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0章|導入──私たちは、なぜ「意味のない形」を理解できるのか
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これらを見たとき、私たちはほとんど無意識に意味を理解します。
矢印は方向、バツは否定、電話マークは連絡手段、男女マークはトイレ。
けれど、冷静に考えると不思議です。
これらは単なる形であり、文字でも言葉でもありません。
それでも私たちは、それを「意味あるもの」として受け取っています。
その正体こそが――記号です。
1章|記号とは?現代日本語での意味
**記号(きごう)**とは、
一定の意味や情報を伝えるために用いられる、(多くの場合は)文字以外のしるし・形
と説明されます。
重要なのはここです。
言葉ではない
形そのものに意味があるわけでもない
それでも意味が通じる
つまり記号とは、
👉 意味を直接語らず、意味を呼び起こす装置
なのです。
2章|「記」と「号」──二つの漢字が示す役割分担
ここで一番大事なのは、「記号」という言葉が“記す”だけでは終わっていないところです。
「記」は分かる。でも「号」って何?──ここが核心となります。
まずは二つの漢字を、単語としてほどいてみます。
■ 記=“残す”ための文字
「記」は、まさに 記す(しるす) の記。
書き留める、記録する、後に残す──そういう“固定する力”を持った字です。
日記、記録、記事、記念。
どれも「一度消えそうになった情報を、消えない形にする」という働きを含んでいます。
つまり、
✅ 記=意味や情報を、あとに残すこと
ここは直感どおりで、迷いはないはずです。
■ 号=“呼びかける”ためのしるし
問題はここ。
「号」は、ただの番号(No.)っぽく見えるけれど、実はもっと人間っぽい字です。
「号」には、
名づける(呼び名)
呼びかける(号する)
合図を送る(号令)
といった意味が含まれます。
たとえば、
信号
暗号
符号
号令
このあたりの言葉を眺めると分かりやすい。
どれも共通しているのは、
✅ 誰かに伝えるための“しるし”であること
「号」は、内側のメモではなく、外へ向けた合図なんです。
■ だから「記号」は、“意味を伝える形”になる
ここまでくると、「記号」という語の輪郭がはっきりしてきます。
記:意味を残す(固定)
号:意味を知らせる(伝達)
つまり記号とは、
✅ 意味や情報を、他人に伝わる形にした“しるし”
ということになります。
「号の記し?」という感覚は正しい。
ただもう少しだけ丁寧に言うなら、
👉 「記された意味を、号(サイン)として立ち上げたもの」
これが「記号」です。
■ ちなみに:記号と符号はどう違う?
ここで似た言葉も整理しておくと、理解が一段深くなります。
記号:意味を示すしるし全般(広い)
符号:一定のルールで置き換えたしるし(コード寄り)
ざっくり言えば、
✅ 記号=“意味が伝わる形そのもの”
✅ 符号=“対応表を使って解読する形”
という立ち位置です。
■ 「記号」という言葉自体も、思っている以上に古い
そしてもう一つ。
「記号」という言葉は、思っている以上に古く、中世の頃にはすでに用例が確認できるとされます。
つまり「記号」は、現代だけの便利語ではなく、
昔から人が「しるし」に意味を託してきた、その文化の延長線上にある言葉でもあるんです。
3章|語源と成立──記号はいつ生まれたのか
記号という概念自体は非常に古く、
人類が言語を持つ以前から存在していた可能性があります。
洞窟壁画
祭祀の印
部族の紋様
これらはすべて、「意味を持つ形」です。
文字が成立する以前から、
人間はまず “意味を託した形(記号的なもの)”によって世界を分節化してきました。
つまり、
👉 言葉より先に、記号的なものがあった
そう考えると、私たちが「形」から意味を読み取れる理由も、少し腑に落ちてきます。
4章|文化としての記号──文字・宗教・デザイン
文字そのものも、実は高度な記号体系です。
漢字:意味を担う側面が強い
アルファベット:音を表す体系
さらに宗教では、
十字架
曼荼羅
五芒星
など、一目で意味世界を呼び起こす記号が使われます。
現代では、
ロゴ
ピクトグラム
絵文字
として、記号文化はむしろ加速しています。
5章|使い方と具体例──記号はどこで生きているか
日常での例
〇・✕:肯定と否定
→:方向・因果
!:強調
社会での例
信号機
非常口マーク
道路標識
デジタルでの例
アイコン
絵文字
UIボタン
共通するのは、
👉 言葉を介さず、即座に意味が伝わること
です。
6章|まとめ──記号とは「意味そのもの」ではない
記号とは、
意味ではない
言葉でもない
ただの形でもない
それなのに、
私たちは確かに意味を受け取ります。
記号とは、
👉 意味が宿る場所ではなく、意味が立ち上がるきっかけ
なのです。
だからこそ、
記号は文化や時代によって変わり、
解釈も揺れ動きます。
それでも私たちは今日も、
無数の記号に囲まれながら、
迷うことなく世界を理解している。
――それが「記号」という、人間的発明です。
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