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第1章|オフセット印刷とは何か?──現代印刷の主役をわかりやすく紹介
“版が紙に直接触れない”間接印刷とは?
印刷といえば、「版にインキをつけて、紙に押しつける」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。実際、かつて主流だった「活版印刷」や「凸版印刷」では、文字や図版が彫られた版が紙に直接触れて印刷が行われていました。
しかし、現代の印刷現場で主役を担っている「オフセット印刷」は、この常識を覆す方式です。版が紙に直接触れず、ゴム製のブランケットを介して印刷するという“間接印刷”の仕組みを採用しています。
この技術により、インキのムラやにじみを防ぎつつ、より均一で高精度な仕上がりが可能になりました。とくに、細かい文字や写真のような階調のある画像でも、美しく再現できるのが大きな特徴です。
紙に直接触れない──そのわずかな違いが、品質や耐久性、印刷速度において、現代印刷のスタンダードを築き上げたのです。
オフセット印刷の名前の由来と意味
「オフセット」という言葉には、“ずらす”とか“間に挟む”といった意味があります。オフセット印刷の場合、これは**「版から紙に直接インキを転写しない」という構造**を指しています。
具体的には、版からブランケットという中間素材(通常はゴム)にインキが転写され、さらにそのブランケットから紙へと写し取られる流れです。この“オフ=一旦外す”という動作が、印刷方式の名称にもなっているわけです。
ちなみにこの方式が広まる以前は、直接印刷(ダイレクトプリント)が一般的でした。しかし、直接印刷では版の摩耗や圧力による変形が避けられず、長時間の連続印刷や大量印刷には不向きだったのです。
名前の由来ひとつ取っても、オフセット印刷は合理性と実用性を追求した技術だということが読み取れます。
どんな場面で使われているの?(新聞・チラシ・本など)
では、このオフセット印刷は、実際にどんな場面で活躍しているのでしょうか。答えは、ほぼすべての商業印刷物です。
たとえば、毎朝届く新聞。あれもオフセット印刷で刷られています。膨大な部数を高速で印刷する「輪転式オフセット機」が新聞社で稼働し、印刷から配送までのスピードを支えています。
また、ポストに届くチラシやパンフレット、駅で配られる冊子、書店に並ぶ雑誌や書籍も、ほとんどがオフセット印刷。理由は明快で、「大量印刷に強く、色の再現性が高い」からです。
とくに写真やイラストが多用される印刷物では、色のにじみやズレが致命的になりかねません。その点、オフセット印刷は色の安定性に優れ、繊細な表現を得意としています。
実は、私たちが日常で手にする「印刷物のほとんど」が、オフセット印刷によってつくられているのです。
第2章|仕組み①|水と油の反発を活かした「平版印刷」の原理
インキと湿し水の“せめぎ合い”が画質を決める
オフセット印刷のエンジンは、版の上でくり広げられる インキ(油性)と湿し水(親水性) の絶妙なバランスです。版材の“画像部”は油にだけなじみ、非画像部は水だけを受け入れます。プレスが回転するたび、まず湿し水が非画像部を守り、その直後にインキが画像部にだけ乗る――この瞬間こそが「文字も写真もくっきり出る」理由です。水が多過ぎれば色は薄まり、少な過ぎれば非画像部にインキが付きます。だから現場では“インキ‐水バランス”を秒単位で調整し、最適点を探り続けているのです。
“画線部”と“非画線部”──平版印刷が生んだ見えない境界線
リトグラフを発明したゼネフェルダーが気づいたのは、「油と水は混ざらない」という単純な自然法則でした。アルミ版の表面には、化学処理で“画像部(親油性)”と“非画像部(親水性)”という二つの領域が刻まれています。見た目にはフラットでも、分子レベルではまるで別世界。だからこそローラーが何十回、何万回通過してもインキは同じ場所にだけ定着し、写真のハイライトからシャドーまで滑らかに再現できるわけです。
版材はどう作られている?──フィルムレス時代を支えるCTP
かつてはフィルムを焼き付けてアルミ版に感光していましたが、現在の主流は CTP(Computer to Plate)。レーザーが直接アルミ版の感光層を変質させ、“画像部”と“非画像部”を一発で描きます。熱(サーマル)、可視光(ヴァイオレット)など方式は違っても、狙いは共通──プレプレス工程を短縮し、誤差を最小化すること。これにより版の解像度は飛躍的に向上し、オフセット印刷はデジタル印刷と肩を並べるほどのシャープネスを獲得しました。
第3章|仕組み②|3つの胴で動く、オフセット印刷の工程と流れ
版胴・ブランケット胴・印圧胴の働きとは?
オフセット印刷を支えているのは、**「3つの胴体(シリンダー)」**による見事な連携です。
印刷機の中には、「版胴(はんどう)」「ブランケット胴」「印圧胴(いんあつどう)」と呼ばれる3本のローラー状の部品があり、それぞれが別の役割を担っています。
まず「版胴」には、あらかじめCTPで刷版されたアルミの版が取り付けられています。版胴は常に回転しながら、最初に「湿し水」、次に「インキ」を受け取ります。
このとき、インキは画像部にだけ乗り、非画像部は湿し水によって守られています。
続いて、インキが乗った版胴は、「ブランケット胴」に接触します。ブランケット胴は、ゴムで覆われたやわらかい中間転写体。版から受け取ったインキを、自身の表面にそっとコピーするように写し取ります。
そして最後に、紙を押し当てる「印圧胴」が登場します。ブランケット胴と紙を挟むようにして圧力をかけることで、インキが紙にきれいに転写されるのです。
この3胴構造により、版が直接紙に触れることなく、高精度でブレのない印刷が実現されているのです。
なぜブランケットを経由するのか?利点は?
ブランケット胴を“わざわざ挟む”構造に、疑問を感じる方もいるかもしれません。
しかし、実はこの“ワンクッション”こそが、オフセット印刷の命なのです。
最大の利点は、「紙の凹凸にしっかりインキが乗る」こと。紙というのは意外にデコボコしており、硬い版で直接印刷しようとすると、細かな溝や繊維にインキが入りづらく、色ムラやかすれが発生してしまいます。
そこで、ゴム製のブランケットが登場します。やわらかい素材が紙の表面にぴったりとフィットし、細かな溝にまでインキを押し込んでくれるのです。
この“やわらかさによる追従性”が、オフセット印刷の高い再現性を支えています。
さらに、版が紙に直接触れないため、版の摩耗が少なくなり、長時間の連続印刷でも品質が安定します。だからこそ、大部数印刷に強いのです。
「版の寿命が延びる」「にじみにくい」理由を解説
オフセット印刷の構造が生むもうひとつのメリットは、版の耐久性と画質の安定性です。
活版印刷のように直接圧をかける方式では、版は印刷するたびにダメージを受けます。版が摩耗すれば、印刷の精度は落ち、再現性も悪くなってしまいます。
一方、オフセット印刷ではブランケットが緩衝材となるため、版には直接的な圧力がかかりません。そのため版の寿命が長く、1枚の版で何万部もの印刷が可能になります。
また、ブランケットによる転写は、インキを均一に押し当てられるため、にじみや色ズレが起こりにくいのも特徴です。写真のグラデーションや細かな線もくっきりと表現され、商業印刷や出版物において欠かせない信頼性を誇ります。
このように、ブランケットを「中継役」として活用する仕組みは、印刷品質・耐久性・スピードの三拍子を揃えるための、理にかなった構造といえるでしょう。
第4章|歴史編|3人の技術者が切り拓いたオフセット印刷の系譜
ゼネフェルダー(1796)──水と油の印刷「リトグラフ」の発明
すべての始まりは、18世紀末のドイツにありました。
舞台はバイエルン王国のミュンヘン。戯曲作家だったアロイス・ゼネフェルダーは、出版費を節約するために、自ら印刷の方法を探し求めていました。そこで彼がたどり着いたのが、**石灰石に文字を描き、水と油の反発を使って印刷する方法──リトグラフ(石版印刷)**です。
この方式の革新性は、「版に凹凸がないこと」でした。それまでの印刷は、木や鉛に彫った凹凸のある版を使う“凸版”が主流でしたが、リトグラフは“平版”。つまり版はまったくのフラットで、インキがのる場所と、水がのる場所の“化学的な違い”だけで画像を分離します。
ゼネフェルダーが発明したこの方法は、後に「水は油をはじく」という自然現象に裏打ちされた印刷技術として、世界中に広がっていきます。そしてこの「水と油の原理」こそが、オフセット印刷の土台となる技術思想だったのです。
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ルーベル(1904)──偶然から誕生したオフセット印刷の原型
時代は20世紀初頭。舞台はアメリカ・ニュージャージー州の小さな印刷工場──ここで、印刷史を大きく動かす**“偶然の事故”**が起こります。
主人公は、印刷業者のアイラ・ワシントン・ルーベル(Ira W. Rubel)。
ある日、紙送りのミスによって、印刷機の版にのったインキが、偶然隣にあった**ゴム製のシート(ブランケット)**に転写されてしまいました。ところがこのブランケットから紙に再転写された画像を見て、ルーベルは目を疑います。直接印刷したときよりも、ずっと鮮明だったのです。
この体験がきっかけとなり、ルーベルは「版からブランケットへ」「ブランケットから紙へ」という**“間接二段階転写方式”を本格的に探求しはじめます。
1903〜1904年には、自らの設計による世界初の平版オフセット印刷機**を完成させ、まずは株券やチケットなど小型印刷物に適用しました。
やがてこの方式は、書籍・商業印刷へと応用され、**オフセット印刷(offset printing)という新たな技術として体系化されていきます。
のちにドイツでキャスパー・ヘルマンが工業化・標準化を進めることで、ルーベルの発見は世界の印刷現場を支える“常識”**となったのです。
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キャスパー・ヘルマン(1950年代〜)──標準化と工業化を成功させた立役者
技術は発明だけでは定着しません。
ルーベルが切り拓いた道を、「誰もが使える標準技術」にまで引き上げた人物がいます。それが、ドイツの機械技術者**キャスパー・ヘルマン(Caspar Hermann)**です。
ヘルマンが取り組んだのは、シート式オフセット印刷機の工業化と量産体制の確立でした。1950年代、戦後の復興で印刷需要が急拡大する中、ドイツ国内では高速・高精度・大量対応の印刷機が求められていました。
そこでヘルマンは、ブランケット胴や給紙・排紙機構を徹底的に見直し、安定性・メンテナンス性・量産性をすべて兼ね備えた機種を設計。彼の技術は、ハイデルベルク社などを通じて世界中に普及していきます。
それはもはや「印刷機の設計」というより、**“オフセット印刷という仕組みそのものの標準化”**でした。
彼の功績によって、オフセット印刷は新聞・書籍・チラシ・カタログにいたるあらゆる商業印刷に対応可能となり、世界中の印刷会社の主力技術へと育っていったのです。
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オフセット印刷の発展は「自然現象・偶然・工業化」の三重奏だった
こうして見ていくと、オフセット印刷という技術は、**科学の発見(ゼネフェルダー)、偶然のひらめき(ルーベル)、そして産業の知恵(ヘルマン)**という、三者三様の貢献から成り立っていることがわかります。
技術の進歩には、ひとつの天才だけでなく、時代背景と、実用化への執念が必要です。
オフセット印刷は、そうした積み重ねの結晶として、今なお世界の現場で活躍し続けているのです。
第5章|種類編|枚葉オフセットと輪転オフセットの違いと使い分け
枚葉(Sheetfed):高精度なパンフ・冊子向け
枚葉(まいよう)オフセットとは、一枚一枚の紙を送りながら印刷する方式です。
用紙は断裁された状態(シート状)で機械にセットされ、1枚ずつ丁寧に搬送されながら、版→ブランケット→紙の順に印刷されます。
この方式の特徴は、精度の高さと自由度の高さです。特に色の再現性や位置合わせ(見当精度)に優れ、写真やグラデーションの再現に強いことから、以下のような印刷物に多く用いられています。
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企業パンフレット
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高級カタログ
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書籍の表紙
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ポスター
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名刺やカード類
また、紙の種類や厚みによる対応範囲も広く、上質紙・マット紙・アート紙などの多彩な用紙が使えることも魅力の一つです。反面、大量印刷にはやや不向きで、部数が増えるとコストが上がりやすい傾向があります。
輪転(Web offset):新聞・チラシなど大部数向け
一方、輪転(りんてん)オフセットは、巻き取り状のロール紙を使用する高速連続印刷方式です。
名前のとおり、紙が“回転”しながら機械に供給され、印刷・折り・断裁までを一気に自動で行うことができます。
この方式の最大の特長は、とにかくスピードが速いこと。毎分数万枚単位の印刷が可能なため、以下のような「大量印刷・短納期」が求められる場面で重宝されています。
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新聞(全国紙・地方紙)
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折込チラシ
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フリーペーパー
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カタログの本文ページ
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書籍の本文(モノクロ印刷)
また、印刷しながら紙を折る「折機」や、糊づけする「製本ライン」とも連動できるため、製造ライン全体の効率化にも貢献します。ただし、紙質の選択肢や細かな見当精度は枚葉式に劣ることもあり、カラー印刷物では用途を見極める必要があります。
巻取り紙 vs 単枚紙のちがいとは?
この2つの方式の違いを直感的に理解するなら、「紙の形状」に注目するのが早道です。
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枚葉式:断裁された“1枚ずつ”の紙を印刷
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輪転式:巨大なロール紙を“連続的に”印刷
つまり、枚葉オフセットは「ゆっくり丁寧に、色をキレイに仕上げる」職人型の印刷であり、輪転オフセットは「大量に素早く、コストを抑えて仕上げる」工場型の印刷だといえるでしょう。
どちらが優れているという話ではなく、目的・納期・コスト・品質のバランスによって使い分けるのが、印刷のプロの判断です。
第6章|メリット・デメリット|オフセット印刷が選ばれる理由とは?
メリット:高画質・低コスト・大量印刷に強い
オフセット印刷が今なお“主流”であり続ける最大の理由は、コスト・品質・速度の三拍子がそろっていることです。
まず注目すべきは、画質の安定性。版から紙へ直接ではなく、ブランケットを介してインキを転写するため、にじみやかすれが起こりにくく、写真やグラデーションの再現力に優れています。輪郭がシャープに仕上がるため、細かい文字や図版も安心して任せられます。
次に、大量印刷時のコストパフォーマンス。初期費用こそかかりますが、印刷部数が増えるほど1枚あたりの単価は下がっていきます。数千~数十万部といったロットに対応できるのは、オフセットならではの強みです。
さらに、安定した連続運転が可能なため、印刷中に色調がブレにくく、大部数でもクオリティが均一に保たれます。結果として、カタログ、書籍、チラシなどの商業印刷では、依然として最有力の選択肢となっているのです。
デメリット:小ロットには不向き?デジタルとの比較
一方、オフセット印刷にも弱点はあります。それが、小ロット・短納期への対応力です。
オフセットでは「刷版」と呼ばれる工程が必要で、1回ごとにアルミ版を出力し、印刷機にセットする手間が発生します。たとえば、たった10枚を印刷するためでも、機械の立ち上げや色合わせといった準備時間は変わりません。結果として、少部数だと割に合わないのです。
ここで浮上するのがデジタル印刷という選択肢。デジタル印刷は、刷版不要でデータから直接プリントできるため、オンデマンド(必要なときに必要な分だけ)のニーズに強く、部数が少ない場合には圧倒的に効率的です。
ただし、画質や耐久性、紙の選択肢ではオフセットに分がある場面も多く、両者は競合ではなく共存関係にあります。むしろ、現場では「小ロット=デジタル、大ロット=オフセット」といった使い分けが定着しつつあります。
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「再現性」「品質安定性」において今も現役の理由
印刷物において、色味の安定と版の再現性は、信頼性を大きく左右する要素です。たとえば、カタログや商品パッケージなど、複数拠点で同じ印刷物を扱うようなケースでは、どの工場でも同じ品質で再現できることが求められます。
この点で、オフセット印刷は色合わせのしやすさ、色見本との一致度の高さに定評があります。とくに「CMYKで刷る」という商業印刷の標準的なプロセスと親和性が高く、指定した色を限りなく忠実に再現できる点は、今なお代替できない魅力です。
また、近年はCTPや品質検査装置の導入により、オフセット印刷の精度はさらに向上しています。「画質の美しさ」「耐久性」「コスト効率」「安定性」という4本柱が揃っているからこそ、現代でも多くの企業・自治体・教育現場で使われ続けているのです。
第7章|他方式との比較|オフセット印刷は何が違うのか?
デジタル印刷との違い:少部数・可変印刷との使い分け
まず、最も比較されるのが「デジタル印刷」との違いです。
デジタル印刷は、刷版が不要で、PDFなどのデータから直接印刷できます。たとえば、バリアブル印刷(住所や名前が1枚ずつ異なるDM)など、可変データの処理に長けています。加えて、部数が少ない場合でも準備が早く、初期コストも低いため、小ロット短納期に最適です。
一方、オフセット印刷は、高画質・高精度・大量印刷に適しています。刷版や色調整などの準備工程が必要な分、大ロットになるほどコスト効率が上がり、長時間運転でも色ムラが起きにくい構造です。
つまり、両者は競合ではなく、「使い分け」が前提の補完関係にあります。
10部刷るならデジタル、1万部刷るならオフセット。目的に応じて選び分けることが、印刷の最適解なのです。
活版・凸版との違い:印刷方式の分類と進化の流れ
オフセット印刷は、技術的には「平版印刷」に分類されます。対して、活版や樹脂凸版などは「凸版印刷」に属します。では、この違いは何なのでしょうか?
活版印刷では、インキを盛った凸部が紙に直接触れて転写されます。版は鉛や樹脂などで作られ、凹部にはインキが入らないため、くっきりとエッジの立った印刷が特徴です。ただし、圧力がかかるため、長時間の印刷では版が摩耗しやすく、紙にも“凹み”が出ることがあります。
一方、オフセットは**「版が紙に触れない」**という点が決定的に異なります。ゴムブランケットを経由することで、摩耗が少なく、より繊細な階調表現や写真の再現が得意です。
活版は手間がかかりますが、近年では名刺や招待状などで**「味わい」としての人気**が復活しています。それに対し、オフセットは現場の安定性・量産性において、今も第一線を走っています。
グラビア・スクリーン印刷との技術的な差異
印刷方式には、オフセットや凸版のほかにも「グラビア印刷」「スクリーン印刷」といった特殊な方式があります。これらは主に印刷対象が紙以外の場合や、特定用途に特化した方式として使われています。
たとえばグラビア印刷は、金属円筒に彫られた微細な凹部にインキをためて転写する方法で、色の再現性が非常に高く、滑らかなベタ面や写真印刷に向いています。食品パッケージや雑誌表紙などに多く用いられますが、版の製作コストが高く、大量印刷向きです。
一方、スクリーン印刷はメッシュ状の版を使い、インキを押し出して印刷する方式。紙以外にも布・プラスチック・金属など、多様な素材に対応できます。Tシャツや看板、電子基板などに利用されています。
これらと比較すると、オフセット印刷は「紙」に特化しつつも、最もバランスのとれた方式であり、価格・品質・汎用性の面で圧倒的なポジションを築いていることがわかります。
第8章|よく使われる現場と印刷物|どんな用途に向いているの?
新聞・チラシ・雑誌・商業印刷での圧倒的シェア
オフセット印刷の活躍フィールドは、想像以上に広範です。
たとえば朝刊。全国で何百万部と発行される新聞は、輪転式オフセット印刷機によって、深夜から早朝にかけて一気に刷り上げられます。あの薄い新聞紙に、細かい文字や写真がにじまず印刷されるのは、オフセット特有の高速かつ高精度な特性があってこそです。
また、ポストに届く折込チラシやパンフレット、企業案内や広報誌、雑誌、フリーペーパーなど、“商業印刷物”の大半はオフセット印刷でつくられています。
なかでも印象的なのは、フルカラーの冊子やカタログの本文。商品の色や質感をリアルに伝えるには、細かい階調や文字の再現力が欠かせません。オフセット印刷はその点で他方式を圧倒しており、「見たままの色で伝える」ための信頼技術として、今も多くの制作現場で指名されています。
小ロットはデジタル、大ロットはオフセットが定番
印刷の世界では、「印刷方式を選ぶこと」そのものが、コスト設計であり、品質設計でもあります。
では、実際の現場では、どのようにオフセットと他方式を使い分けているのでしょうか?
答えは明快で、少部数・短納期・可変印刷にはデジタル印刷、大部数・高画質・定型印刷にはオフセット印刷というすみ分けが進んでいます。
たとえば会社案内を100部だけ刷るならデジタルで十分ですが、全国の店舗に10,000部を配布するなら、オフセットで刷る方が圧倒的に効率的です。
また、同じチラシでも、「スーパーの毎週折込チラシ」はオフセット、「展示会で配る数十枚の案内」はデジタル、といった使い分けが実際の現場でされています。
このように、オフセット印刷は**“目的に合わせた最適解”として選ばれる方式**であり、万能ではないけれど「大量・高品質」を叶えるための切り札として、現場にしっかり根を下ろしています。
CTPや製版との組み合わせで進化し続けている
オフセット印刷がここまで多用途に対応できる理由のひとつに、前工程=製版技術の進化があります。
現在の主流である**CTP(Computer To Plate)**によって、刷版の精度・速度・安定性が大きく向上しました。これにより、色ズレの発生を抑えたり、データ入稿から印刷までのリードタイムを短縮したりと、制作全体の効率が飛躍的にアップしています。
また、印刷機側も年々進化を続けており、自動色調整、紙送り制御、品質検査装置などが組み込まれた最新機種では、人の手に頼らずに安定した高品質印刷が可能になっています。
つまり、オフセット印刷は“昔ながらの技術”ではなく、テクノロジーと融合しながら今も進化している現役の主力方式だといえるのです。
第9章|まとめ|偶然と技術革新が生んだ「世界標準の印刷方式」
「印刷方式」とひとことで言っても、その裏には200年以上にわたる技術の積み重ねがあります。
オフセット印刷はその代表格であり、今もなお新聞・チラシ・書籍・カタログといった日常のあらゆる印刷物を支えている、現役バリバリの主力方式です。
あらためて振り返ると、オフセット印刷の成立は、一人の天才だけでは成し得なかったことがわかります。
18世紀、アロイス・ゼネフェルダーが偶然見つけた「水と油の反発」を活かした平版印刷の原理。
20世紀初頭、アイラ・ルーベルが印刷事故から偶然発見した“ゴムブランケット”の可能性。
そして戦後、キャスパー・ヘルマンがそれらを産業技術へと昇華させ、オフセット印刷機を世界中の現場へと届けました。
発明、偶然、そして標準化――。この3つのステップが重なり合い、今日の「大量・高精度・安定」の印刷インフラが完成したのです。
さらに、現在ではCTPや品質管理システムとの連携により、印刷精度と効率は格段に進化し続けています。古い技術と思われがちなオフセット印刷は、**テクノロジーと融合しながら進化する「ロングセラー技術」**として、今もなお世界の印刷現場を支え続けています。
印刷の現場で“どの方式を選ぶべきか”に迷ったとき、オフセット印刷という選択肢には、200年の信頼と実績、そして“今この瞬間の進化”があることを、ぜひ思い出してください。
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