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0章|春は、まず「地面の下」から始まる
2月の終わりごろになると、まだ寒さは残っているのに、どこか空気がやわらいでくるのを感じることがあります。
雪が降る日もあり、霜が降りる朝もある。
それでも、自然はすでに次の季節へと動き始めています。
その「目に見えない春の始まり」を表した言葉が、
**土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)**です。
花が咲く前でも、鳥が鳴き出す前でもなく、
まず変わるのは「地面の中」。
日本語には、そんな細やかな季節の変化をすくい取った言葉が残されています。
1章|土脉潤起とは?意味と読み方
■ 読み方
つちのしょう うるおい おこる
■ 意味
土脉潤起とは、
冬の間に凍っていた大地がゆるみ、
雨や雪解け水によって潤い、
生命の活動が始まる頃
を表す言葉です。
簡単に言えば、
👉 「土の中で春が始まる時期」
という意味になります。
まだ草も芽吹かず、景色は冬のままに見えますが、地面の下ではすでに準備が進んでいる。その状態を表現した言葉です。
2章|語源・漢字から見る土脉潤起の意味
「土脉潤起」は、漢字一文字ごとに意味を見ていくと、この言葉が何を表しているのかがより明確になります。
| 漢字 | 意味 |
|---|---|
| 土 | 大地 |
| 脉 | 流れ・めぐり |
| 潤 | うるおう |
| 起 | 動き出す |
ここで使われている「脉(しょう)」は、「脈」の旧字体にあたり、本来は血管の脈のように、内部を流れるものや、見えないめぐりを表す字です。
この字が「土」と組み合わさることで、地面の中に水分が行き渡り、静かに変化が始まっている様子を表していると解釈されています。
つまり「土脉潤起」とは、
👉 大地の中に水がめぐり、潤いが生まれ、変化が始まる頃
を表した言葉です。
まだ目に見える変化は少なくても、地面の下では雪解け水や雨が土にしみ込み、次の季節へ向けた準備が進んでいます。
この言葉は、そうした目には見えない自然の動きを、漢字の組み合わせによって静かに描き出した表現だといえるでしょう。
3章|二十四節気・七十二候での土脉潤起の位置づけ
■ 二十四節気との関係
土脉潤起は、二十四節気のひとつである
**「雨水(うすい)」**の期間に属する七十二候です。
雨水とは、
雪が雨へと変わり、氷が溶け始める頃
を意味し、本格的な春へ向かう最初の段階とされています。
現在の暦では、雨水は
例年2月19日ごろから3月4日ごろにあたります。
※ただし、二十四節気は太陽の動きを基準に決められるため、年によって日付が1日前後することがあります。
■ 七十二候での位置
七十二候では、「土脉潤起」は雨水の最初の候(初候)にあたります。
現在の暦では、
例年2月19日ごろから2月23日ごろ
にあたります。
※七十二候は太陽の動きを基準に決められるため、年によって日付が1日前後することがあります。
雨水の期間における順番は次の通りです。
① 土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)
② 霞始靆(かすみはじめてたなびく)
③ 草木萌動(そうもくめばえいずる)
この順序は、
まず土が潤い、
次に空に霞が現れ、
そして草木が芽吹く、
という春の進行を段階的に表したものです。
つまり「土脉潤起」は、
👉 春の始まりを示す、最初の変化
を意味する七十二候なのです。
4章|歴史と文化における土脉潤起
七十二候は、もともと古代中国で生まれた暦思想が元になっています。
ただし、現在日本で使われている七十二候は、江戸時代に整理・定着したものとされており、完全に中国と同一ではありません。
「土脉潤起」も、中国思想の影響を受けつつ、日本の気候に合わせて整えられた表現と考えられています。
農業が生活の中心だった時代、
-
土の柔らかさ
-
水分の含み具合
-
霜や凍結の解消
は、作付けや種まきの重要な判断材料でした。
そのため、「土が潤い始める時期」を細かく言葉にして記録する文化が生まれたのです。
5章|土脉潤起の現代での使い方と例文
現在、「土脉潤起」は日常会話で使われることはほとんどありません。
主に次のような場面で使われます。
■ 使われる場面
-
季節の挨拶文
-
コラム・随筆
-
和風ブログ
-
俳句・短歌
-
手紙や文章表現
■ 例文
①
土脉潤起の頃となり、春の気配を感じるようになりました。
②
暦の上では土脉潤起。見えないところで季節が動いています。
③
まだ寒いが、土脉潤起を迎えたと思うと心が和らぐ。
④
庭の土も柔らかくなり、土脉潤起を実感する季節だ。
6章|まとめ|土脉潤起とは見えない春を感じる言葉
土脉潤起とは、
✔ 雨水の初候
✔ 地面が潤い始める時期
✔ 春の最初のサイン
を表す言葉です。
この言葉が伝えているのは、
👉 季節は、目に見えないところから変わる
という事実です。
花が咲いてから春になるのではなく、
鳥が鳴いてから春になるのでもありません。
まず土が変わり、
水が巡り、
そこから命が動き出す。
「土脉潤起」を知ることで、何気ない2月・3月の風景が、少し深く見えてくるはずです。
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