あけましておめでとうございますの意味とは?|歴史・文化・正しい使い方まで簡単解説

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0章|導入──なぜ私たちは新年にこの挨拶をするのか?


「あけましておめでとうございます」。
1年の始まりに、最初に交わす言葉として定着している挨拶です。

でも、よく考えてみると不思議です。

年が変わるのは毎年同じことなのに、
私たちはどうして“おめでたい”と感じるのか?
そしてなぜ「新年あけましておめでとうございます」は
“誤用”と言われるのか?

この言葉には、
歴史・文化・節目の思想・人間関係のマナーが折り重なっています。

ここからは、
意味のしくみ・言葉の成り立ち・使い方の注意点まで、
短くスッキリ、でも深くわかるように整理していきます。


1章|言葉の意味──“年が明ける”+“祝い”の二段構造


「あけましておめでとうございます」という挨拶は、
実は 二つの意味が連続している言葉です。

● ① あけまして

“年が明ける”=新しい年を迎える、という節目の宣言。

● ② おめでとうございます

その年明けを祝い、
「あなたにとって良い一年になりますように」
という祈りを相手へ届ける言葉。

つまりこの挨拶は、
「新しい年が来ましたね。それを一緒に喜びましょう」
という“共有の祝意”で成り立っています。

英語の「Happy New Year」が
“相手に向けた祝福”であるのに対し、
日本語の「あけましておめでとうございます」は、
節目を確認しつつ相手を祝うという、
より丁寧でニュアンスの深い挨拶なのが特徴です。


2章|歴史──平安の“言祝ぎ”から、明治に広がった口語表現


新年を祝う文化は、千年以上前から日本に根づいています。
平安時代の文献――たとえば『源氏物語』や『枕草子』にも、
年の始めに贈り物を交わしたり、人々が挨拶を訪ねる場面が描かれ、
“年初を祝う”という感覚そのものは古くから存在していました。

ただし、その際に使われていたのは、
現在のような口語の「あけましておめでとうございます」ではありません。
当時の正式な文書や儀礼では、
漢語を用いた格調高い賀詞が一般的で、
「賀」「寿」「恭」など“祝意”を表す漢字を組み合わせた
あらたまった表現が中心でした。

いわば、新年の祝意はあっても、
それを伝える言葉は“儀式向けの文語表現”が主流だったのです。

では「あけましておめでとうございます」はいつ生まれたのか?

それが広く使われるようになったのは、
明治〜大正期にかけてのこと。


■ 郵便制度の発達がターニングポイント

年始に「年賀はがき」を出す文化が一気に広がり、
そこに書かれる文面として
“もっと話し言葉に近い挨拶”が定着していきました。

その流れの中で、現在の
「あけましておめでとうございます」
という表現が全国へ浸透したのです。

かしこまった祝語から、
より生活に近い挨拶が主流になった――
これが現代の正月挨拶の始まりです。


3章|文化背景──年神様を迎える“特別な節目”としての正月


日本で正月が特別視される理由には、
「年神様(としがみさま)」を家へ迎える日
という古い信仰があります。

年神様は、
その年の“生命力”や“豊穣”を授ける存在と考えられてきました。
だから正月は、単なるカレンダーの切り替わりではなく、

  • 家を清める(大掃除)

  • 正月飾りで神様の居場所を作る(門松・しめ縄)

  • 祝いの料理を用意する(おせち)

といった“お迎えの準備”をする期間でした。

この文化の中で、
新しい年を迎えることは 人生の再スタート に近い意味を持ちます。


■ 正月=「縁を整える日」という側面も

新年の挨拶回りや年賀状文化が残っているのは、
年神様への祈りと同じく、

  • 人との縁を結び直す

  • 1年の関係を整える

という意味があったから。

つまり「あけましておめでとうございます」は、
“節目の祝い”と“人との再スタート”をまとめて伝える言葉でもあるわけです。


4章|コラム:新年あけましておめでとうございますは間違い?


年始になると必ず話題になるのが、
「新年あけましておめでとうございます」は誤り?
という問題。

結論からいえば――


■ 結論:誤りとされる(理由は“重複”)

  • 新年 = 年が明けたこと

  • あけまして = 年が明けて

両方に“年が明ける”という意味が入り、
構造としては

「年が明けて、年が明けて、おめでとうございます」

意味が二重 になります。
そのため文章作法では 推奨されない表現 とされます。


■ とはいえ:日常会話では完全に“許容”されている

  • SNS

  • 友人同士の会話

  • カジュアルな年賀状

では広く使われており、
言っても マナー違反ではありません

言葉は“使われているほうが正しくなる”面もあるため、
すでに一般語として浸透していると言えます。


■ ビジネス・公式文書では避けた方が良い

公的・ビジネスの場では
「重複を避ける」という文章ルールが重視されるため、

  • 会社の年始挨拶

  • 店舗の新年メッセージ

  • 公的なお知らせ

では 避けるのが無難

推奨される正しい言い回しは次の通り:

● あけましておめでとうございます

(もっとも一般的)

● 新年おめでとうございます

(重複なし)

● 謹んで新年のお慶びを申し上げます

(最もフォーマル)


■ ついでに:新春あけまして〜もNG

「新春」=新しい年の雅語
「“新しい年”+“年が明けて”」の重複になるため避けます。


■ まとめ:日常はOK、公式はNGの“グレー表現”

  • 重複なので 文章としては誤用扱い

  • でも 会話では普通に使われる(怒られない)

  • ビジネスでは避けるのがマナー

このバランスを知っておくと、
新年の挨拶がぐっと上品に整います。


5章|使い方の注意点──知っておくと上品に見える基本ルール


新年の挨拶は、
ちょっとした言い回しの違いで
“丁寧さ”や“品の良さ”が大きく変わります。

ここでは失敗しないためのポイントを、短く整理します。


■ ① 12月中に使うのはNG

「年が明けていない」ため不自然。
ただし、年賀状を12月に投函するのはOK(相手に届くのは新年だから)。


■ ② 目上の人に使ってもOK

「あけましておめでとうございます」は丁寧語なので、
ビジネスでも正式な挨拶として問題なし。

もっと丁寧にしたい場合は、
「謹んで新年のお喜びを申し上げます」などの敬語表現を使います。


■ ③ “昨年はおめでとうございました”は誤用

「おめでとうございます」は未来に向けて祝う言葉。
過去形では使いません。


■ ④ 使用できる期間は松の内までが一般的

地域で差がありますが、

  • 関東:1月7日まで

  • 関西:1月15日まで

を目安に使われています。

松の内を過ぎたら
「今年もよろしくお願いいたします」に切り替えるのがスマート。


■ ⑤ 年賀メール・SNSでも文面は整えると好印象

絵文字だけの挨拶や「ことよろ」などの略語は、
ビジネスでは避けたほうが無難。


6章|まとめ──「あなたと新しい年を祝えること」が本質


「あけましておめでとうございます」は、
ただの季節の決まり文句ではありません。

その裏には、

  • 年が明けた喜びを共有する文化

  • 年神様を迎える日本独自の節目意識

  • 人との縁を整える伝統

  • 言い回しに気をつける文章作法

といった、長い歴史で育まれた意味が重なっています。

そしてなにより大切なのは、
この言葉に込められている
「あなたと新しい一年を祝えることが嬉しい」
という気持ち。

形式だけでなく、
心を込めて交わすからこそ、新年の挨拶は特別になります。


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