CPSIとAPPEとは?違いを徹底比較|PostScriptからPDFワークフローへ進化する印刷RIP

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第0章|導入──CPSIからAPPEへ。PostScriptとPDFが変えた印刷ワークフロー


印刷ワークフローの“翻訳者”たち

印刷の世界には、デザイナーや印刷機だけでなく、その間をつなぐ“翻訳者”が存在します。
それが CPSI(Configurable PostScript Interpreter)APPE(Adobe PDF Print Engine) です。

一見、聞き慣れない言葉ですが、DTPや印刷ワークフローを学ぶうえで「CPSIとは何か?」「APPEとは何か?」を理解することは欠かせません。なぜなら、PostScriptからPDFへの移行=印刷業界の大転換 を象徴しているからです。


PostScriptとCPSIの黄金時代

1980〜90年代、印刷の標準は「PostScript」でした。
IllustratorやPageMakerから出力されるPostScriptデータを、CPSIがRIPでレンダリングし、印刷機へ渡す。これが当時の王道ワークフロー。

つまり、
PostScript(設計図) → CPSI(翻訳者) → 印刷機(職人)
という流れで印刷が成立していたわけです。


PDFとAPPEの時代へ

ところが2000年代に入ると、入稿データの主流は「PostScript」から「PDF」へ。
その理由は、PostScriptの限界(透明処理・互換性問題) をPDFが解決できたからです。

この変化に合わせて登場したのが APPE(Adobe PDF Print Engine)
PDFを直接解釈・レンダリングできる新しいRIPエンジンであり、今日の印刷業界を支える標準的存在となりました。


なぜ知るべきか?

この記事では、

  • CPSIとは何か?

  • APPEとは何か?

  • CPSIとAPPEの違い

  • PostScriptワークフローからPDFワークフローへの進化

を順を追ってわかりやすく解説します。

印刷の裏側で活躍するこの2つのエンジンを知れば、DTPやPDF印刷の仕組みがもっとクリアになりますよ。


第1章|CPSIとは?PostScript時代を支えた印刷用RIPエンジン


CPSIとは?

CPSI(Configurable PostScript Interpreter) とは、Adobeが開発した PostScript専用のRIP(Raster Image Processor)エンジン のこと。
「RIPって何?」という方のために説明すると、RIPは ベクターデータやコードを印刷機が理解できる“点の画像”に変換する翻訳装置 です。

CPSIは、その翻訳装置の“頭脳”として、1980年代後半から2000年代前半にかけて印刷現場で大活躍しました。


PostScriptとCPSIの黄金コンビ

当時の印刷ワークフローはこうでした:

  1. IllustratorやPageMakerからPostScriptファイルを出力

  2. RIPに組み込まれたCPSIがPostScriptを解釈・レンダリング

  3. 印刷機が出力可能なラスター画像に変換

  4. 版やドラムに焼き付け → 印刷

👉 つまり PostScript(設計図)→CPSI(翻訳者)→印刷機(職人) という流れで印刷が進んでいたのです。


CPSIが果たした役割

  • PostScriptコードを正確に解釈

  • フォントやグラフィックを網点に変換

  • RGBをCMYKに変換し、印刷用データを生成

  • RIPに標準搭載され、世界中のプリンタ・印刷機で使用

これがなければ、DTPで作ったデータはただの「設計図」にすぎず、紙に刷り上がることはできませんでした。


まさに「翻訳者」

CPSIは「デザイナーが作ったPostScriptの設計図」を、印刷現場にとって意味のある「実際の刷版データ」に翻訳する役割を果たしていました。
言い換えるなら、CPSIがいたからこそ、DTP革命は成立した と言っても過言ではありません。


第2章|PostScriptワークフローの流れと実例


PostScriptワークフローとは?

PostScriptワークフロー とは、デザインデータを PostScript形式 に変換し、RIPで処理してから印刷する仕組みのこと。
1980〜90年代の印刷業界では、この方式が標準でした。
ここでは、実際の流れを「Illustratorで作ったポスター」を例に追ってみましょう。


Step1|Illustratorでデザイン

まずはデザイナーが Adobe Illustrator でポスターを作成。
文字・図形・ロゴ・写真を組み合わせてレイアウトします。
このデータはベクター(線や形)と画像の混在データです。

👉 ここで書き出すのが PostScriptファイル
PostScriptは「ここに文字を置け」「この画像を100mmで配置せよ」といった 設計図コード のようなものです。


Step2|RIPでCPSIがレンダリング

次に登場するのが RIP(Raster Image Processor)
RIPの中核に組み込まれているのが CPSI(Configurable PostScript Interpreter) です。

CPSIはPostScriptデータを解釈し、印刷機が理解できる ラスター画像(点の集合=網点データ) に変換します。

ここで行われること:

  • ベクターデータ → 点に変換(ラスター化)

  • RGB画像 → CMYKに変換

  • 透明効果やグラデーション → 網点に分解

  • 解像度を350dpi相当に整える

👉 つまり、CPSIが「設計図」を「実際の印刷用データ」に翻訳しているのです。


Step3|印刷機へ出力

CPSIが作ったラスター画像データをもとに、印刷機は版やドラムを制御。
インクを正確に紙へ転写し、ポスターが刷り上がります。

結果:
Illustrator → PostScript → CPSI(RIPレンダリング) → 印刷
という流れで、あなたのデザインは現実の紙の上に形を持つのです。


わかりやすい比喩

  • PostScript=建築図面(設計図)

  • CPSI(RIPエンジン)=翻訳者・施工管理者

  • 印刷機=大工さん(職人)

👉 設計図だけでは家は建たない。翻訳者が図面を解釈して、職人に指示を出して初めて完成する──それが当時の印刷フローでした。


第3章|CPSIの限界とPDF時代の到来


CPSIの強みと限界

CPSI(Configurable PostScript Interpreter) は、長年にわたり PostScriptワークフロー を支えてきました。
しかし時代が進むにつれて、デザインデータの表現力が増し、CPSIだけでは処理しきれないケースが目立つようになりました。

代表的な限界は以下のとおりです:

  • 透明効果に弱い:IllustratorやInDesignで使われる「ドロップシャドウ」「半透明オブジェクト」を正しく処理できないことが多い

  • レイヤー処理が苦手:複雑なレイヤー構造を保持できず、出力時に欠落や変形が発生

  • 互換性トラブル:環境やフォントの違いによって文字化けや抜け落ちが発生

  • ファイルサイズの肥大化:大きな画像や多層データを扱うと処理が極端に遅くなる

👉 結果、印刷所では「出力トラブル」や「刷り直し」が頻発し、PostScriptだけに頼るワークフローは限界を迎えていました。


PDFの登場と普及

そこで登場したのが PDF(Portable Document Format)
1990年代にAdobeが開発したこのフォーマットは、2000年代に入ると印刷業界でも急速に普及します。

PDFが選ばれた理由:

  • 透明効果やレイヤーを保持できる

  • フォント埋め込みにより文字化けが減る

  • 環境依存が少なく、互換性が高い

  • PDF/X規格 により印刷用データとしての安定性が保証される

👉 つまりPDFは「PostScriptの弱点を克服した次世代の印刷フォーマット」だったのです。


ワークフローの変化

PostScript+CPSIの時代から、印刷の流れはこう変わりました:

  • 旧ワークフロー
    Illustrator → PostScript → CPSI(RIP) → 印刷

  • 新ワークフロー
    Illustrator / InDesign → PDF/X → APPE(Adobe PDF Print Engine) → 印刷

これにより、印刷物の品質と再現性は大幅に安定しました。


転換点としてのPDF

CPSIが「PostScript時代の翻訳者」だったとすれば、PDFは「より表現力豊かな言語」でした。
そしてこのPDFを完璧に扱うために、次の章で解説する APPE が登場するのです。


第4章|APPEとは?Adobe PDF Print Engineの正体


APPEとは?

APPE(Adobe PDF Print Engine) とは、Adobeが2006年に発表した PDFネイティブ対応のRIPエンジン です。
従来の CPSI(Configurable PostScript Interpreter) がPostScriptを解釈していたのに対し、APPEは PDFを直接レンダリングできる のが最大の特徴です。

👉 一言でいえば、「PDF時代の翻訳者」
印刷ワークフローの標準を大きく塗り替えた存在です。


なぜAPPEが必要だったのか?

前章で述べたように、CPSIは 透明効果やレイヤー処理 に弱く、複雑なデザインを正しく印刷するのが難しいという限界がありました。
これを解決するために、Adobeは PostScript依存から脱却し、PDFをそのまま処理できる新しいRIPエンジン=APPE を開発しました。


APPEの強み

  • PDFを直接レンダリング:中間でPostScriptに変換しないため精度が高い

  • 透明効果・グラデーション・レイヤーを正確に再現

  • PDF/X規格との完全互換性 → 印刷トラブルを大幅に減少

  • カラーマネジメントに強い → RGBからCMYK変換も安定

  • 高速処理:大容量データも効率的に処理

👉 これにより「データはPDFで入稿してください」という文化が世界的に定着しました。


ワークフローの変化

APPEの登場により、印刷の流れはこうなりました:

  • 旧ワークフロー(PostScript時代)
    Illustrator → PostScript → CPSI(RIP) → 印刷

  • 新ワークフロー(PDF時代)
    Illustrator / InDesign → PDF/X → APPE(RIP) → 印刷

この違いこそが、印刷業界における CPSIからAPPEへの世代交代 を象徴しています。


まとめ:APPEは印刷の新しい標準

APPEの本質をひとことで表すなら、
👉 「PDFを直接解釈し、印刷の精度と安定性を飛躍的に高めたAdobe純正のRIPエンジン」
ということになります。

印刷現場における CPSIからAPPEへの移行 は、単なる技術進化ではなく、業界全体のワークフローを変えた革命だったのです。


第5章|APPEの強みとCPSIとの違い


CPSIとAPPEの立ち位置

まずおさらいすると:

  • CPSI(Configurable PostScript Interpreter):PostScriptを解釈する旧世代のRIPエンジン

  • APPE(Adobe PDF Print Engine):PDFを直接解釈できる新世代のRIPエンジン

どちらも「RIPの心臓部」ですが、処理する言語と能力に大きな差があります。


比較表|CPSI vs APPE

項目 CPSI APPE
対応フォーマット PostScriptのみ PDF/Xを直接処理
登場時期 1980年代後半 2006年
強み PostScript互換性/DTP黎明期を支えた PDFネイティブ/透明効果やレイヤー処理に強い
弱み 透明処理に弱い/互換性問題が多発 特になし(ただし古い機材には未対応の場合あり)
主な用途 過去の印刷機・古いRIP 現代の印刷機・標準RIP
ワークフロー Illustrator → PostScript → CPSI → 印刷 Illustrator / InDesign → PDF/X → APPE → 印刷

APPEの強み

  1. PDFを直接レンダリング
    中間でPostScript変換を挟まないので、精度が高くトラブルが少ない。

  2. 透明効果・グラデーションに完全対応
    ドロップシャドウや半透明オブジェクトも正確に再現。

  3. PDF/X準拠で安定
    国際規格に対応し、印刷所ごとのトラブルを回避。

  4. カラーマネジメントに強い
    RGBからCMYKへの変換もスムーズ。

  5. 高速処理
    大容量ファイルも効率よく処理できるため、現場の生産性が向上。


結論:CPSIからAPPEへの移行は必然

かつては 「CPSI=PostScript時代の翻訳者」 が印刷を支えていました。
しかしデザインデータの複雑化に伴い、「APPE=PDF時代の翻訳者」 が必要となり、今ではAPPEが標準。

👉 現代の印刷現場では、CPSIではなく APPEを搭載したRIPが主流 になっています。


第6章|まとめ──CPSIからAPPEへ、印刷ワークフローの進化


CPSIが支えたPostScript時代

1980〜90年代、印刷の世界を動かしていたのは CPSI(Configurable PostScript Interpreter)
PostScriptファイルを解釈し、RIPでレンダリングして印刷機に渡す──この仕組みが DTP革命を現実にした立役者 でした。

👉 PostScriptとは? を語るとき、必ずそこにCPSIがセットで登場するのはそのためです。


PDFとAPPEの時代へ

しかし、デザインデータは進化します。
透明効果や複雑なレイヤーを正しく扱えないCPSIの限界を超えるために、印刷業界は PDFワークフロー に移行しました。

そして2006年、Adobeが開発した APPE(Adobe PDF Print Engine) が登場。
PDFを直接処理できるRIPエンジンとして、印刷現場の標準を一気に塗り替えました。


印刷ワークフローの大転換

  • 旧世代ワークフロー
    Illustrator → PostScript → CPSI → 印刷

  • 現代ワークフロー
    Illustrator / InDesign → PDF/X → APPE → 印刷

この流れの変化こそが、印刷の歴史を大きく動かした瞬間です。


これからの印刷を支えるもの

今の印刷現場で「CPSI」を使う機会はほぼなくなり、代わって APPEが標準RIP になっています。
データの互換性、透明効果の再現、カラーマネジメント──すべてにおいてAPPEがCPSIを凌駕しています。

👉 CPSIからAPPEへの進化は必然
👉 そしてこれからも、印刷ワークフローの中心は PDF+APPE であり続けるでしょう。


✅ 本記事でわかったこと

  • CPSIとは? PostScriptを解釈する旧世代RIPエンジン

  • APPEとは? PDFを直接レンダリングする現代のRIPエンジン

  • CPSIとAPPEの違い:PostScript専用か、PDFネイティブか

  • 印刷ワークフローの進化:PostScript → PDF、CPSI → APPE


📌 結論:
「CPSIは過去の標準、APPEは現在と未来の標準」
これを押さえておけば、印刷ワークフローの歴史も今の仕組みもスッキリ理解できます。


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