青と緑の境界線──「青信号」はなぜ青くないのか?色の名前が世界を変える話

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第1章|なぜ日本人は緑を「青」と呼ぶのか?──信号機とリンゴの不思議


青信号は“緑色”なのに、なぜ「青」と呼ぶのか

「青信号は、どう見ても緑だ」。
多くの日本人が一度は感じたこの違和感には、実は長い言語の歴史が関わっています。
信号の色は国際的には「緑(green)」と定められていますが、日本では昔から「青信号」と呼ばれ続けています。しかもこれは、単なる言い間違いではなく、日本語の色彩感覚そのものに由来する呼び名なのです。

「青いリンゴ」と「青葉」──緑を青と呼ぶ日本語の世界

私たちの身のまわりには、信号以外にも「緑なのに青と呼ばれる」ものが多数存在します。
たとえば熟していない果物を「青いリンゴ」と言い、春に芽吹く若葉を「青葉」と呼ぶのもごく自然な表現です。これらはどれも実際には緑色ですが、日本語の中では「青」という言葉の中に緑が含まれているのです。

これは現代に始まったことではなく、古語や和歌の世界でも広く見られます。平安時代の文学では、草木の色を指して「青」と記述する例が多数残っています。当時の日本語には、今のように緑を独立した色名として扱う習慣がなかったのです。

「緑」という言葉は“あとからできた色名”だった

実は「緑」という言葉そのものも、もともとは色ではなく「植物の芽吹き」や「生命の兆し」を表す語でした。
色の名前としての「緑」が定着したのは中世以降で、それ以前は青の一部として扱われていたのです。そのため、緑と青の区別が厳密についたのはごく近代になってからであり、日本語の感覚では今なお曖昧なまま残っています。

それでも「青信号」が定着した理由とは?

現代の日本においても、「青信号」という言い方は広く使われ続けています。
その理由には、文化的な言語感覚に加え、実際の信号機の色にも一因があります。初期の信号機は、現在よりやや青みがかった緑色だったとされ、肉眼で見ても「青っぽい」と感じる色味だったのです。

また、交通ルールが海外から導入される際に、「green signal」を訳す言葉として当時の日本人に馴染みのある“青”が選ばれたという経緯もあります。「緑」よりも「青」のほうが一般的で通じやすかったからです。

このように、「青信号」という言葉は、単なる誤訳や習慣ではなく、日本語の色彩感覚と言語史が育んだ表現なのです。


第2章|世界の色彩感覚──“Green”と“Blue”の分かれ目


英語では当たり前?「Green」と「Blue」は別の色

日本語では長らく曖昧だった“青”と“緑”の境界線も、英語圏では明確に区別されています。
「blue」は青空や海のような色、「green」は草や葉の色。英語を母語とする人々にとって、この2色はまったく別のカテゴリであり、「青信号」という表現は奇妙に聞こえるかもしれません。

実際、英語だけでなく多くのヨーロッパ言語では、青と緑は初めから異なる色として語られてきました。フランス語ではbleuとvert、ドイツ語ではblauとgrün。いずれも「視覚的な違い」に対応する形で、はっきりと分かれています。

しかし世界には「区別しない言語」もある

一方で、すべての言語がこの区別を持っているわけではありません。
たとえば、ベトナム語のように「青」と「緑」をひとつの語(xanh)で表す言語も存在します。ベトナム語では「空のxanh」か「葉のxanh」かを説明することで意味を補いますが、単語そのものは共通です。

ロシア語では逆に、青の中にも「淡い青(голубой)」と「濃い青(синий)」というように、青色をさらに2つに分けて表現します。日本語が青と緑をひとまとめにしていたのとは対照的に、青を細かく分類しているのです。

こうした例を見れば、色彩の境界線とは「文化によって決められているもの」であることが分かります。色そのものは同じ波長でも、それをどう認識し、どう分類するかは言語ごとに異なるのです。

色は「目」で見るか、「言葉」で見るか

言語学では、こうした現象を「サピア=ウォーフ仮説(言語相対性仮説)」で説明します。
簡単に言えば、“人は使う言語によって世界の見え方が変わる”という考え方です。色に関しても、言語が色のカテゴリーを作り出し、それがそのまま「色の見え方」に影響するとされます。

つまり、「青と緑は違う色だ」と教わることで、私たちはその違いを敏感に感じ取るようになるのです。逆に言えば、言葉で区別しなければ、それは同じ色として認識されてしまう。色の違いは、網膜だけでなく、言語によっても決まるというわけです。


第3章|青と緑のあいだにある色──「青緑」とは何色なのか


青緑は“あいまい”なのか、“確かな色”なのか?

「青緑(あおみどり)」という言葉には、どこか曖昧な響きがあります。
青ともいえるし、緑ともいえる──。その中間にある色だということはわかっても、どの色を指すのかは人によって微妙に異なります。

しかしこの“青と緑の中間色”は、実はデザインや色彩学の世界では明確に定義されている存在でもあります。たとえば絵の具の世界では、「ターコイズブルー」「ビリジアン」「ティール」など、青緑に分類される色名は数多く存在し、それぞれに明確なカラーナンバーや色相値が割り振られています。

つまり私たちは、曖昧だと思い込んでいるだけで、青緑という色そのものは決して曖昧ではないのです。

RGB・CMYKで見る「青緑」の正体

デジタルの世界で青緑を定義すると、それは**RGBでは「GとBを混ぜた色」**になります。
R(赤)を抜いた状態でG(緑)とB(青)を混ぜると、ディスプレイ上では「シアン(cyan)」と呼ばれる鮮やかな青緑になります。これはプリンターのインクでもおなじみの「C=シアン」です。

一方、印刷のCMYKではこのシアンが**“青緑の標準色”**として使われています。C(cyan)=cyan blue、つまり「青と緑の中間」を意味するインキであり、これは青緑を工学的に定義したものと言えるでしょう。

つまり、青緑とは“感覚の中間色”ではなく、光の三原色や印刷の三原色における明確なポジションを持った色なのです。

青緑がもつ“両方の性質”と、その魅力

青緑の色には、青の持つ冷たさや静けさと、緑のもつ安心感や自然のイメージが同時に宿っています。
たとえば、海の色──それが青とも緑ともつかない色に見えるのは、まさにこの中間の性質を持っているからです。

また、現代のウェブデザインやインテリア、ファッションの分野でも、青緑は「洗練」「清潔」「中立」といった印象を与える色として重宝されています。見る人によって“どちらにも見える”この不思議な色は、文化や国を超えて広く受け入れられている色彩とも言えます。


第4章|色の名前が世界をつくる──「言葉によって見える色が変わる」


同じ色でも、「名前」が違えば見え方も変わる

あなたが見ているその色は、「本当にそういう色」でしょうか?
──そんな問いかけが成り立ってしまうのが、「色と言葉」の不思議な関係です。たとえば、青緑のような中間色を見せたとき、人によって「青」と答えるか「緑」と答えるかはまちまちです。

それは、目の性能が違うからではありません。私たちの色の感じ方は、「色にどんな名前がついているか」「それをどう教わってきたか」によって、無意識のうちに決まっているのです。

サピア=ウォーフ仮説──言語が世界の“見え方”を決める

この現象は、言語学の世界では「サピア=ウォーフ仮説」として知られています。
簡単に言えば、人間は“使っている言語によって、世界の認識のしかたが変わる”という考え方です。

色彩の研究でもこの仮説は重要な位置を占めており、たとえばロシア語のように「青」を2種類に分けて言い表す言語の話者は、青の中間的な色をより速く区別できる傾向があることが実験で示されています。

一方、日本語のように「青信号」や「青りんご」のような表現に慣れている人にとっては、同じ緑でも「青」と感じてしまうのです。つまり、**色の違いは「見て判断している」のではなく、「言葉によって見えてくる」**ということになります。

子どもは“言葉”によって色を識別するようになる

この傾向は、大人になってから形成されるものではありません。
むしろ、幼児期から色名を覚えていく過程で「色の世界」が形成されていくのです。

たとえば、3歳児に青緑のような色を見せると、最初は「どっちでもない」と答える子が多いのに対し、色名を学んだ後は、言葉に引きずられるように「青」または「緑」と即答するようになります。これは、言葉が思考と知覚の枠組みをつくっていることの表れでもあります。

言い換えれば、「色を区別できるかどうか」は、生まれつきの能力というより、言葉と共に育つ文化的な感覚なのです。


第5章|色をめぐる文化と感性──「青信号」を受け入れる日本人のセンス


自然の中では、青と緑は“混ざり合っている”

海の色を見て「青い」と言う人もいれば、「緑がかってる」と感じる人もいます。
山を見ても、「緑の山」と言うこともあれば、「青々とした山」と表現することもあります。どちらも正しいし、どちらも間違いではありません。自然界にある色は、そもそもひとつの名前では言い表せないほど複雑で、微妙なグラデーションに満ちています。

日本語では、こうした自然の“曖昧な色合い”に対しても、それを無理に分類せずに受け入れる表現が多くあります。「青葉」「青山」「青田」など、緑がかった風景をあえて“青”と表現するこの感覚は、色彩を数値ではなく情緒でとらえる文化の現れと言えるでしょう。

曖昧さを許容する文化と、明確な分類を求める文化

西洋の言語や文化では、色を明確に分ける傾向が強く、分類しきれないものは“曖昧”として敬遠されがちです。一方、日本語には「曖昧」をネガティブとしない文化的土壌があります。

たとえば「空の青と山の青は違うが、どちらも“青”と呼ぶ」という感覚や、「緑と青の境界線がなくても気にならない」という許容の広さは、日本人の感性の特徴でもあります。信号機の緑色を「青信号」と呼び続けるのも、厳密な色の分類よりも、伝統や印象を重視する文化の反映だと言えるでしょう。

これは単に“こだわらない”のではなく、細部にとらわれずに本質をとらえるという美意識にもつながっています。

「色に名前をつける」ことは、文化の表現である

結局のところ、色そのものは波長としてはっきりしていても、「その色をどう呼ぶか」「どう感じるか」は文化の問題です。日本人が青と緑を曖昧に扱うのは、単なる歴史的経緯だけでなく、色に対して“理屈よりも感覚”を優先する文化的な態度の表れでもあるのです。

そう考えると、「青信号」という言葉も、合理性よりも情緒を優先する“日本らしい色の呼び方”として見えてきます。


第6章|青と緑の境界は、“目”ではなく“心”が決める


色の境界線は、光ではなく人間が決めたもの

物理的には、青と緑の波長は明確に異なります。
青は約450nm、緑は約510nm前後──科学的に測定すれば、両者の間には確かに差があります。
けれど、私たちが「これは青」「これは緑」と感じる境界線は、必ずしもその数値に一致しません。

同じ色を見ても、ある人は「青っぽい」と言い、別の人は「緑だね」と言う。その判断は、網膜の働きだけでなく、文化・言語・記憶・教育といった“人間の側”の事情によって揺れ動いています。

色とは単なる光ではなく、「意味づけされた光」なのです。

「青緑」が好きな人たち──曖昧さの中に美しさを見つける感性

色の中でもとくに「青緑」は、多くの人にとって“心地よい中間色”として親しまれています。
それは、冷たさと温かさ、静けさと生命感──そんな相反する印象をバランスよく併せ持っているからかもしれません。

青と緑のどちらにも分類しきれないこの色には、「決めつけない美しさ」があります。
だからこそ、青緑はインテリアやプロダクトデザイン、Webカラー、パッケージなど幅広い分野で選ばれるのです。
曖昧でありながら、強い個性を放つ。
分類できないからこそ、心に残る。

その感覚は、まさに日本人の色彩文化と共鳴しています。

青と緑のあいだに、「自分だけの色」がある

このブログを読み終えたとき、あなたが「青信号」を見て感じる色は、少しだけ変わっているかもしれません。
それは“青に見える緑”でも、“緑っぽい青”でもなく、**あなただけの「青緑」**なのです。

色は、目で見るものではなく、心でとらえるもの。
青と緑の境界は、数値で決まるものではなく、私たち一人ひとりの中にあるのだと──そのことを改めて思い出させてくれる色、それが「青緑」なのかもしれません。


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