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0章|「本命」って、実はかなり幅の広い言葉
「本命の人」「本命チョコ」と聞くと、まず恋愛を思い浮かべる人が多いでしょう。
一方で、「本命馬」「本命候補」といった言い方も、日常的に使われています。
同じ二文字なのに、
-
感情の話
-
勝負の話
-
将来の進路や選択の話
…ここまでカバーしているのが面白いところです。
なぜ「本命」という言葉は、ここまで広く使えるのでしょうか。
まずは、現代語としての意味から整理してみます。
1章|本命の意味──結論から言うと「いちばんの候補」
**本命(ほんめい)**とは、現代日本語では主に次の意味で使われます。
まずひとつは、競馬・競輪などで 最も勝つ可能性が高いと見られる対象。
いわゆる「本命馬」の本命です。
次に、選挙・人事・昇進などで使われる 最有力候補。
「次期社長の本命」「当選の本命」などがこれに当たります。
そしてもうひとつが、私たちの日常でよく使う
個人的な選択における第一希望・最優先の対象。
共通しているのは、「確定」ではないという点です。
本命は、すでに決まった結果ではありません。
数ある候補の中で、最も中心に置かれている存在
それが本命です。
2章|漢字で見る「本命」──ポイントは「命」にある
「本」は分かりやすい漢字です。
本筋、本体、本番などに使われるように、中心・主・根本を表します。
一方で難しいのが「命」です。
現代の感覚では、どうしても「いのち」を思い浮かべてしまいます。
ですが、「本命」の命は、単なる生命そのものを指しているわけではありません。
ここで重要なのが、**占いの世界で使われてきた「命」**という考え方です。
3章|語源・由来──本命は、もともと占いの言葉だった
「本命」という言葉は、占い(陰陽道など)の文脈で語られてきた言葉だとされます。
陰陽道では、人が生まれた年や日によって
**「本命星(ほんみょうしょう/ほんめいせい)」**と呼ばれる星が定められる、という考え方があります。
この「本命」とは、
その人の生まれに結びついた、基準となる運命・割り当て
のような意味合いを持つ言葉だった、という見方です。
つまり元の本命は、「いちばん当たる」「いちばん大切」というよりも、
最初から決められている、中心となる基準
を指していたのです。
4章|歴史──なぜ本命は「最有力候補」という意味に変わったのか
この占い語としての「本命」が、近代以降、少しずつ意味を広げていきます。
① 勝負の世界への転用
競馬や競輪では、
「もっとも勝つ可能性が高い馬・選手」を指して
「本命」という言葉が使われるようになります。
ここで重要なのは、
占い=予測
競馬=予想
という構造の共通点です。
「当たりやすい」「中心になる存在」という感覚が、
自然に競技の予想語へと移っていきました。
② 社会的な候補語へ
さらにそこから、
-
選挙の本命
-
次期社長の本命
-
後継者の本命
といった使い方が広がります。
この段階で本命は、
「運命」よりも「見込み」「予想」「評価」に軸足を移します。
5章|文化──「本命チョコ」が、いちばん“本命”らしい理由
「本命チョコ」という言葉は、日本独自のバレンタイン文化の中で生まれました。
義理チョコ、友チョコといった区別が広がる中で、
他と明確に違う、特別な相手
を示す言葉として定着した表現です。
ここで使われている「本命」は、競馬や選挙のような客観評価ではありません。
勝ちそうだから。
有力だから。
周囲がそう言っているから。
…ではなく、
自分の中で、最初から中心に置いている存在
を指しています。
面白いのは、この使い方が
実は「本命」という言葉の いちばん古い感覚に近い という点です。
もともと本命は、陰陽道や占いの世界で
「生まれに結びついた基準」「割り当てられた中心」を意味していました。
それは、
-
比較して選ぶもの
-
後から順位を付けるもの
というより、
最初から、そうなっているもの
に近い考え方です。
その意味で見ると、本命チョコは
「第一候補」というよりも、運命の相手に近い感覚で使われています。
だからこそ、
-
義理でもない
-
候補でもない
-
迷いの中の一位でもない
ただ「本命」。
この言葉が一番しっくり来るのです。
競馬や人事で使われる本命は、時代の中で広がった比喩的な用法。
一方で本命チョコは、言葉がいったん外へ広がったあと、
感情の世界で、元の場所に戻ってきた使い方
──そう言ってもいいかもしれません。
6章|使い方と例──本命は人にも物にも使える
本命は、人にも物にも進路にも使えます。
よくある使い方は、次のような形です。
-
本命馬
-
本命候補
-
本命の大学
-
本命の人
例文も見てみましょう。
-
「今回はあの選手が本命だと言われている」
-
「第一志望が本命で、併願校も受けた」
-
「本命チョコを渡すときが一番緊張する」
人・物・進路・選択肢。
どれにも使えるのが、本命の強さです。
7章|本命と似た言葉との違い
似た表現と比べると、本命の性格がよく見えてきます。
-
第一志望:制度や選択肢に寄った言葉
-
有力候補:やや客観的で感情が薄い
-
本命:客観と主観、両方をまたげる言葉
だからこそ本命は便利で、少し曖昧です。
そして、その曖昧さこそが、長く生き残っている理由でもあります。
まとめ|本命とは「中心に割り当てられたもの」
本命とは、単なる「いちばん」や「第一候補」を表す言葉ではありません。
もともとは、生まれや運命に結びついた
基準となる中心を指す言葉でした。
その感覚が、勝負の世界では「最有力候補」へ、
社会の中では「期待される存在」へと広がっていきます。
そして今、もっとも感覚的にしっくり来る形で残っているのが
本命チョコという使い方です。
それは、比較して選ばれた一位ではなく、迷った末の候補でもない。
最初から、他と同列に置けない存在
という意味での本命。
言葉としてはいちばん新しそうに見えて、
実は語源的には、いちばん古い感覚に近い。
本命とは、多くの可能性の中から選ぶ言葉ではなく、
最初から、自分の中心に置かれているものを指す言葉なのです。
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