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0章|「きつい」って、結局なにが“きつい”の?
「最近ちょっときついわ…」
「この仕事、正直きつすぎる」
「その言い方、きつくない?」
私たちは日常の中で、無意識のうちに「きつい」という言葉を何度も使っています。
体がきつい。
仕事がきつい。
性格がきつい。
匂いがきつい。
服がきつい。
使い道はバラバラなのに、なぜ全部「きつい」で通じるのでしょうか。
実はこの言葉には、日本語らしい“ある共通感覚”が隠れています。
1章|現代の「きつい」の意味を整理する
まず、「きつい」という言葉の意味をはっきりさせましょう。
きついとは、度合いが強いこと、締め付けが強いこと、厳しいこと、刺激が強いこと、耐えるのが容易でない状態を表す言葉です。
つまり、「きつい」は
何かの“強度”が高いと感じるときに使われます。
この“強度”が、どこにかかっているかによって、使い方が変わります。
そこで、現代の用法を整理すると、主に次の5タイプに分けられます。
① 肉体的なきつさ
・運動がきつい
・体力的にきつい
② 精神的なきつさ
・メンタルがきつい
・プレッシャーがきつい
③ 環境・条件のきつさ
・暑さがきつい
・坂道がきつい
④ 刺激のきつさ
・匂いがきつい
・酒がきつい
⑤ 物理的なきつさ
・ズボンがきつい
・締め付けがきつい
共通しているのは、
👉「負荷が強い」「余裕がない」「耐えるのが大変」
という感覚です。
2章|語源と由来:「きつい」は昔からある言葉
「きつい」は若者言葉でも、近年生まれた流行語でもありません。
この言葉のもとの形は、古語の形容詞
「きつし」
です。
文語形「きつ・し」として、少なくとも室町時代(15世紀)にはすでに使われていたそうです。
つまり、「きつい」は何百年も前から使われてきた日本語なのです。
当時の「きつし」には、次のような意味がありました。
・刺激が強い
・度合いが激しい
・態度や言葉が厳しい
・締め付けが強い
・耐えるのが容易でない
ここで注目すべきなのは、どの意味にも共通している感覚です。
それは、
「強度が高い」「圧がかかる」「余裕がない」
という方向性です。
つまり、「きつい」はもともと
何かが“強く作用している状態”を表す言葉でした。
現代の
・仕事がきつい
・匂いがきつい
・ズボンがきつい
といった使い方も、この古い意味の延長線上にあります。
「きつい」は時代とともに使い道を広げながらも、
その中心にある“強さの感覚”は大きく変わっていない。
そう考えると、この言葉の輪郭がはっきり見えてきます。
3章|「きつい」はどう広がってきたのか
古い時代の「きつい」は、主に
・態度がきつい
・罰がきつい
・味がきつい
など、「強烈さ」を表す場面で使われていました。
それが近代〜現代にかけて、
・体力的負荷
・精神的ストレス
・生活の疲労
といった“体感的な苦しさ”にも広がっていきます。
結果として、「きつい」は
👉 強度を測る万能ワード
になっていきました。
4章|文化:「きつい」は日本人にちょうどいい言葉
日本語には、「はっきり言いすぎない」文化があります。
たとえば、
「無理」「限界」「もうダメ」
とまで言うと重すぎる。
でも何も言わないのもつらい。
そんなときに使えるのが「きつい」です。
・弱音すぎない
・責任放棄でもない
・現状報告として成立する
「きつい」は、日本人にとって
言いやすくて、逃げすぎない言葉なのです。
5章|つらいと似た言葉との違い
ここでは、「つらい」「しんどい」「やばい」と
入れ替えたときに意味がどう変わるかという視点で整理します。
① つらい × きつい
つらいは、苦痛や耐えがたさそのものを表す言葉です。
心がつらい、体がつらい、といったように、
「感じている苦しさ」に焦点があります。
きついは、負荷や強度の大きさを表す言葉です。
仕事がきつい、坂がきつい、匂いがきついなど、
「かかっている圧や強さ」に焦点があります。
入れ替えテスト
-
仕事がきつい
→ 負荷が大きい印象 -
仕事がつらい
→ 感情的に苦しい印象
意味は近いですが、焦点が違います。
👉 つらい=苦しさの感覚
👉 きつい=負荷の強度
ただし、実際の会話では
「きつくてつらい」のように重なることもあります。
② しんどい × きつい
しんどいは、疲労や消耗感が前面に出る言葉です。
体が重い、気力が落ちている、といった状態を表します。
きついは、疲労そのものよりも、
「条件や負荷の厳しさ」に焦点があります。
入れ替えテスト
-
この坂きつい
→ 傾斜や負荷が強い -
この坂しんどい
→ 登っていて疲れている感覚
👉 しんどい=消耗の状態
👉 きつい=負荷の強さ
似ていますが、「疲れている」のか
「条件が厳しい」のかでニュアンスが変わります。
③ やばい × きつい
やばいは、本来「危険・不都合」を意味する言葉で、
現代では「すごい」「とても良い/悪い」といった
状況全体への評価語として広く使われています。
きついは、評価ではなく、
負担や強度の感覚を示す言葉です。
入れ替えテスト
-
スケジュールがきつい
→ 余裕がなく、負担が大きい -
スケジュールがやばい
→ 危険レベル、深刻という評価
👉 やばい=状況への評価
👉 きつい=負担の質感
同じ場面でも、言葉を替えると伝わる印象は変わります。
まとめ|何を測っている言葉なのか
| 言葉 | 焦点 |
|---|---|
| つらい | 苦痛の感覚 |
| きつい | 負荷・強度 |
| しんどい | 消耗状態 |
| やばい | 状況全体の評価 |
この違いを意識すると、
「きつい」という言葉の立ち位置がはっきり見えてきます。
きついは、
感情でも評価でもなく、
“強さ”を測る言葉なのです。
6章|きついの使い方・例文集
【体・仕事】
・このトレーニング、地味にきつい
・今月のスケジュールきつすぎる
【対人】
・言い方がちょっときつい
・目つきがきつい人だな
【刺激】
・この香水、きつくない?
・度数きつい酒だな
【物理】
・ウエストがきつい
・締め付けがきつくて苦しい
7章|まとめ:「きつい」の正体は“圧”である
「きつい」という言葉の正体は、とてもシンプルです。
👉 強さ・圧・負荷の感覚
これが、時代を超えて一貫しています。
だからこそ、
・体にも
・心にも
・仕事にも
・匂いにも
・服にも
全部使えるのです。
便利な言葉だからこそ、
「何が」「どこが」きついのかを添えると、
伝わり方は一気に良くなります。
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