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0章|なぜ「七つの草」なのか
七草(ななくさ)と聞くと、多くの人が「1月7日に食べる七草粥」を思い浮かべます。けれど、
なぜ七つなのか、なぜ草なのか、そしてそれぞれの草がどんな意味で選ばれているのかまで説明できる人は多くありません。
七草は単なる植物の名前の集合ではありません。
正月という特別な時間の区切りに、自然の力を借りて一年の無事を願うための、意味を持った組み合わせです。
本記事では、七草の意味・歴史・文化を整理しながら、「七つの草」がどういう役割で使われてきたのかを読み解いていきます。
1章|七草とは何か【意味】
七草とは、**1月7日に七草粥として食べる「春の七草」**を指す言葉です。
この行事は、無病息災を願い、正月のごちそうで疲れた身体を整えるためのものとして定着してきました。
重要なのは、七草が
-
特定の七種の植物
-
それを粥として食べる行為
-
年中行事としての意味
この三つを含んだ文化的な概念である点です。
「七草=七つの草の名前」と覚えるだけでは、七草の本質には届きません。
2章|なぜ「七」なのか【数の意味】
七という数は、古くから特別な意味を持ってきました。
七曜、七福神、七五三などに見られるように、七は区切り・完成・めでたさを表す数です。
多すぎず、少なすぎず、
人が覚えられ、行事として成立する数。
七草は「全部食べる」「全部願う」ために、ちょうどよい数だったと考えられます。
3章|七草の起源と歴史
七草の背景には、中国の「人日(じんじつ)」の節句があります。
1月7日は、人を大切にする日とされ、七種の野菜を食べて健康を願う風習がありました。
これが日本に伝わり、もともと存在していた若菜摘みの習慣と結びつきます。
平安時代には宮中行事として行われ、江戸時代になると庶民の年中行事として広く定着しました。
ここで七草は、
「薬膳的な行為」から
「生活に根ざした祈り」へと変化していきます。
4章|七草それぞれの意味
春の七草は、次の七つです。
これらは薬効や栄養だけで選ばれたというより、名前・姿・暮らしとの関わりから、縁起や願いを重ねられてきた草と考えられています。
芹(せり)
水辺に生え、寒さの中でも芽吹く生命力の強い草です。
「競り勝つ」に音が通じることから、勢いや前進を願う縁起草として受け取られてきたといわれています。
薺(なずな)
田畑の周りに自然に生える、もっとも身近な草のひとつです。
暮らしの足元に根づく存在であることから、安定した生活や地に足のついた日常を象徴する草として捉えられてきました。
御形(ごぎょう)
古くから薬草として知られ、喉や咳に用いられてきた草です。
七草の中では、身体の内側を整える存在として位置づけられることが多く、「調える役割」を担う草と考えられています。
繁縷(はこべら)
歯や口内の手当てに使われてきた身近な草です。
「繁」の字が示すように、増える・続くというイメージが重ねられ、暮らしや命の継続を願う意味で受け取られてきました。
仏の座(ほとけのざ)
仏の座を思わせる名を持つ草です。
その名称から、心身の安定や無病息災への祈りを象徴する存在として解釈されることがあります。
※なお、七草でいう「仏の座」は、春に紫色の花をつける一般的なホトケノザとは異なり、タビラコ(コオニタビラコ)を指します。
菘(すずな/かぶ)
「すずな」という呼び名が「鈴」に通じることから、神を呼ぶ音を連想させる草とされてきました。
畑で育つことから、大地の恵みそのものを表す存在として捉えられることが多い草です。
蘿蔔(すずしろ/大根)
白い色は、古くから清浄を象徴する色とされてきました。
体内を整え、穢れを清めるという意味合いで、七草の締めくくりを担う草として受け取られています。
七草はそれぞれが、
勢い・安定・調整・継続・鎮静・恵み・清め
といった異なる役割を担う草として解釈され、
それらが合わさることで、一年の無事を願うひとつの祈りを形づくってきたと考えられます。
5章|七草粥として食べる意味【文化】
七草は「知る」だけでなく、「食べる」行事です。
粥にして身体に取り込むことで、祈りを言葉ではなく行為として完結させる点に、日本文化らしさがあります。
正月料理で疲れた胃を休めるという実用的な意味もありますが、
それ以上に、新しい一年へ身体を戻すための通過儀礼と捉えると分かりやすいでしょう。
6章|現代における七草の使い方
現代では、七草の名前をすべて覚えていなくても、
「七草粥を食べる」という行為自体が意味を持っています。
それは、
-
年始のリセット
-
健康への意識
-
暮らしの区切り
を確認するための、静かな習慣です。
まとめ|七草とは「役割を持つ七つの草」
七草とは、単なる草の名前ではありません。
自然・身体・暮らしを整えるために選ばれた、役割を持つ七つの存在です。
それぞれの草が違う意味を持ち、
合わさって初めて「七草」になる。
名前を暗記するより、
なぜ七つなのかを知ることで、
七草は今も生きた行事として私たちの暮らしに残り続けます。
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