そのうちとは?意味・語源・使い方|なぜ曖昧なのかを徹底解説

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0章|導入──「そのうちって、いつの話?」


「そのうちやろう」
「そのうち行こう」
「そのうち分かるよ」

日本語では当たり前すぎるほど自然な言葉です。けれど、少し立ち止まると奇妙でもあります。

そのうちって、どのうち?

「その」と言うからには、何かを指しているはず。
「うち」と言うからには、どこか範囲があるはず。

なのに、期限も対象もはっきりしない。それでも会話が成立してしまう。

この記事では、この不思議な言葉「そのうち」を、意味・語源・歴史・文化・使い方という視点から丁寧にひも解いていきます。


1章|そのうちとは?現代的な意味


そのうちとは、ひと言でいえば、

今ではないが、いずれ来る未来のどこか

を表す言葉です。

大事なのは、現代の会話では「そのうち」がほとんどの場合、副詞のようにひとかたまりとして使われること。

たとえば、

  • そのうち行こう

  • そのうち連絡するね

  • そのうち慣れる

  • そのうち分かる

これらは「その」+「うち」と分けて理解するというより、**「そのうち=いずれ(近いうち)」**という一語のように使われています。

だから便利。しかし便利であるほど曖昧さが残ります。「言っているようで言っていない」という独特の余白が、最初から組み込まれている言葉です。


2章|そのうちは未来を指すから、そもそも曖昧になりやすい


まず「そのうち」が曖昧なのは、ある意味当然です。なぜなら、未来を指しているから。

未来は、

  • 状況が変わる

  • 予定が変わる

  • 気持ちが変わる

という前提でできています。

だから未来を表す言葉には「いつか」「いずれ」「近いうち」など、曖昧なものが多い。「そのうち」もその一つです。

ただし「そのうち」には、未来表現の中でも特に曖昧さを生みやすい理由があります。犯人は「うち(内)」です。


3章|ぼかしている犯人は「うち」──範囲を作って中心を消す


「うち(内)」は本来、

  • 家の内

  • 内側

  • 身内

など、空間や所属を表す言葉でした。

しかし日本語では昔から、

  • 今日のうちに

  • 今のうちに

  • 生きているうちに

のように、時間の範囲も表します。

この「うち」が持つ性質はとても強力です。

範囲を示すが、中心(ピンポイント)を消す

「うち」を使うだけで「いつ、とは言わずに済む」「期限を決めずに済む」という状態が作れてしまう。

つまり「うち」は、言ってしまえば 期限を曖昧にする装置のように働きます。

そして「そのうち」は、未来という不確定な領域にこの「うち」を掛け算した表現です。

未来 × うち(範囲)=決めなくていい未来

曖昧さが強いのは、構造として当然なのです。


4章|語源的には「その+うち」──でも現代では一語化している


ここで疑問が生まれます。

「そのうち」って分解できるの?
「その」は指示語として働いているの?

答えはこうです。

  • 語源(形)としては その+うち

  • ただし用法(現代の使い方)としては そのうち(ひとかたまり)

つまり二層構造です。

見た目が「その+うち」だから、私たちは「その」を指示語として意識したくなる。しかし実際の会話では、「そのうち」全体が副詞として一語化しているので、「その」単体の指示性はかなり弱まっています。

この 「分けられそうで分けにくい」ズレが、「そのうち」をいっそう不思議に見せています。


5章|「その」は本来かなり具体的──だから余計に混乱する


さらにややこしいのは、「その」自体は本来、かなり具体的な言葉だということです。

  • その人

  • その件

  • その話

と言われたら、対象がピンとくる。場合によっては指さすことすらできる。

だからこそ、

「そのうち」って言うなら、何か具体的に指しているはずでは?

と感じてしまうのです。

しかし実際には「うち」が範囲化して中心を消し、さらに「そのうち」全体が一語化してしまっている。その結果、

「その」と言っているのに、指せない

という状態が生まれる。

そして私たちは、ついこう言いたくなる。

それ、どれ?


6章|「その折」「その節」は指せるのに、「そのうち」は指せない


ここで時間表現の比較が効きます。

日本語には昔から、

  • その折(そのとき)

  • その節(そのころ)

  • その時分(そのころ)

のような「その+時間語」があります。

このタイプは「その」が明確に指示語として働きます。

「どの折?どの節?」と問われれば、文脈の中で比較的きちんと指せる。つまり「その折」の「その」は生きている。

ところが「そのうち」では、同じように見えるのに、

  • 「その」が指示語として働く感覚が弱い

  • 指し示す対象が出てこない

つまり 「その折」の『その』は生きていて、「そのうち」の『その』は薄まっている

ここに「そのうち」特有の曖昧さがあります。


7章|そのうちの使い方と例文──便利さは誤解も生む


「そのうち」は未来を示す言葉です。しかし約束ではありません。


日常会話

  • そのうち行こう

  • そのうち連絡するね

  • そのうち慣れるよ

  • そのうち分かるって


仕事・距離のある場面(注意)

  • そのうち検討します

  • 状況を見て、そのうち判断します

便利な反面、聞き手が勝手に期待を膨らませやすいのも事実です。「そのうち」は否定ではないからです。

けれど、決定でもない。だからこそ人間関係を壊さずに保留できる。それが「そのうち」の強さです。


8章|文化──「そのうち」は関係を守る曖昧さ


「行かない」と言えば冷たい。
「いつ行く」と言えば約束になる。

その中間が必要なとき、人はこう言う。

そのうちね

これは単なる曖昧さというより、場を荒らさないための選択です。

日本語には、断定を避け、余白を残し、角を立てない性質があります。「そのうち」は、その性質を凝縮した表現とも言えます。


まとめ|そのうちとは、未来を“範囲”で包む言葉


「そのうち」は、

  • 未来を示す

  • でも期限は示さない

  • なのに会話は成立する

という不思議な言葉です。

その理由ははっきりしています。

  • 未来はそもそも不確定

  • そこに「うち(範囲)」が乗って曖昧さが増幅

  • 語源は「その+うち」でも、現代では一語化

  • 「その」は本来具体的だからこそ「それ、どれ?」が生まれる

便利で、少し無責任で、でもやさしく関係を守る。
「そのうち」は、日本語らしさが詰まった未来の言葉なのです。


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