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第1章|英雄とは何か?なぜ特別な意味を持つ言葉なのか
「英雄」と聞くと、
私たちは自然と“特別な存在”を思い浮かべます。
歴史に名を残した人物。
物語の中心に立つ主人公。
多くの人に影響を与えた存在。
しかし、似た言葉はいくらでもあります。
「偉人」「功労者」「達人」「ヒーロー」。
それでも、ある場面では
あえて「英雄」という言葉が選ばれます。
この言葉には、
能力や成果を評価するだけでは説明できない重さ
があるからです。
第2章|英雄は漢語?意味と語源を中国古典から確認する
まず押さえておくべき重要な点があります。
「英雄」は漢語です。
しかも、
-
日本で作られた和製漢語ではなく
-
近代に英語 hero を訳すために生まれた語でもありません
中国古典ですでに成立していた言葉です。
中国では古くから、
-
英雄豪傑
-
群雄割拠
といった表現が使われてきました。
ここでの英雄とは、
-
善人
-
道徳的理想像
ではありません。
乱世の中で多くの人物が競り合い、
結果として前に立ってしまった存在
を指す言葉でした。
第3章|「英雄」の漢字の意味①|雄が表す役割と立場
「英雄」は二つの漢字から成ります。
まず「雄」。
「雄」は、生物学的にはオスを表しますが、
漢語の世界では、
-
力を持つ側
-
主導する側
-
前に立つ存在
という意味で使われてきました。
重要なのは、
「雄」が必ずしも称賛語ではないことです。
前に立つということは、
-
責任を負う
-
攻撃の対象になる
-
逃げにくくなる
という側面も含みます。
雄とは、立たされる側でもあるのです。
第4章|「英雄」の漢字の意味②|英はなぜ「優れている」を意味するのか
英雄を本質的に決定づけるのは
「英」です。
「英」は草冠を持つ字ですが、
特定の草花を指すわけではありません。
表しているのは、
-
草の中で
-
結果として目立つ部分
-
花・精華にあたる部分
です。
花は、
-
評価されたから咲いたのではなく
-
主張したから残ったのでもない
成長や環境など、
さまざまな条件が重なった結果、
そこに残ってしまった存在です。
第5章|なぜ英は「優秀・優れている」という評価語になるのか
「英」には、
なぜ「優れている」というニュアンスが生まれたのでしょうか。
それは、
残ったものが後から価値を引き受ける
という構造があるからです。
-
目立つ
-
注目される
-
代表として語られる
この順序で意味が積み重なり、
結果として「優れている」と解釈されます。
ここで、意味の順序が逆になることはありません。
優秀だから英なのではなく、
英として残ってしまったものが、
優秀だと見なされる。
第6章|英雄とは何者か?「残ってしまった存在」という定義
ここまでを踏まえると、
英雄の正体が見えてきます。
英雄とは、
-
誰かに選ばれた人ではなく
-
なろうとしてなれた人でもなく
多くの人や可能性が
ふるいにかけられた結果、
自分では降りられない位置に
残ってしまった存在です。
この「しまった」には、
-
意図していない
-
逃げられない
-
引き受けざるを得ない
という含みがあります。
だから英雄は、
軽い称賛語にならないのです。
第7章|女性は英雄になれない?「雄」と性別の誤解
「雄」という字から、
英雄は男性の言葉だと感じられることがあります。
歴史的に見れば、
英雄像が男性中心だったのは事実です。
しかしそれは、
-
英雄が男性だから
ではなく、 -
力や役割を引き受ける立場を
男性が担ってきた社会構造の結果
です。
「英」が示す
「象徴として残ってしまった存在」という構造は、
性別を問いません。
現代において、
女性が英雄と呼ばれることに
意味上の矛盾はありません。
第8章|英雄とHEROの違いとは?意味と使い分け
「英雄」は
英語の HERO の訳語として使われることがあります。
ただし両者は、
完全に同じ概念ではありません。
HERO は、
-
行動する主体
-
行為の瞬間に成立する存在
です。
一方、英雄は、
-
行為の瞬間ではなく
-
語られた後に
-
意味を引き受けた存在
英雄は行動の言葉ではなく、結果の言葉
だと言えます。
第9章|英雄を目指すのは正しいのか?意味の整理
では、
「英雄を目指す」という姿勢はどうでしょうか。
結論は明確です。
英雄になることは目指せない。
ただし、英雄と呼ばれてもおかしくない行為を
引き受けることはできる。
英雄はゴールではなく、
後から貼られるラベルです。
英雄を目的化すると、
-
評価を先取りし
-
意味を自分で決めてしまい
「英」が持つ
非主体性・結果性が失われます。
第10章|まとめ|英雄の意味を一文で言うなら
英雄とは、
-
成功者でも
-
勝者でも
-
目指す肩書きでもありません。
英雄とは、
中国古典に由来する漢語であり、
個人の意思を超えた状況と偶然の重なりの中で、
結果として意味を背負わされ、
その位置に残ってしまった存在
だからこそ英雄は、
-
自称できず
-
軽く扱えず
-
時代や社会を映す言葉であり続ける
のです。
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