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0章|導入──黄泉は「黄色い泉」ではない
黄泉(よみ)。
どこか不気味で、神話的な響きを持つ言葉です。
「黄色い泉のこと?」「地獄と同じ意味?」
そうしたイメージを思い浮かべる人も多いでしょう。
まず、現代日本語における基本的な意味を確認しておきます。
黄泉とは、一般に
人が死後に行く世界、死者の国を指す言葉です。
日常会話で頻繁に使われる語ではありませんが、
神話・文学・比喩表現の中では、
「この世とは隔てられた死後の世界」という意味で理解されています。
そのうえで、最初に押さえておくべき重要な点があります。
「よみ」という読み方と、「黄泉」という漢字は、
もともと同じ発想から生まれたものではありません。
黄泉とは、もともと
日本語の「よみ」という死後世界の概念に、
後から漢字が当てられて成立した表記です。
つまり、
「黄色い泉」という意味から生まれた言葉ではありません。
この整理を最初にしておかないと、
黄泉という言葉は、
-
なぜ「よみ」と読むのか
-
なぜ「黄」や「泉」という字が使われているのか
といった点で、途端にわかりにくくなります。
本記事では、
まず日本語としての「よみ」を確認し、
次に漢字表記としての「黄泉」がどこから来たのかをたどることで、
この言葉の成り立ちを整理していきます。
1章|日本語としての「よみ」──漢字以前に存在した死後世界観
まず確認しておきたいのは、
「よみ」という言葉が、日本には漢字以前から存在していた
という事実です。
「よみ」は、
-
生者が立ち入れない場所
-
光の届かない世界
-
生と死が断絶された領域
といった性質を持つ、
死者の国を指す日本語として用いられてきました。
音読みや訓読みではなく、
漢字文化が伝来する以前から使われていた、
れっきとした やまと言葉 です。
語源については定説があるわけではなく、
いくつかの説が示されています。
その中で比較的よく紹介されるのが、
「闇(やみ)」と関係づけて説明する説です。
「よみ」は、光の届かない死後の世界を表す語であることから、
闇(やみ)という語感や意味と結びつけて理解されることがあります。
ただし、
闇 → やみ → よみ
という変化は、
音韻変化として確定できるものではなく、
あくまで一つの解釈にとどまります。
また、「よみ」を
山や境界といったイメージと結びつけて説明する説もあり、
死後の世界を、
人の暮らす場所とは異なる領域として捉えようとする
古代的な感覚が背景にあったと考えられています。
ここで重要なのは、
この段階の「よみ」が、
特定の色・元素・水といった
一つの象徴に整理された概念ではなかった
という点です。
「よみ」は、
闇や隔絶、境界といった感覚を伴う、
神話的・感覚的な死後世界観として存在していました。
後に用いられる
「黄」や「泉」といった具体的な要素は、
この日本語の「よみ」そのものに含まれていたものではなく、
中国語として成立していた「黄泉」という語が当てられた結果として、
表記上あらわれてくる要素です。
この違いを押さえておくことが、
次に扱う「黄泉」という漢字表記を理解する上での前提になります。
2章|漢字表記「黄泉」は、中国語の語から当てられた
次に起こったのが、漢字文化の流入です。
中国から文字体系が伝わったとき、
日本人は、すでに存在していた「よみ」という概念を
漢字でどう表すかという問題に直面しました。
その際、参照されたのが
中国語の 「黄泉(こうせん)」 です。
中国では古くから、
-
黄泉(Huangquan)
-
地下にある死者の国
-
冥界・死後世界
を指す語として、「黄泉」が使われていました。
日本の「よみ」と、中国語の「黄泉」は、
死者が行く世界という点で意味が近い。
そのため、
日本語の「よみ」に、
中国語としてすでに存在していた「黄泉」が対応づけられた
と考えられています。
ここで重要なのは順序です。
「よみ」から黄や泉を発想したのではなく、
意味の近い中国語の語を、後から借りた。
この点が混同されると、
黄泉という言葉は誤解されやすくなります。
3章|ここからは漢字の話──「黄」と「泉」は中国思想の要素
ここから先は、
日本語の「よみ」の話ではなく、
漢字表記「黄泉」に含まれる中国思想の話になります。
「黄泉」という二文字に含まれる
-
黄
-
泉
はいずれも、中国思想に基づく象徴です。
黄=土=大地
中国の五行思想では、
木・火・土・金・水
という五つの要素が世界を構成すると考えられてきました。
このうち「黄」は、
-
土
-
大地
-
中央
-
万物の基盤
を象徴する色です。
善悪や感情の前段階にある、
根源的な存在としての大地を示す色でした。
4章|泉=地下に広がる死後世界の象徴
「泉」もまた、中国語では、
-
地下から湧き出る水
-
地中に隠れた流れ
を意味します。
中国古代では、死者の世界を、
-
地下にある暗い領域
-
大地の奥に広がる場所
として捉える思想がありました。
そのため「泉」という字は、
地下にある死後世界を象徴的に示す文字
として用いられるようになります。
※ここは、漢字文化圏における象徴表現の説明です。
5章|神話に描かれる黄泉──「よみ」が物語として描かれた場
日本神話において黄泉が具体的に描かれるのは、
『古事記』のイザナギ・イザナミ神話です。
イザナミは死後、黄泉の国へ向かい、
それを追ってイザナギも黄泉に入ります。
しかし、黄泉で変わり果てた
妻イザナミの姿を見たイザナギは、
恐怖のあまり逃げ帰ることになります。
追手から逃れたイザナギは、
**黄泉比良坂(よもつひらさか)**で道を塞ぎ、
岩を隔ててイザナミと最後の言葉を交わします。
この場面で描かれているのは、
生者の世界と死者の世界が、
もはや行き来できないものとして分断される瞬間
です。
黄泉比良坂は、
「この世」と「あの世」を隔てる
象徴的な境界として語られてきました。
6章|地獄との違い──黄泉は裁きの場ではない
黄泉は、仏教の「地獄」と混同されがちですが、
両者は本質的に異なります。
| 黄泉 | 地獄 |
|---|---|
| 日本神話由来 | 仏教由来 |
| 死者が行く世界 | 罪人が落ちる場所 |
| 隔絶がテーマ | 罰と苦しみがテーマ |
黄泉は、
死後に置かれた「状態」そのものを表す概念
であり、
善悪を裁く場ではありません。
7章|現代日本語に残る「黄泉」
現在でも、
-
黄泉路(よみじ)
-
黄泉がえり
-
黄泉比良坂
といった表現が使われています。
これらの言葉は、
日本人の死生観の深層に
「よみ」という概念が今も生きていることを示しています。
8章|まとめ──「よみ」と「黄泉」は同一ではない
最後に整理します。
「よみ」と「黄泉」は、もともと同じ概念ではありません。
-
よみ:日本語として成立した死後世界の概念
-
黄泉(こうせん):中国語として成立していた死後世界の語
両者は、意味が近かったために結びつけられ、
「黄泉(よみ)」という表記が成立しました。
古代の人々は、
死を単なる終わりではなく、
生の世界から切り離された別の領域への移行として捉えていました。
黄泉という言葉は、
その感覚を今に伝える、
日本語と漢字文化が交差した場所に生まれた言葉なのです。
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