赤字・黒字の語源|なぜ“赤”がマイナスになるのか?帳簿と色の歴史で読み解く【世界共通だった】

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0章|導入──どうして赤は“損”を表すのか?


決算ニュースでも家計簿でも、
「今年は赤字です」「黒字でした」
という言い回しは当たり前のように使われています。

でも、よく考えると不思議です。
なぜマイナスを“赤”で表すのか?
色に善悪があるわけでもないのに、赤だけが特別扱いされています。

この理由は、 帳簿の歴史・インクの文化・赤がもつ注意の心理効果 が重なって生まれたものです。


1章|語源──赤インクで書かれた損失、そのまま“赤字”に


赤字という言葉は、非常にシンプルな実務から生まれました。

  • 利益・通常の記載:黒インク

  • 損失・異常な数字:赤インク

この書き分けは江戸時代の商家の帳簿にも確認でき、
明治に西洋式の簿記(複式簿記)が導入されると、
英語の “in the red(赤字)” と同じ運用が広まりました。

つまり 赤字=赤で記されたマイナスの記録
意味そのままが言葉になっただけなのです。


2章|歴史──世界でも同じ“赤=マイナス”文化


日本だけの習慣ではありません。
赤は世界中で「異常・危険」を示す印として使われてきました。

  • 古代ローマ:危険・重要項目のマーキングは赤

  • 中世ヨーロッパ:赤インクは訂正・禁止・例外記載に使用

  • 19世紀の会計:損失を赤で記入 → “in the red”が一般化

明治日本がこの帳簿文化をそのまま輸入したため、
赤=損、黒=通常(利益) の意味が自然に定着していきました。


3章|文化・成り立ち──赤は「通常ではない状態の色」


では、なぜ帳簿のマイナス記号に“赤”が選ばれたのか?
その背景には、人類共通の色文化があります。


●赤は「よく見える色」

火・血・危険物の色として
最も視認性が高い色=異常値が一目でわかる。


●赤は「注意・警告」を表す文化が古くからある

  • 日本の“朱筆”=注意事項を書く赤

  • 赤ペン=間違いを訂正する色

  • 赤信号=止まれ

  • 危険表示=赤枠

赤は “普通ではない状態” を表す色として進化していきました。


●黒は「標準の記録色」だった

墨、文書、役所記録──すべて黒文字が基準。
だから黒字は“普通の状態の延長”として利益の意味に転じたのです。


4章|意味──赤字=注意すべき状態、黒字=通常+健全


  • 赤字:損失。注意が必要な“例外状態”

  • 黒字:通常運行の結果としての利益・安全圏

色の善悪ではなく、
記録の色分け → 視覚心理 → 会計文化 が重なって生まれた言葉でした。


5章|まとめ──赤字は“危険色”、黒字は“標準色”から来ていた


赤字はネガティブに見えるけれど、
本来はただの 実務的な書き分けの色

しかし人間の歴史の中で、
赤が“異常・危険”、黒が“標準・安定”という意味を持ってきたため、
会計用語としてそのまま定着しただけなのです。

色の言葉は、文化と視覚の積み重ねが作った“歴史の記録”でもあるのです。


📌コラム|英語でも「赤字=赤インク」文化だった


英語でも、赤字は in the red と言います。
まさに、損失を 赤インクで記した状態を指す言葉です。

We are in the red this year.
今年は赤字です。

一方、黒字は in the black
黒インク=通常の記録 → 健全な財務状態という発想です。

公的な財政表現では

  • 赤字:deficit

  • 黒字:surplus

と色を使わず表すこともありますが、
赤=危険/黒=安定の文化は世界共通です。


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