栗色とは?──茶色と一線を画す、日本の生活文化が生んだ赤茶色【由来・歴史・意味・渋皮との関係】

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✅ 0章|導入──「栗色=茶色?」と思われがちな色の不思議


栗色(くりいろ)と聞くと、
「茶色とどう違うの?」
そんな素朴な疑問を抱く方が少なくありません。

しかし、伝統色としての栗色には、
茶色だけでは説明しきれない“深みの層” があります。

なぜなら栗色は、
栗の実そのものの黄色ではなく、
殻や渋皮に宿る“赤みを帯びた褐色” を拠りどころにした色だからです。

秋の林でいがを割った瞬間に見える、
あの“しっとりとした赤茶”。
時間とともに渋皮がわずかにくすみ、
光に当たると赤みがふっと浮かぶ――
その揺らぎこそが栗色の本質です。

この色は、ただ自然に存在するだけではなく、
生活文化・染色・季節感の三つが重なって
日本人の記憶に深く刻まれていきました。

桜色や桃色のように「花の色」をそのまま色名にする例は多いのに、
栗色は “中身ではなく皮や渋皮の色”を名付けた珍しい色名 です。

そこには理由があります。

  • 年中安定して見られる自然の赤褐色だったこと

  • 布・紙・籠などの染色に使いやすい色だったこと

  • 秋・実り・豊穣の象徴として親しまれてきたこと

こうした複数の要素が折り重なり、
「茶色の一種」ではなく“栗色という固有の色” として、
日本の伝統色体系の中で確固たる地位を得るようになりました。

栗色は、静かに佇みながら、
日本の暮らしと季節を映し続けてきた 温かい赤茶色 なのです。


✅ 1章|栗色の特徴──赤みがそっと灯る、日本の落ち着いた褐色


栗色(くりいろ)は「茶色の一種」と思われがちですが、
実際には 赤みがそっと潜む“静かな褐色” です。

秋の森で、落ち葉の間から殻付きの栗がひょっこり顔を出す。
その表面に宿る、乾いた光を少しだけ吸い込んだ赤茶色――
あの“やわらかな深み”が栗色の印象をつくっています。

茶色ほど無機質ではなく、
赤茶色ほど強く主張もしない。
その中間にたゆたう 穏やかな暖色 が栗色です。


栗色の立ち位置──茶系と赤系の“あいだ”に生まれた色

色相環の上では、栗色は 茶系と赤系の隙間 にあります。

  • 茶色の素朴さ

  • 赤茶色の温度感

  • 木の実らしい落ち着き

これらが同時に存在し、
視覚的には控えめなのに、情緒は豊か という不思議なバランスを生み出します。

日本人が昔から好んだ“渋さ”
──その価値観が形になった色とも言えます。


近い色との違い──似ているようで似ていない、ニュアンスの世界

栗色は、周辺の似た色と比べると独自の性格が際立ちます。

茶色

→ より無彩色寄りで、栗色ほど赤が立たない
“土の色”のイメージが強い

赤茶色

→ 赤が主役。栗色は赤味が“背景にとどまる”

黄土色

→ 明るく黄みに寄るため、乾いた印象

マロンカラー

→ 西洋デザインで使われる「つやのある栗色」
 日本の栗色よりやや軽やか

栗毛

→ 主に動物・髪の色。
 同じ“栗”でも対象が異なるためニュアンスが違う

こうして見比べると、栗色が
“自然で穏やかな赤褐色”という独立した立ち位置
を持っていることがわかります。


光学的にはどんな色?──赤のあたたかさが中心に

栗色を光学的に読み解くと、その印象がより明確になります。

  • 赤(R):中〜やや高め

  • 緑(G):中程度

  • 青(B):低い

赤を中心に、緑が少し支え、青が控えめ。
この配合によって “くすんだ温かみ” が生まれます。

波長で言えば、
およそ580〜620nm付近の“赤〜橙の帯域” が強く感じられる領域。

つまり栗色は、
赤の情緒と茶の落ち着きが同居する色
といえるのです。


✅ 2章|栗色の由来──果実・皮・渋皮が紡ぐ色の物語


栗色という名前の源をたどると、
私たちが普段イメージする“栗の黄色い実”ではなく、
殻(いがの内側)や渋皮に宿る赤褐色 に行きつきます。

実の黄色は、調理した時に目にする「食欲の色」。
しかし伝統色の文脈では、
染めにも使えず、自然の中でも一瞬しか姿を見せないため、
色名の基準とはならなかった のです。


色名を決めたのは“殻の褐色”と“渋皮の赤み”

栗の殻(いがを割った内側)は、
光を受けると黄褐色から赤茶へとゆっくり移ろいます。
さらに、渋皮が薄く貼りついた部分は、
時間の経過とともに赤みを帯びた深い褐色へと落ち着きます。

この 「赤みの揺らぎ」 こそが、
後の“栗色”の核になりました。

昔の人びとは、
秋になると繰り返し目にするこの色を、
布・紙・籠・道具などの身近なものに写し込みました。

こうして、栗の殻と渋皮がもつ静かな赤茶が、
生活に染み込むように定着していった のです。


渋皮に潜むタンニンが“栗色の深み”をつくる

栗の渋皮には タンニン(渋味成分) が豊富に含まれています。
古くから、植物の渋皮や樹皮は染料として使われ、
空気に触れることで色がわずかに赤く変化し、
褐色に深みが出ることが知られていました。

栗の渋皮も例外ではなく、
採りたてよりも、時間を置いた方が赤褐色が濃くなる性質を持っています。

この自然の化学変化は、
単なる“茶色”では表現できない、
奥行きと温度を感じさせる赤茶色を生み出しました。

栗色の「じんわりと温かい印象」は、
まさにこのタンニンの働きによるものです。


栗色の主役は“実”ではなかった

栗という果実の色名でありながら、
主役は「中身」ではなく「外側」だった――
これは日本の色名としては、かなり珍しいケースです。

なぜそのような名付けになったのか。

理由はシンプルで、
人々が日常的に触れ、使い、眺めていたのが “殻と渋皮” だったから。

  • 栗渋染め

  • 籠や農具の補修

  • 生活道具の着色

  • 和紙の染め

こうした暮らしの中の用途はすべて、
明るい果肉ではなく、渋皮や殻の褐色のほうを必要としていました。

だからこそ、色名として残ったのは
「栗の黄色い実」ではなく
“渋皮の赤茶”という生活に根付いた色だったのです。


自然・素材・暮らしの三位一体で生まれた色

単に“栗っぽい色”だから栗色になったのではありません。

  • 自然が生んだ赤褐色(殻・渋皮)

  • 素材として扱いやすい褐色染料(タンニン)

  • 身近な暮らしで繰り返し目にする色(日用品・工芸)

この三つが重なったからこそ、
栗色は茶色や赤茶とは区別され、
独立した伝統色として受け継がれていったのです。

栗色は、単なる色名ではなく、
暮らしそのものが名付け親になった色とも言えます。


✅ 3章|栗色の歴史──素朴でありながら力強い生活の色


栗色の魅力は、派手さではありません。
むしろその“控えめさ”こそが、長い日本の暮らしで愛されてきた理由でした。

今から千年以上前――
平安の人びとは、栗の実を食として楽しむだけでなく、
殻や渋皮を生活の中で自然に活用していました。
紙や木具に色を移し、渋みのある赤茶は
「手の届く自然の色」 として身の回りに溶け込んでいきます。


■ 栗色は“生活の記憶”とともに育った

中世になると、栗色は生活道具や農具、籠、傘、衣類など、
日々の手仕事の中にそっと存在感を増していきます。

派手さはないのに、不思議と飽きがこない。
華美ではないのに、品がある。
そんな“暮らしの背景色”として、栗色は人々の心に残りました。

赤茶の控えめな温度は、
土の匂い、木の手触り、秋の実り――
生活の景色そのものを映し出していたのです。


■ 民藝運動が再び照らした「栗色の美」

近代に入り、柳宗悦・河井寛次郎らの民藝運動が始まると、
栗色は“素朴の中の美”として再評価されました。

工芸品の釉薬や木工の仕上げに宿る栗色は、
決して主張しすぎず、
それでいて確かな存在感を放つ。

彼らはこうした色を、
「用の美」「暮らしの美」 として取り上げ、
栗色は“和の美しさを支える赤茶”として
新たな意味を与えられていきました。


■ 現代にも息づく、静かな赤茶色

今日でも、栗色はあらゆる場面で目にすることができます。

  • 和装の帯や羽織の差し色

  • 木工家具の仕上げ

  • 茶道具や民芸品の表情

  • 秋をテーマにした和菓子・包装

どれも、過度に主張せず、
でも深い温かさを湛えた“和の赤茶”。

時代が変わっても、
栗色の落ち着きは人を安心させ、
自然を想い起こさせる力を持ち続けています。

栗色は、生活・季節・文化をつなぐ色。
静かでありながら、
強く人の記憶に残る赤茶色なのです。


✅ 4章|文化的意味──栗色が色名として定着した理由


栗色という色名が、
ただの「茶色の一種」ではなく、
独立した伝統色として長く残ってきたのには理由があります。

その理由を紐解くと、
栗色が “自然・生活・季節” の三つをつなぐ、
きわめて日本的な色であることが見えてきます。


生活に寄り添う「日常の赤茶色」

栗の殻や渋皮の色は、
派手さはないけれど、昔の暮らしの中にいつもありました。

木桶、籠、紙、布、農具――
どれも使い込むうちに、
日光と時間が赤茶を深めていきます。

その自然な経年変化が、
栗色と生活の距離をぐっと縮めました。

「茶色よりも生活を感じる赤茶色」
この感覚が、色名としての独自性を押し上げたのです。


季節と結びつく色──秋・実り・豊穣

栗そのものが秋の象徴であったことも、
栗色が特別な色名になった理由のひとつです。

  • 山の恵み

  • 収穫の実り

  • 冬に備える保存食

  • 和菓子や行事に添えられる“季節の色”

こうした文化背景が重なり、
栗色は 秋=豊かさ=温かさ を連想させる色として使われるようになりました。

文学や俳句でも、栗色は秋の静けさや成熟を表す言葉として現れます。


茶色とは違う「意味の層」を持った赤茶色

茶色は大地や木の幹など、
“どこにでもある基本色” として幅広く使われます。

一方、栗色はもう一段、
感情や情緒が乗る赤茶色 です。

  • 温もり

  • 素朴さ

  • 成熟

  • 収穫

  • 生活の息づかい

こうしたイメージの層が積み重なり、
栗色は茶色や赤茶色よりも「物語性のある色」として選ばれてきました。

だからこそ、
栗色は“ただの茶色”ではなく、
生活文化そのものを染めた色 として独自に名付けられています。


自然 × 文化 × 季節が生んだ、日本独自の色名

栗色の成り立ちをまとめると、
次の三つが軸になっています。

  • 自然素材:栗の殻と渋皮の穏やかな赤褐色

  • 生活文化:染色・道具・日用品に馴染む色

  • 季節感:秋の実り・豊穣・成熟を象徴する色

この三つが互いに影響し合い、
栗色は特別な意味を持つ赤茶色として定着しました。

栗色という言葉を口にするだけで、
どこか懐かしく温かい気持ちになるのは、
この色が長い時間をかけて私たちの生活と結びついてきたからなのです。


✅ 5章|栗色の色データ──伝統色をデジタルで再現するということ


伝統色の栗色は、もともと自然物の色を頼りに名付けられたため、
厳密に「この値が正解」という基準があるわけではありません。

それでも、現代のデザインや印刷では、
“デジタル環境で栗色の雰囲気をどう再現するか” が重要になります。

そのため、もっとも一般的に使われる代表値として、
栗色を近い色味で再現できる 参考データ をまとめておきます。


栗色の代表カラーコード(参考値)

  • HEX:#8B4513

  • RGB:139 / 69 / 19

  • CMYK:0 / 50 / 86 / 45

この値は、
栗の殻や渋皮が持つ 「赤みを含んだ深い褐色」 を、
デジタル上でも安定して再現できる近似色です。

モニターでは光源で表現され、
紙ではインクと紙色の影響が加わるため、
まったく同じには見えません。

しかし、
“栗色らしい温度感” を再現するという意味では、
この色データが最も扱いやすい基準となります。


デジタル再現で気をつけたい「栗色の揺らぎ」

栗色は自然由来の色のため、
以下のように “わずかな調整で表情が変わる” 色でもあります。

  • 赤を少し強める → 温かい印象の「秋らしさ」

  • 黒をやや増やす → 渋みのある「民藝的な深さ」

  • 黄を加える → 素朴で柔らかい「土色のニュアンス」

特に印刷では、
光沢紙では赤が強く見え、
和紙ではくすみが増して穏やかな栗色になります。

つまり、栗色は 固定された色 というより、
素材・光・環境によって表情が揺らぐ“生きた褐色” なのです。


伝統色とデジタル色の“橋渡し”として

伝統色は、もともと自然物の感覚から生まれました。
一方、デジタル色は数値で管理されます。

その間をつなぐのが、
こうした 代表値(リファレンスカラー) です。

栗色は、茶系の中でも特に赤みの位置づけが繊細で、
「落ち着き」「温かみ」「渋み」がバランスよく混ざっているため、
デジタル再現ではこの微妙な配分を意識することで
より“本物の栗色”に近づきます。


✅ 6章|まとめ──栗色は、静かに暮らしを照らす“日本の赤茶色”


栗色は、派手ではありません。
けれど、その静けさの中には、
日本人の暮らしや季節の感覚がそっと息づいています。

殻や渋皮に宿る赤褐色――
秋の光を受けると、ほんのわずかに赤みが濃くなるあの色。
そのささやかな揺らぎが、日々の生活のなかで
「温かさ」や「安心」を届けてきました。

栗色が「茶色の一部」ではなく
独立した色名として残った理由 をあらためて振り返ると、

  • 殻と渋皮の“赤褐色”が日常で何度も目に触れたこと

  • 渋皮染めや工芸など、生活文化に深く結びついていたこと

  • 秋・実り・豊穣を象徴する季節の色だったこと

  • 茶色よりも赤みを帯び、独特の上品さをまとっていたこと

こうした要素が静かに積み重なり、
栗色はいつの時代も消えることなく受け継がれてきました。

現代のデザインで栗色を扱うとき、
その背景には、ただの“色データ”を超えた 生活の記憶 が潜んでいます。

和装の帯の赤茶、
古い紙箱の渋み、
木工品の落ち着いた光沢……。

どれも、時代が変わっても色あせない“暮らしの温度”を宿しています。

栗色とは――
自然、文化、季節の記憶がゆっくりと重なって生まれた、
日本ならではの赤茶色。

そしてその控えめな佇まいは、
これから先の暮らしでも、きっとそっと色を添え続けるはずです。


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