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第0章|導入──なぜ葬式は「黒と白」なのか?
葬式の色といえば黒と白
葬式の場面を思い浮かべると、まず目に入るのは黒い喪服と、白を基調にした花や布の装飾ではないでしょうか。日本ではそれが当たり前の光景になっていますが、少し立ち止まって考えると「なぜ黒と白なのか?」という疑問が湧いてきます。赤でも青でもなく、必ず黒と白。この二色が選ばれ続けるのには、単なる習慣以上の深い理由があるのです。
黒は「無」、白は「全部」
色彩学の視点から見ると、黒と白は正反対の性質を持ちます。黒は光を吸収してしまうため、私たちの目には「何もない=無」として映ります。反対に白は、すべての波長の光を反射するため「すべての色=全部」を含む色として認識されます。つまり、黒と白は「何もない」と「すべてある」という両極端の象徴なのです。
境界を示す二色
葬式という場面でこの二色が並ぶことは、偶然ではありません。黒は死や終わりを、白は再生や新しい始まりを示す色とされてきました。だからこそ、人の一生を見送る場では「無と全部」「終わりと始まり」を同時に表現する必要があり、その役割を担う色として黒と白が選ばれてきたのです。
第1章|黒と白の色彩学──「無」と「全部」のコントラスト
黒は光の不在
私たちが「黒」と呼ぶ色は、実際には“色がない状態”です。物体に光が当たっても、その表面が光を吸収してしまい、反射する光がほとんど目に届かないとき、私たちはそれを黒として認識します。つまり黒は「光が存在しないこと=無」を可視化した色なのです。夜空の闇や、電気を消した部屋の暗さを思い浮かべれば、その感覚がすぐに理解できるでしょう。
白は光の総和
一方で白は、黒の正反対にあります。白い紙が白く見えるのは、表面が可視光線をほぼ均等に反射するからです。赤・青・緑といったさまざまな波長の光が混ざり合い、結果として私たちの目には「すべてが含まれた色=全部」として映ります。光の三原色(RGB)をすべて混ぜると白になる、という理科の実験を思い出した人もいるかもしれません。
終わりと始まりを表す二色
黒は「光がない=終わり」、白は「すべての光がある=始まり」。物理学的な仕組みそのものが、死と再生、喪失と希望のイメージと重なっていきます。だからこそ葬儀において黒と白は単なる布地や服装の色を超え、「無と全部」「終わりと始まり」を象徴する儀式の色となったのです。
第2章|日本における喪の色の歴史──白から黒へ
古代日本の葬送と白装束
もともと日本で「死の色」とされていたのは黒ではなく白でした。古代から中世にかけて、死者は白い布や衣で覆われるのが通例でした。今でも遺体に着せられる「白装束」はその名残であり、死者を清め、穢れを祓い、来世への旅立ちを整えるための衣装とされています。白は「無垢」や「清浄」を意味し、死を穢れではなく“新たな始まり”として送り出すための色だったのです。
神道と白の意味
神道においても白は特別な意味を持ちます。祭礼の場で神職が白衣を着るのは、清らかさを体現するためであり、死者を見送る際にも同じ意味が込められていました。つまり、白は「祓い清め」の色であり、死を迎えるために人を純化する象徴でもあったのです。
明治以降、西洋化による「黒」の定着
しかし、明治時代に西洋文化が流入すると状況は大きく変わります。西洋では古くから「黒」が哀悼の色とされており、特にヴィクトリア朝時代の影響で「喪服=黒」というイメージが世界に広まりました。その流れを受け、日本でも徐々に「葬儀の服装は黒」という習慣が根づき、やがて一般的な常識となっていったのです。
二色の融合──現代の日本の葬式
こうして日本では「白から黒へ」という大きな変化が起きましたが、完全にどちらか一方に置き換わったわけではありません。現代の葬式を見れば、参列者の服は黒、棺や花飾りは白と、両方が共存しています。黒は西洋由来の「哀悼の色」、白は古代から続く「祓いと再生の色」。二色が同時に使われることで、死を見送りながら新たな始まりを願う、日本独自の葬送文化が形づくられているのです。
第3章|西洋文化における黒の喪服──死と沈黙の象徴
中世以来の「黒=哀悼」の文化
ヨーロッパでは中世の頃から、黒は「死を悼む色」として定着していました。黒は光を吸収して沈黙のように佇む色であり、人々に「終わり」「静寂」「永遠の眠り」を思わせます。そのため王侯貴族から庶民まで、死者を見送る場では黒が選ばれてきたのです。
キリスト教における黒と白
キリスト教において、黒は「死・謙虚・地上での終焉」を示す色とされました。一方で白は「復活・永遠の命」の象徴です。例えば復活祭には白い祭服が着られ、死を越えて新たな命に至る希望を表現します。つまり、黒と白はキリスト教の世界観においても「終わりと始まり」という両極を担っていたのです。
ヴィクトリア女王が広めた「黒い喪服」
19世紀、イギリスのヴィクトリア女王が夫アルバート公を亡くしたあと、長きにわたり黒い喪服を着続けました。この姿は大きな社会的影響を与え、「喪服といえば黒」というイメージがヨーロッパ全土、さらには世界へと広がっていきます。黒は単なる色ではなく、深い悲しみと誠実な追悼の意思を示す社会的サインとなったのです。
日本への影響
明治時代に西洋文化を積極的に取り入れた日本は、この「黒い喪服」という習慣も輸入しました。やがて葬儀における装いは黒が基本となり、古来の白の葬送文化と融合し、現在の「黒と白が並ぶ葬式」の姿へとつながっていきました。
第4章|東アジア文化における白──清浄と再生の色
中国・韓国に根づく「白い葬儀」
西洋が黒を喪の色としてきたのに対し、東アジアでは「白」が葬儀の色として広く用いられてきました。中国や韓国の葬式では、喪主や遺族が白い衣を着るのが一般的で、白い布を頭や腰に巻く風習もあります。そこに込められているのは「穢れを祓い、死者を清浄な姿であの世へ送る」という祈りです。
仏教における白の意味
仏教の世界観では、白は「無垢」や「清浄」を象徴します。生死を輪廻するなかで、死は終わりではなく新たな始まり。そのため死者は白い衣をまとい、煩悩や穢れから解放された姿で旅立つと考えられました。白は「再生の色」として、葬送儀礼に欠かせない意味を持っていたのです。
日本の白装束のルーツ
日本で死者に着せられる白装束も、この東アジア文化圏の共通性の中で理解することができます。白は死の色でありながら同時に「新しい世界への装い」でもある。現世での役割を終えた人が、清らかな姿で来世へ旅立つための衣なのです。
白が示す「祓いと再生」
こうして見てみると、東アジアにおける白は単なる「哀悼の色」ではなく、もっと積極的な意味を持っています。それは死を恐れるのではなく、穢れを清め、次の世界での生を願う色。つまり白は「祓いと再生の色」として、人々の死生観に深く結びついてきたのです。
第5章|宗教的な意味──黒と白に込められた死生観
仏教──白は無垢と輪廻の出発
仏教において白は「無垢」「清浄」を表し、死は終わりではなく新たな生の始まりと考えられます。葬儀で死者に白装束を着せるのは、煩悩から解放された姿で来世へ向かうため。黒は直接的に「死」を象徴するものではなく、むしろ死を穢れとして扱うよりも、白によって清めることに重きが置かれました。
神道──白は祓いと清めの色
神道では白は「祓い清め」の象徴。神職が白衣を着るのもそのためであり、死者を白い衣で包むのも「魂を清らかにし、神々のもとへ送り出す」意味を持っています。黒は忌みの色として扱われることもありますが、中心となるのはあくまで白。死はけがれであると同時に、祓いによって次の段階へ移行できるものとされました。
キリスト教──黒は死、白は復活
キリスト教においては黒が「死」「謙虚」「地上での終焉」を象徴する一方、白は「復活」「永遠の命」を表します。復活祭で司祭が白い祭服を着るのはその象徴であり、黒い喪服は現世での死を、白い装いはその先にある新たな命を示しているのです。
共通するのは「終わりと始まり」
宗教が異なっても、黒と白に込められた意味には驚くほどの共通点があります。黒は「終わり」「死」「無」を表し、白は「始まり」「再生」「永遠」を象徴する。死者を見送る儀式でこの二色が選ばれ続けるのは、まさに人類の死生観に共通する普遍的な感覚だといえるでしょう。
第6章|黒と白の組み合わせが持つ意味──境界を示す色
黒=無、白=全部
これまで見てきたように、黒は「光がない=無」、白は「すべての光を反射する=全部」を象徴します。どちらか片方だけでも強い意味を持ちますが、葬式という場では必ず「黒と白」が並び立ちます。これは偶然ではなく、「終わりと始まり」「死と再生」を同時に示すための必然といえるのです。
生と死の境界を可視化する
葬儀とは、生きている人々が死者を見送り、死という不可視の領域を受け止めるための儀式です。その中で黒と白が並ぶことは、目に見えない境界を“色”によって可視化する行為でもあります。黒は現世の終焉を、白はその先の浄化と新たな旅立ちを表す。二色が対比することで、私たちは「ここからあちらへ」という境目を視覚的に理解できるのです。
二色で生まれる緊張感と普遍性
黒一色では沈黙と重さだけが残り、白一色では儀式の厳粛さが薄れてしまいます。しかし黒と白が並ぶと、そのコントラストが場を引き締め、同時に「誰にでもわかる普遍的なメッセージ」を放ちます。だからこそ世界の多くの文化で、この二色は葬送の場に選ばれ続けてきたのです。
第7章|実用的な理由──黒白が選ばれる必然
視覚的に最も強いコントラスト
黒と白は、人間の目に最も強い印象を与える組み合わせです。色彩の世界では「モノクローム」と呼ばれるほどシンプルでありながら、その対比は強烈な存在感を放ちます。葬儀の場において、この明快なコントラストは「非日常の空間」を演出し、場を自然と厳粛にします。
社会的にわかりやすい合図
葬式の場面では「誰が見ても分かる」ことが重要です。黒い喪服を着ていれば、遠目からでもその人が葬儀に参列していると一目で分かります。同じように、白で統一された花や幕は、場の意味を瞬時に伝えます。黒と白は単なる色ではなく、「ここは葬儀である」という社会的合図として機能しているのです。
統一感と秩序を保つ
葬儀は多くの人が集まる場ですが、参列者が自由な色を身につけてしまうと、場に乱れが生じてしまいます。黒という共通の喪服を着ることで「みな同じ思いで故人を見送っている」という一体感が生まれ、儀式全体が整います。また、白を基調とした装飾はその黒を引き立て、全体に統一感を与える役割を果たしています。
実用性と象徴性の両立
こうした視覚的・社会的・儀式的な側面から見ても、黒と白の組み合わせはきわめて合理的です。単に「伝統だから」ではなく、実用性と象徴性を兼ね備えているからこそ、葬式の色として長く選ばれ続けてきたのです。
第8章|現代の喪の色──黒白から多様化へ
日本における変化
現代日本の葬式といえば「黒い喪服と白い装飾」という基本構成は揺らいでいません。しかし近年は、そこに微妙な変化も見られるようになりました。例えば黒の中にも光沢のある素材や深いネイビーを思わせる布地を選ぶ人がいたり、アクセントとして控えめに紫やグレーを取り入れるケースも増えてきています。こうした色は「厳粛さを保ちながら個性を出す」ための工夫ともいえます。
欧米の多様化
一方、西洋ではすでに黒一色だけではなく、紫やネイビー、グレーといった色が喪服に使われることも一般的です。紫は「高貴さと精神性」を、グレーは「控えめな哀悼」を示す色として受け入れられています。国や宗教によっては白を喪服として着用する文化も根強く残り、世界全体で見れば「喪の色」は必ずしも黒に限定されていないのです。
多様化の背景にあるもの
なぜ喪の色が多様化しているのでしょうか。その背景には、社会の価値観の変化があります。かつては「喪=厳格に守るべき伝統」でしたが、現代では「故人らしさを表現する葬儀」や「柔らかく温かな見送り」が求められるようになっています。その中で黒と白は依然として基盤にありつつも、そこに別の色が加えられることで、より個別化された葬送スタイルが広がっているのです。
不変の基軸としての黒白
それでも、黒と白が葬儀の色の中心であることは変わりません。黒と白の対比が持つ「終わりと始まり」「無と全部」という普遍的な意味は、人の死生観に深く結びついているためです。多様化が進む現代においても、黒白は依然として揺るぎない基軸として、葬送文化を支え続けています。
第9章|結論──黒白は「無と全て」「終わりと始まり」を示す色
黒と白が担う普遍の象徴
葬式という場で黒と白が選ばれ続けるのは、偶然ではありません。黒は光を吸収し「無」を示し、白はすべての光を反射して「全部」を示す。物理学的な意味と宗教的な象徴、文化的な慣習が重なり、この二色は「死と再生」を同時に表す特別な色となりました。
宗教・文化を超えて共有される感覚
仏教では白が「無垢と輪廻の始まり」、神道では「祓いと清め」、キリスト教では黒が「死」、白が「復活」を象徴してきました。解釈の違いはあっても、いずれも黒と白を「終わりと始まりの色」として用いています。これは文化や宗教を超えて人類が共有してきた死生観の表れだといえるでしょう。
現代においても揺るがない意味
確かに近年は、紫やグレー、ネイビーといった色が喪の場に取り入れられることもあります。しかし、黒と白が基軸であることに変わりはありません。この二色が並ぶことで、私たちは目に見えない境界――「ここから先は死の世界、そしてその先にある再生」――を直感的に理解できるのです。
黒白が伝えるメッセージ
黒と白は単なる色ではなく、人が生と死をどう捉えてきたかを映し出す文化的記号です。無限に近い「無」と、すべてを含む「全部」。その両極が葬式という儀式で出会うとき、私たちは「人の死は終わりであり、同時に始まりでもある」という普遍的なメッセージを受け取るのではないでしょうか。
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