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0章|導入:博多どんたくの「どんたく」って結局なに?
ゴールデンウィークのニュースで必ずと言っていいほど耳にする――博多どんたく。
福岡の街が熱気に包まれるあの大イベントを見ていると、
「どんたくって、祭りのことだよね?」
「てか“どんたく”って言葉、古語みたいな雰囲気ない?」
「漢字で書けそうだけど、表記あるの?」
…こんな疑問がふっと浮かびます。
でも実はこの「どんたく」、見た目(響き)と正体が真逆レベルで面白い言葉です。
結論から言うと――
✅ どんたく=もともとは“日曜日・休日”の意味
✅ そこから意味が変化して、博多では祭りの名前として定着
つまり「博多どんたく」は、休日の言葉が祭りに化けた、日本語でもかなり珍しい生き残り方をした語なんです。
1章|どんたくの意味:祭りじゃなく「休日」だった
現代日本で「どんたく」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、ほぼ100%「博多どんたく」でしょう。
だから私たちは自然にこう思います。
どんたく=お祭り
ところが、本来の意味は違いました。
「どんたく」は元々、
✅ 日曜日
✅ 休日
といった意味で使われていた言葉だとされます。
つまり、生活の中の「休みの日」を指す、かなり庶民的な言葉だったわけです。
ここがまず第一の驚きポイント。
そしてもっと面白いのは、その後の運命です。
普通なら「休日を意味する言葉」は、時代とともに別の語に置き換わって消えていきます。
ところが「どんたく」は――
“祭りの名前”として固定されることで生き残った。
だから今の私たちは「どんたく=祭り」と誤解(というか当然の理解)をしてしまう。
まさに言葉の逆転現象です。
2章|どんたくの語源・由来:オランダ語「Zondag(ゾンターク)」がなまった
「どんたく」が休日を意味していたとしても、まだ疑問は残ります。
「でも、どんたくって日本語っぽくない?」
「“どん”って、太鼓の音みたいじゃない?」
実はこの言葉――日本語ではありません。
語源として広く知られているのは、オランダ語の
zondag(ゾンターク)=日曜日
という単語。
江戸時代から明治にかけて、西洋の言葉が日本に流れ込みます。
その中で「zondag」が日本人の口に乗るうちに、
ゾンターク(ゾンダク)
→ どんたく
というように、発音が日本語化していったと考えられています。
ここで“言葉あるある”が出ます。
外来語って、入ってきた瞬間は外来語なんですが、
使い込むほどに音が崩れて、だんだん「日本語っぽい見た目」になります。
どんたくは、まさにその典型。
和風の顔をしてるのに、実は海外育ち――というギャップが最高なんです。
zondag の分解:zon + dag
オランダ語 zondag(ゾンターク) は、実は二つの単語が合わさってできています。
-
zon= 太陽
-
dag= 日
つまり、
zondag = 太陽の日
という意味です。
これは英語の Sunday(Sun + day) とまったく同じ構造です。
3章|どんたくは古語?漢字表記は?
この言葉、響きだけ聞くと古語っぽく感じますよね。
「どんたく」って、平安時代の言葉でも違和感がない。
でも結論はこうです。
✅ どんたくは古語ではありません。
✅ むしろ比較的新しい時代(近世〜近代)の外来語です。
じゃあ漢字表記はあるのかというと、これも結論はシンプル。
✅ 基本的に漢字では書きません。
「勿体」みたいに漢字から意味を分解するタイプの言葉ではなく、
外来語の“音”だけが先に存在している言葉なので、
漢字表記はあったとしても当て字扱いになります。
つまり「どんたく=何かの漢字の意味」ではなく、
「どんたく=音の言葉」なんです。
4章|博多どんたくとは?いつ・どこで・どんな行事?
「どんたく」が休日の言葉だったとして、どうして博多の祭りの名前になったのでしょうか。
博多どんたくは正式には、
博多どんたく港まつり
として知られ、開催は毎年
✅ 5月3日・5月4日
✅ 福岡市(博多エリア〜天神周辺など市内中心部)
で行われる、福岡を代表する大型イベントです。
内容はざっくり言えば、
-
市内でのパレード
-
舞台での演舞・パフォーマンス
-
町を練り歩く祝福行事
といった「街全体で祝う祭り」。
そしてこの博多どんたくの核になっているのが、
**博多松囃子(はかたまつばやし)**という伝統行事です。
松囃子は、もともと「新年を祝う」意味を持つ古い民俗行事で、
福を呼び込む存在(福神、恵比須、大黒など)が市中を回り、
街を祝って歩くような形で伝承されてきました。
ここがポイントで、博多どんたくって単なるイベントではなく、
街を祝う“祝祭の系譜”をちゃんと引いているんです。
5章|なぜ「どんたく」と呼ばれるようになったのか
現在の博多どんたくの起源である「博多松囃子」は、もともとこの名前で長く親しまれてきた伝統行事でした。
しかし明治時代に入ると、この松囃子は「どんたく」と呼ばれるようになります。
「どんたく」はオランダ語zondagに由来し、休日を意味する言葉として、当時の日本で広く使われていました。
休日を意味する言葉として一般化していた「どんたく」が、祝祭行事である松囃子の呼称として用いられるようになり、そのまま名称として定着したと考えられています。
つまり、「どんたく」という名称は、
近代に広まった外来語と、古くから続く博多の祝祭文化が結びつくことで生まれたものなのです。
6章|博多どんたく以外の「どんたく」もあった?――江戸から明治にかけての“休日の言葉”
「どんたく」と聞くと、現代では博多どんたく以外を思い浮かべることはほとんどありません。
しかし本来、「どんたく」は祭りの名前ではなく、休日そのものを意味する言葉でした。
この言葉が日本に入ってきたのは、江戸時代の終わりごろ。
長崎の出島を通じてオランダ語が伝わる中で、「zondag(ゾンターク)」――日曜日を意味する言葉が、日本語化して「どんたく」と呼ばれるようになったとされています。
そして明治時代に入ると、西洋の暦や生活習慣が広まり、「日曜日=休み」という概念とともに、「どんたく」は休日を意味する言葉として各地で使われるようになりました。
その名残を示す例のひとつが、
一六どんたく(いちろくどんたく)
という表現です。
これは、「一六日(いちろくび)」と呼ばれる、一定の周期で訪れる市日や休みの日と結びついた言葉です。
もともと江戸時代の商いの世界では、
-
1日
-
6日
-
11日
-
16日
-
21日
-
26日
といった周期で市が開かれ、逆に商いを休む日や、地域の人々が集まる日として機能していました。
こうした周期的な区切りは、人々の生活のリズムそのものでもあったのです。
やがて江戸末期から明治にかけて、「どんたく」という言葉が休日を意味する語として広まると、
これらの定期的な休みの日を指して、「一六どんたく」と呼ぶ用法も生まれたとされています。
つまり、「どんたく」は博多の祭りだけの特別な言葉ではなく、
かつては人々の生活の中で、
「今日はどんたくだ」
――そう言えば、それだけで「今日は休みの日だ」と通じる、
ごく身近な言葉だったのです。
しかし時代が進み、休日を意味する言葉としての「どんたく」は次第に使われなくなっていきました。
その一方で、博多の祝祭行事と結びついた「博多どんたく」だけは、祭りの名称として定着し、現代まで受け継がれています。
つまり――
江戸時代の市のリズムの中にあった「休みの日」という概念、
明治時代に広まった「どんたく」という外来語、
そして博多に根付いていた祝祭文化。
それらが重なり合った結果、
「どんたく」という言葉は、単なる休日の意味を超えて、
ひとつの文化の名前として生き残ることになったのです。
✅コラム|半ドンって“半分どんたく”だって知ってた?
ここで、どんたくの正体をさらに裏取りできる面白ネタが登場します。
それが――半ドン。
土曜日の午前だけ授業、午後は休み。
昭和〜平成のはじめに多くの人が経験したあの制度ですね。
この「半ドン」、ただの略語っぽいですが、実は
✅ 半分どんたく(半日休日)
が縮んだものだという説があります。
-
どんたく=休日
-
半ドン=半分の休日
意味が美しすぎるくらい自然。
そしてこの話が面白いのは、「半ドン」が全国で通じたことです。
もし“どんたく”が博多のローカル語だけだったら、半ドンは広がりません。
つまり半ドンは、
✅ 「どんたく=休日」という意味が広く存在した
ことを、逆方向から証明しているような存在なんです。
言葉って、制度と一緒に生きているので、
土曜休みが当たり前になった現在では「半ドン」も消えました。
でも、こうして痕跡が残る。
これが言葉の歴史の一番面白いところです。
7章|まとめ:どんたく=“日曜日”が祭りっぽくなった言葉だった
最後にまとめです。
「どんたく」は、
博多の祭りの名前っぽい顔をしているけれど、
✅ 本来は 日曜日・休日 の意味
✅ 語源はオランダ語 zondag(日曜日)
✅ それが日本語化して「どんたく」になった
✅ 博多では祝祭行事と結びつき、「博多どんたく」として定着
✅ さらに「半ドン」などの言葉にも痕跡が残った
――という、とても面白い経歴を持つ言葉でした。
祭りって、ただ賑やかなだけじゃなく、
“街の歴史と言葉”まで背負っている。
博多どんたくの「どんたく」は、
そんな文化の厚みをこっそり抱えた言葉なのかもしれません。
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