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0章|導入──「来る」はわかる。でも「将」って何者?
「将来どうなりたい?」
「将来が不安だ」
「将来性がある」
日常的に使う言葉ですが、ふと立ち止まると疑問が浮かびます。
来る=未来っぽい
でも 将 って何?
将軍?
リーダー?
それとも「将に〜せんとす」みたいな古文の将?
実はこの「将」こそが、将来という言葉を“未来の時間”にしている核心部分です。
1章|「将来」の意味を分解する
まずは漢字を一字ずつ見ていきます。
来(らい)
-
来る
-
到来する
-
時間・出来事がやってくること
👉 これは直感どおり、「未来」を指す動き。
将(しょう)
ここが本丸です。
2章|「将」の語源と本来の意味
「将」という漢字の意味は、一見すると「将軍」などの印象が強く、時間とは結びつきにくいように感じられます。
しかし本来の「将」は、次のような意味を中心に持つ漢字です。
将の基本的な意味
-
率いる
-
引き連れる
-
前に立って進める
-
これから行おうとする状態
これらに共通しているのは、
すでに動き出しており、
ある方向へ向かって進んでいる状態
という感覚です。
そこから「将」は、
-
まだ起きてはいないが、すでに流れは始まっている
-
これからそうなろうとしている段階
といった意味合いでも使われるようになりました。
「将」は時間を示す言葉でもあった
古典・漢文では、「将」は
**未来の出来事が“まさに起ころうとしている状態”**を表す語としても用いられます。
たとえば、
-
将に雨降らんとす
→ 今にも雨が降りそうだ -
将に発せんとす
→ まさに始まろうとしている
ここでの「将」は、未来が確定した事実ではありません。
しかし、
流れとしては、すでにそちらへ向かっている
という 予兆・方向性 を示しています。
この「将」の用法が、のちに「将来」という言葉の時間的な意味を支えることになります。
3章|「将来」はいつ生まれた言葉か
「将来」という言葉は、漢語由来の熟語として、日本語に取り入れられました。
ただし、その意味は最初から現在使われている「未来」という意味だけだったわけではありません。
古い意味としての「将来」
日本語の文献では、
「将来」は古く、
-
もって来る
-
連れて来る
-
もたらす
といった意味でも使われていました。
これは「将(引き連れる)」+「来(来る)」という漢字本来の動きに即した用法です。
時間概念としての「将来」へ
その後、「将来」は次第に、
-
これから先にやって来るもの
-
今後到来する時
-
未来の見通し
といった 時間概念の言葉 としても用いられるようになります。
この意味では、
「将に来たらんとする時」
(これから来ようとしている時間)
というニュアンスが強く働いています。
日本語としての定着と使い分け
日本語ではやがて、
-
未来:抽象的な時間の先
-
将来:見通し・進路・人生など、人や物事に結びついた未来
という使い分けが、言葉の感覚として定着していきました。
「将来」が単なる時間表現にとどまらず、行く先・向かう方向を含んだ言葉として使われるようになった背景には、この「将」の意味の積み重ねがあります。
4章|なぜ「未来」ではなく「将来」なのか
ここが重要です。
未来
-
まだ来ていない時間
-
抽象的
-
遠い
将来
-
今から続いていく時間
-
方向性を含んだ未来
-
自分の行動とつながる未来
つまり将来は、
ただ来る未来ではなく、
今から“向かっていく未来”
なのです。
5章|「将来性」「将来像」に残る“将”の意味
「将」の意味は、派生語にもしっかり残っています。
-
将来性
→ これから伸びていく可能性 -
将来像
→ そうなっていく途中のイメージ -
将来設計
→ 未来を導いていく計画
どれも共通しているのは、
未来を“待つ”のではなく、
未来へ“向かう”姿勢
です。
6章|「将来」と「未来」の決定的な違い
整理すると、こうなります。
| 言葉 | ニュアンス |
|---|---|
| 未来 | 時間としての先 |
| 将来 | 方向・見通し・進行中の未来 |
だから、
-
宇宙の未来
-
人類の未来
は自然ですが、
-
子どもの将来
-
会社の将来
と使うのは、人や組織が“進んでいく存在”だからなのです。
まとめ|将来とは「向かっていく時間」
「将来」という言葉は、単にまだ来ていない未来を指す言葉ではありません。
将は、導く・率いる・向かっていくこと。
来は、やって来ること。
この二つが合わさった将来は、
これから先に起こる時間
であると同時に、
今から続いていく流れそのもの
を意味しています。
だから将来は、ただ待っていれば自然に訪れるものではありません。
今の選択、今の行動、今の考え方が、少しずつ方向をつくり、やがて「来る時間」を形づくっていきます。
将来とは、過去とも現在とも切り離された遠い世界ではなく、すでに歩き始めている時間なのです。
そして──
将来とは、
ただ待っていれば来るものではありません。
これからの先を導き、来させるのは、自分自身なのです。
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