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0章|導入──「計画を立てる」とは、何をしているのか
「計画を立てる」
私たちはこの言葉を、あまりにも自然に使っています。
仕事の計画。
旅行の計画。
人生設計の計画。
ところが、あらためて考えてみると少し妙です。
計画とは、まだ起きていない未来の話。
実体のないものに対して、私たちはなぜここまで真剣になれるのでしょうか。
しかも漢字を見ると、さらに不思議が増します。
計は「はかる」。
では、画とは何なのか。
なぜ「計る」だけで終わらず、
わざわざ「画」という字が使われているのか。
この違和感を手がかりに、「計画」という言葉をひも解いていきます。
1章|計画とは?──現代で使われている意味
**計画(けいかく)**とは、
目的を達成するために、
手順・方法・時期などを、前もって定めること
と説明されます。
ここで重要なのは、
計画が「行動」そのものではないという点です。
計画とは、
まだ何も起きていない段階で行われる思考。
実行の前に置かれる、準備の行為です。
言い換えれば、
計画とは「未来をどう扱うか」を決める作業なのです。
2章|「計」という字が表すもの──はかる、見積もる
「計」という漢字は、
数を数える
条件を整理する
可能性を見積もる
といった意味を持っています。
長さや重さを測るだけでなく、
状況を比較し、判断することまで含みます。
計算、会計、設計。
いずれも「計」が使われています。
つまり「計」とは、
頭の中で現実を整理し、把握する行為を表す字なのです。
3章|「画」は絵なのか?──線を引くという意味
では「画」はどうでしょう。
画と聞くと、
美術やイラストを思い浮かべるかもしれません。
しかし、本来の意味はもう少し実務的です。
「画」は、もともと
線を引く
区切る
境界を定める
といった方向の意味を持ち、そこから
配置を決める
構想を図にして示す
というニュアンスへも広がっていきました。
古くは、
都市の区画
制度の設計
軍の布陣
といった、形のない構想を
図として示す行為を指したとされます。
「画」とは、
考えを“形”にするための言葉だったのです。
4章|計画とは何か──二つの漢字が重なるところ
ここで、「計」と「画」を並べて考えてみます。
計:条件や可能性を測る
画:構想を線や図として示す
この二つが合わさったとき、
計画という言葉が生まれます。
計画とは、
ただ考えることでも、
ただ測ることでもありません。
測った結果をもとに、
未来の姿を一度、頭の中で組み立てること。
計画とは、
未来を仮置きするための思考なのです。
5章|歴史における計画──個人の言葉ではなく、国家の言葉だった
いま私たちは「旅行の計画」「週末の計画」といった具合に、
計画という言葉をかなり日常的に使っています。
けれど歴史をさかのぼると、「計画」はもともと、もっと硬くて大きな言葉でした。
個人のスケジュールというより、政治・行政・統治の場で使われる漢語として育ってきた言葉です。
日本語の文章の中では、少なくとも江戸後期(19世紀初頭)にはすでに使われていた用例が見られるとされます。
ただし、それが現代のような「日常会話の語」だったかというと、必ずしもそうではありません。
当時の「計画」は、学問・政治・制度の文脈で用いられる、
いわば**“上の世界の言葉”**に近かった。
「未来をどう設計するか」「国をどう動かすか」といった、
大きな意思決定と結びついた語彙だったと考えたほうが自然です。
そして近代に入ると、計画という言葉はさらに強い意味を帯びていきます。
近代国家の成立とともに、産業や経済が巨大化し、
社会は「未来を管理する」ことを強く求めるようになったからです。
そこで前面に出てくるのが、計画という言葉でした。
たとえば、計画経済や長期計画といった表現に見られるように、
計画は「個人の段取り」ではなく、
国家や組織が未来を設計し、全体を動かすための思想の言葉として広がっていきます。
そう考えると、「計画を立てる」という日常的な言い方も、
単なる予定表づくり以上の意味を帯びて見えてきます。
計画とは本来、
未来を偶然に任せるのではなく、
測り、描き、設計しようとする態度そのものだったのです。
6章|日本語としての計画──守るものではなく、調整するもの
日本語の中での「計画」は、
計画どおりにいかない
計画を変更する
といった使われ方が、とても自然です。
計画は、絶対的な未来ではありません。
状況に応じて、修正される前提で存在します。
日本語の「計画」は、
柔軟な未来の仮置きとして機能しているのです。
7章|計画の使い方と例文
旅行の計画を立てる
新規事業の計画を練る
計画性のある人
計画倒れに終わる
これらに共通するのは、
すべて「行動の前」に置かれているという点です。
計画とは、
未来に向けて引く、最初の補助線だと言えるでしょう。
まとめ|計画とは、未来を扱うための思考
計画とは、
未来を測り
未来を仮に組み立てる
ための思考です。
その通りに進むかどうかは、問題ではありません。
重要なのは、
未来を一度、言葉と構造にしてみること。
計画とは、
まだ存在しないものを、
扱える形にするための知的な装置なのです。
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