けまでに10万部。しかも一字の誤植も許されない」
19 世紀、新聞社の締切(デッドライン)は印刷現場に“高速&大量”という矛盾した宿題を突きつけました。ここではケーニヒ→ホー→ブロックという加速装置のリレーと、言論の自由を象徴するゼンガー事件、そして“美しさ”を次章へつなぐルーベルの発見までを追いかけます。
蒸気・ロータリー・輪転機が生んだ「1 時間 8,000 部」の衝撃
1814 年 11 月、ロンドン The Times は世界初の**蒸気印刷機(ケーニヒ=バウアー型)**を極秘導入。1,100 枚/時という当時の手動プレスの約 4 倍で紙面を量産しました。
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わずか 30 年後、リチャード・マーチ・ホーが 円筒が回り続けるロータリー印刷機を発明。1847 年には 8,000〜10,000 枚/時を叩き出し、新聞発行部数の飛躍的拡大を可能にします。
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そして 1863 年、ウィリアム・ブロックがロール紙を連続給紙するウェブ輪転機を完成。シートを折り、断裁まで自動化しつつ 12,000 枚/時(改良後は 30,000 枚) という圧倒的スピードを達成しました。
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速く、大量に、しかも誤植なく――。
この“三拍子”を新聞社が求めたことで、印刷機は“蒸気化 → 回転化 → 連続紙化”の階段を一気に駆け上がったのです。
世論と結びつく印刷――ゼンガー事件が示した“知る権利”
技術革新の裏で、「新聞に何を書くか」は重大な社会問題でした。1735 年、ニューヨークの印刷職人ジョン・ピーター・ゼンガーは植民地総督を批判した記事を刷り、“名誉毀損”で逮捕・起訴されます。しかし陪審は「真実を伝える行為は罪にあたらない」と無罪評決。
この裁判は直接の判例にはならなかったものの、**「新聞印刷=言論の自由を守る盾」**という意識を植え付け、のちの合衆国憲法修正第1条へとつながりました。以後、新聞社は“タイムリミット”に加え“ファクトチェック”でも競い合うことになります。
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ブランケット転写の偶然――ルーベルが開いた「美しさ」の扉
高速輪転は部数を稼げても、写真やカラー再現には難がありました。1901 年、ニュージャージーの印刷工Ira W. Rubel(アイラ・W・ルーベル)は版から紙を取り忘れた失敗をきっかけに、版 → ゴムブランケット → 紙という“間接転写”を発見。これがオフセット印刷の原型です。最初は試作機に過ぎませんでしたが、**「早いだけでなく、美しく刷りたい」**という次なるニーズをはっきり示しました。
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〈小結〉 “正確さ × スピード × 大量性”の黄金律が完成
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ケーニヒの蒸気化で人力の壁を突破し、
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ホーのロータリーで秒単位の競争が始まり、
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ブロックの輪転で24 時間操業が当たり前になった。
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そしてゼンガー事件が「情報の真実性」を、ルーベルが「表現の美しさ」を次の課題に掲げた。
こうして印刷は“速く、多く、正確に”という鉄則を身にまといながら、次章で扱うパーソナル&共感の時代へ向けてギアを入れ替えていきます。
第3節|パーソナルと印刷――“共感と多様性”の時代へ
「みんなに伝わる」ではなく、「あの人に届く」ための印刷へ。
20世紀の終盤から21世紀にかけて、印刷は再び大きな転換点を迎えます。新聞を筆頭とするマス印刷の需要が落ち込む一方で、グッズ・名刺・DM・写真集・パッケージなど「個別性」を伴った印刷物が急増。ここでは、ルーベルからバトンを受けたキャスパー・ヘルマンによる“産業としての美しい印刷”の確立、そしてデジタル技術による新しいパーソナル印刷のかたちを読み解いていきます。
ヘルマンが量産機にした「美しさの発見」──オフセット印刷の産業化
ルーベルが発見した間接転写方式は、確かに美しい仕上がりを実現するものでしたが、初期機は試作機レベルで、紙送りなどに難点がありました。そこに登場するのが、**ドイツの印刷機設計者キャスパー・ヘルマン(Caspar Hermann, 1871–1934)**です。
1904年、ヘルマンはルーベルの方式を基にしたオフセット印刷機を完成させ、以後20年にわたって独自の改良を加えつつ、精度・安定性・量産性を兼ね備えたモデルを実用化していきます。彼の設計は、軽圧印刷・連続給紙・高耐刷性といった、のちの商業用オフ輪の原型を確立するものでした。
「美しいだけでなく、毎日使える」──ヘルマンは印刷の価値を、芸術ではなく日常に落とし込んだのです。
彼のオフセット印刷機は、ポスター・パッケージ・カラー書籍などで広く使われ、**“美しさを保ったまま大量に刷る”**という、新しい印刷の可能性を開いたのでした。
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オンデマンドと可変印刷が切り開いた“1部から刷れる”時代
21世紀に入り、もうひとつの革命が静かに起こります。それが**デジタル印刷(オンデマンド印刷)**です。これは版を必要とせず、パソコンから直接印刷機へデータを送る方式で、1部からでも即時に出力可能。プリンターと印刷機の境界が溶けたとも言えます。
特に注目されているのが、バリアブル印刷(可変印刷)。これはDMなどにおいて、宛名・QRコード・クーポン番号・挿入メッセージなどを1枚ごとに変えて出力できる技術で、企業が「あなた専用の内容」を印刷物で届けることを可能にします。
また、同人誌・写真集・記念品・推しグッズなども、“少部数でも高品質に”というニーズの高まりと相まって、小規模・高付加価値の印刷が急増。印刷は「万人向け」から「1人の心を動かす」表現手段へと移行しています。
機能性印刷と加飾の時代──“伝える”を超えて“体験をつくる”印刷へ
さらに、パーソナル印刷は単なる紙出力にとどまりません。印刷技術は今や、商品の質感や世界観そのものを創出する手段になっています。
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パッケージでは**触感印刷(エンボス・ニス加工・箔押し)**がブランド体験を強化
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飲料や化粧品の個別ラベル印刷で「私だけの一本」が生まれる
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フレキシブル基板やICタグなど、“刷る電子部品”=機能性印刷分野も拡大中
つまり印刷は、「伝える」だけでなく「驚かせる」「感じさせる」「記憶に残す」ことを目的とした、体験創出メディアへと変貌しているのです。
〈小結〉“共感 × 多様性”が求める印刷のかたち
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ヘルマンは「美しさの発見」を、ルーベルの次元から産業としての標準技術へ引き上げた
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オンデマンド印刷は「1部だけでも価値がある」時代を切り拓き
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バリアブルや加飾印刷は、印刷物を個人の感情に寄り添う存在へと育てた
いま、印刷は「たくさん刷れる技術」ではなく、**“誰かの気持ちに届く技術”**として進化を続けているのです。
最終節|印刷は“何を伝えるか”で進化し続けてきた
「何を、誰に、なぜ伝えたいのか?」
この問いに対して、印刷はいつもその時代ごとの答えを出してきました。
本節ではこれまでの3章を振り返りながら、印刷が“技術”である前に“願いに応える手段”だったことをあらためて言葉にしていきます。
聖典の時代──「変えてはならないもの」を正しく届けるために
最初に印刷が求められたのは、宗教的・思想的な“絶対の言葉”を誤りなく伝えることでした。
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金剛経の巻物は、奥書まで含めて**“誰が、何のために刷ったか”**を明示する
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百万塔陀羅尼は、同一の祈りを100万の人に等しく届けるために生まれた
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グーテンベルク聖書は、聖句を文字単位で量産できることを初めて証明した
☞ ここで印刷に求められたのは「正確性 × 普遍性」
印刷は、“間違えずに広める”という最初のミッションを背負って始まったのです。
新聞の時代──「今この瞬間」を速く、大勢に届けるために
やがて時代が動き、人々は「今起きたこと」を知りたくなります。
新聞が登場すると、印刷はさらなる試練に直面します。
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ケーニヒの蒸気機が人力の限界を突破
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ホーのロータリー機が回転という概念を持ち込み
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ブロックの輪転機がロール紙+断裁の自動化で大量印刷を現実にした
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ゼンガー事件は、印刷が民主主義の土台=言論の自由を担うメディアであることを示した
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ルーベルは、急ぐだけでは足りないと教えてくれた──「もっと美しく」
☞ この時代の印刷は「正確性 × スピード × 大量性」
技術革新と報道の使命が手を取り、“瞬時に広める”メディアとしての完成形を迎えます。
パーソナルの時代──「その人の心に届く」ために
そして今、印刷の主役は“みんな”ではなく“あなた”へと移りました。
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ヘルマンは、ルーベルの発見を産業として標準化し、あらゆる商業印刷の土台を築いた
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オンデマンド印刷は**「1部でも、今すぐ」**を当たり前にした
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バリアブル印刷は、宛名も、文章も、**「ひとりずつ違う」**ことを可能にした
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パッケージや推しグッズでは、“感情の共鳴”をつくる印刷が求められている
☞ 今、印刷に求められているのは「共感性 × 多様性」
もう「たくさん刷れること」だけでは価値がなく、“心に刺さること”こそがゴールになっているのです。
結び|印刷はいつも「人が何を伝えたいか」に応え続けてきた
印刷は、ただの出力装置ではありません。
人の「伝えたい」という強い想いに、どうやって応えるか――それが進化の原動力だったのです。
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間違いなく伝えたい(聖典)
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すぐに伝えたい(新聞)
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届けたい相手に、ちゃんと伝わってほしい(パーソナル)
今後、印刷は「触覚を伝える」「香りを添える」「AIと融合する」といった、まったく新しい領域に入っていくかもしれません。
けれど本質はずっと同じ──
“あなたの想いを、誰かにちゃんと届けたい”という願いに、印刷は応え続けてきた。
そして、これからも。
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