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0章|軽いのにここまで強い!段ボールの意外な実力
紙なのに、人が座っても潰れない理由
引っ越しや荷物の整理で、段ボール箱の上にちょっと腰かけたことはありませんか?
「紙でできているのに、なんでこんなに頑丈なんだろう」と思った人も多いはずです。
段ボールはただの板状の紙ではなく、中に波形(フルート)を持つ立体構造。この形が、少ない材料で大きな荷重を分散させる秘密です。
実は構造材として優秀な素材
段ボールの強度を数字で見てみると、意外な事実がわかります。
一般的なA式Aフルートの箱なら、新品・乾燥状態で縦方向に300〜500kgの圧縮荷重に耐えることが可能。
もちろん、これは“潰れる直前”の話で、安全に使える重量はもっと低くなりますが、**比強度(重さあたりの強さ)**で見ると木材や一部のプラスチックを上回ることもあります。
本記事でわかること
このブログでは、段ボールの強度を「理論」と「実用」の両面から解説します。
安全に使える耐荷重の目安、強度が決まる仕組み、入れ方や積み方での違い、さらには木材や鉄など他素材との比較まで。
読み終わるころには、段ボールを“ただの紙”とは思えなくなるはずです。
第1章|普通の段ボール箱は何キロまで耐えられる?
理論値と実用値はまったく違う
新品のしっかりしたA式Aフルート箱なら、縦方向の圧縮試験(BCT)で300〜500kg程度まで耐えられることがあります。
これは「箱の上に何段も積み重ねても、潰れる直前までは持つ」という数字です。
ただし、これはあくまで実験室レベルの理論値。現場で安全に使える重量はずっと低くなります。
安全に入れられるのは20〜30kgが目安
湿度・時間・積み方の条件を考慮すると、20〜30kg程度が安全圏です。
たとえば引っ越しの段ボールに本をぎっしり詰めると、この重量を軽く超えてしまい、底が抜けたり持ち手部分が破れたりする原因になります。
長期保管や梅雨時期の倉庫では、さらに安全値を下げるのが無難です。
ガムテープより紙の方が先に弱る
「ガムテープが切れそうで怖い」という声もありますが、実は多くの場合、ガムテープより段ボールの紙自体が先に破れます。
布テープや幅広のOPPテープは、引っ張り強度で20〜40kg以上ありますが、湿気を吸った段ボールは紙繊維がもろくなり、糊付け部分から破れやすくなります。
つまり、強度を決めるのはテープではなく箱本体のコンディションです。
現場での実感値
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新品+乾燥状態:30kg近く入れても大丈夫
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湿気あり+長期保管:15〜20kgでも潰れることあり
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一時的な移動+しっかりテープ補強:40kg以上いけることも(ただしリスク高)
第2章|段ボール強度の仕組み──3ステップで決まる
1. 板の強さ(ECT)が出発点
段ボールの基礎的な強さは、板を端から押しつぶす「エッジ・クラッシュ・テスト(ECT)」で測ります。
これはライナー紙(外側)と中芯紙(波形の部分)の質、そして波形の形や高さで決まります。
簡単に言えば、紙の質が良く、波が高いほど強い板になります。
2. 箱にしたときの強さ(BCT)
平らな板を箱にすると、四隅が「柱」になり、耐圧性が一気に上がります。
この箱の縦方向の圧縮強さは「ボックス・クラッシュ・テスト(BCT)」で測定します。
有名なMcKee式では、次のような関係があります。
箱の強さ ≒ 板の強さ × 箱のサイズ要素 × 厚みの平方根
数式で書くと難しそうですが、要は「板が強いほど、そして箱が大きく厚いほど強い」ということです。
3. 現場では減点される
実際の使用環境では、この理論値からどんどん減点されます。
湿気が多いと紙が柔らかくなり、長期保管で紙繊維が疲れ、積み方が悪ければ柱構造が壊れます。
梅雨の倉庫なら、理論値の半分以下になることも珍しくありません。
わかりやすく言うと
段ボールの強度は、
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紙の質で基礎点
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箱の形で加点
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湿気や積み方で減点
──という三段階で決まります。
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第3章|入れ方でここまで変わる!強度を活かす詰め方のコツ
荷重は“均等”が鉄則
段ボール箱は、底面全体で荷物を支える構造です。
重さが均等に広がれば強くなりますが、一箇所に集中すると、その部分のフルート(波形)が潰れ、そこから全体が弱くなります。
例えばペットボトルを整列させれば強さを保てますが、金属部品を無造作に入れると、突起部分から底が抜けることがあります。
隙間は敵!中で動かさない
輸送中に中身が動くと、衝撃で箱が歪み、角や接着部に負担がかかります。
緩衝材や新聞紙で隙間を埋め、荷物を一体化させることで強度が上がります。
特に重い荷物ほど、動かないように固定することが重要です。
フルートの方向を意識する
段ボールの波は縦向きで最大強度を発揮します。
箱を横倒しに使うと、波が寝た状態になり、縦方向の圧縮に弱くなります。
積載時は、波が立っている方向で荷重を受けるのが理想です。
中身の種類による注意点
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均一な荷物(缶詰、ペットボトルなど) → 比較的強度を活かせる
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不揃いな荷物(工具、部品など) → 緩衝材必須
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柔らかい荷物(衣類、布団など) → 詰め込みすぎで箱が膨らむと、角の柱が機能しなくなる
詰め方で1.5倍変わる強度
同じ箱でも、荷物を均等に詰め、隙間を埋め、フルートを立てて使えば、耐荷重は理論値に近づきます。
逆に雑な詰め方をすると、安全重量は一気に半分程度まで落ちます。
第4章|シート vs 箱──どちらが丈夫?
面で受けるならシートが有利
段ボールを1枚のシート状にした場合、全体で力を受け止める「面圧」には強くなります。
机の上に敷いて荷物を置くような使い方なら、ある程度の重さでもたわまず耐えることが可能です。
ただし、支えがない状態では自立性がなく、端や中央一点に力がかかると、フルートが潰れて急に弱くなります。
縦方向の力は箱が圧倒的に強い
箱にすると四隅が「柱」となり、縦方向の圧縮(上からの荷重)にとても強くなります。
これは構造力学でいう柱効果で、同じ素材でも立体構造にすることで数倍の耐荷重を実現できます。
倉庫で何段も積み重ねられるのは、この柱構造のおかげです。
什器や家具での選び方
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シート重ね:棚板や天板など、面で荷重を受けるパーツに最適。
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箱積み:展示台や陳列棚など、立体的に荷重を受ける構造に有効。
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両方を組み合わせれば、軽くて持ち運びやすく、しかも丈夫な什器を作れます。
実例:イベント用什器
イベント会場では、箱を縦に積んでベースを作り、その上にシートを重ねて天板にする構造がよく使われます。
この方法なら、耐荷重と軽量性を両立でき、撤収時はリサイクルもしやすいのがメリットです。
第5章|重ねて強くする!ダブルフルート・多層構造の威力
ダブルフルート(Wフルート)の構造
Wフルートは、例えばAフルートとBフルートを重ねた三層構造の段ボールです。
厚みは約8mm前後になり、Aフルートの緩衝性とBフルートの耐圧性を両立します。
大型家電や重量物輸送に使われるほか、防災ベッドや什器の骨組みにも適しています。
トリプルウォール(三層段ボール)の圧倒的剛性
さらに強度が必要な場合は、フルートを3層にしたトリプルウォールがあります。
厚みは1cm以上となり、木箱の代わりになるほどの剛性を持ちます。
工業機械、バイク部品、長期輸送用パレットケースなどに採用されます。
ライナー紙や貼り合わせで強度アップ
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ライナーの坪量を増やす(例:175g/m² → 300g/m²)と耐水性・耐久性が向上
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板を貼り合わせることで局所的な強度を大幅アップ
これらは什器やベッド製作でもよく使われる手法で、安全荷重を倍近くに引き上げられる場合があります。
防災・イベントでの応用例
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段ボールベッド:100kg以上の荷重に耐える構造が可能
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展示什器:多層構造で安定感を確保しつつ軽量化
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仮設パネル:多層貼りで反りを防ぎ、大きな面積でも自立可能
第6章|他素材と比べた“軽さあたりの強さ”──段ボールの立ち位置
比強度ってなんだっけ?
同じ“強さ”でも、材料が重たければ運ぶ・組む・積むでコストが跳ね上がります。だから現場で効いてくるのは、比強度(=強さ÷重さ)。段ボールはここで評価がグッと上がります。紙そのものは弱く見えても、フルートという中空構造で荷重を面・柱に逃がせるので、軽いのに持つを実現できます。
木材と比べる:同じ“セル構造”仲間
木材も細胞壁の集合という“セル構造”。絶対強度は木材の勝ちですが、短期間の縦圧・面圧に限れば、段ボールは軽さの分だけ取り回しと設計自由度で有利になります。什器や仮設の棚板で「木より軽く、必要十分の剛性」を出せるのはこのため。
プラスチックと比べる:成形自由度 vs. 構造設計自由度
樹脂は耐水・耐久に強い一方、厚みを増すとすぐ重く高価に。段ボールは重ね貼り・中空設計で欲しい方向だけ剛性を足しやすい。短期イベントや季節什器なら、段ボール=軽い・安い・デザイン可で総合点が高いです。長期常設・屋外は樹脂が安全。
金属と比べる:絶対強度は圧倒的、でも運用が重い
鉄やアルミは言わずもがな強い。が、重い・加工が手間・廃棄が面倒。一方、段ボールは必要強度を“構造”で稼ぎ、不要になれば畳んでリサイクル。つまり「絶対強度が要るなら金属、運用の軽さが要るなら段ボール」という棲み分けです。
段ボールの“得意”と“不得意”
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得意:縦方向の圧縮(柱効果)、面で受ける圧力(天板・棚板)、広い面の座屈を“波”で抑えること
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不得意:湿気(強度が落ちる)、突き刺し(点荷重)、長期荷重のクリープ
→ 湿気対策(耐水ライナー・ラミ・ワックス)、突き刺し対策(コーナー材・当て板)、クリープ対策(設計余裕・支え増し)で“使える材料”に変わります。
使い分けの指針(実務感)
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短期〜中期/屋内/軽量〜中量物/運搬・撤収多め → 段ボールが最適解
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長期常設/屋外/高湿・結露/重荷重一点集中 → 木・樹脂・金属の出番
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混合案:ベースは箱積み、天板は多層シート、角だけ木で補強──**軽さと強さの“いいとこ取り”**ができます
第7章|まとめ:安全に使うための耐荷重の目安と工夫
結論をもう一度──“理論は強い、現場はシビア”
段ボールは軽いのに強い。それは波形(フルート)+箱の柱構造が、荷重をうまく逃がすから。
ただし現場では、湿気・時間・積み方・中身の動きで強度は着実に削られます。
だから私たちは、理論値(BCT)をそのまま信じず、安全側に倒して使うのが正解です。
安全な“目安”──まずはここから
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一般的なA式×Aフルート:安全に入れられるのは 20〜30kg が目安
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Wフルート(厚物):設計次第で 30〜50kg も現実的(湿気と詰め方次第)
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長期保管・梅雨〜夏:同じ箱でも目安を2〜3割下げると安心
「理論値は300〜500kg(縦圧)あるのに、なんで中身は30kg?」というギャップは、
“長時間+湿気+積み方”の減点が効いているからです。
現場で効く3つの基本
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均等に載せる
底面に重さを散らす。突起物には当て板。隙間は緩衝材で埋めて動かさない。 -
フルートを立てる
波が縦に向く姿勢で使う。横倒しにすると柱効果が死ぬ。 -
湿気を避ける
床直置きNG(パレットやダンボールパレットに載せる)。倉庫は通風・除湿。
この3つを守るだけで、同じ箱でも体感で1.3〜1.5倍“持つ”ようになります。
積み重ねのコツ──“強さ”より“崩れない設計”
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**タワースタック(縦ライン揃え)**が基本。四隅の柱が一直線になり、縦圧に強い。
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レンガ積みは横ズレに強いが、柱が分断され耐圧は落ちる。輸送振動が強いときだけ採用。
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ストレッチフィルムやPPバンドで横方向を拘束すると、急な“座屈崩れ”を防げる。
すぐ効く“強化ワザ”
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底の二重貼り:底抜けが不安なら、同材シートを底面内側に1枚追加。
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角補強:四隅の内側にコーナー材(紙でもOK)。柱の腰が抜けにくくなる。
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帯状当て板:金具や瓶底などの点荷重に帯板を噛ませて面圧化。
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テープは幅広+十字貼り:剥離より“紙破れ”を遅らせる。
いずれも重量・コストをほとんど増やさず効く“現場の小技”です。
迷ったらこの順で決める
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中身の最大重量と保管期間(長期なら目安を下げる)
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環境(湿度・床直置きの有無)
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輸送の有無と振動(レンガ積み or タワー、固定の強さ)
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箱仕様(Aフルート→Wフルート/ライナー増/底補強の要否)
この順で判断すると、過不足ない仕様に収まります。
最後に──“軽さで勝つ”素材運用を
段ボールは、絶対強度では木や金属に敵わない一方、比強度と運用の軽さで抜群に戦えます。
「紙だから弱い」ではなく、構造と環境で“使える強さ”に仕立てるのがコツ。
今日からは、均等・固定・除湿の3点セットを合言葉に、賢く強く使っていきましょう。
\株式会社新潟フレキソはダンボール用印版・フレキソ製版会社です。/
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