物とは何か?意味・語源・歴史から考える「すべてを包む言葉」【見えるものも、見えないものも、概念ですら「物」になる理由】

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0章|導入──「物」は、世界を丸ごと受け止める言葉


机、石、空気、星。
人、動物、植物。
出来事、感情、法則、物語。

私たちは日常の中で、
驚くほど多くのものを「物」と呼んでいます。

物体
物質
人物
動物
生物
無機物
物理
物事

こうして並べてみると、気づくはずです。

この世界に存在するほとんどすべてが、「物」という一語に収まってしまう。

では逆に、こう問い直してみましょう。

物ではないものは、存在するのか?

そしてもう一つ、ややこしい問題があります。
人は「人物」として物に含まれる一方、「者」とも呼ばれる。

物とは何か。
なぜ、ここまで射程の広い言葉になったのか。


1章|物とは?──現代日本語での意味


現代の辞書で「物」を整理すると、おおよそ次の意味になります。

  • 形ある存在

  • 実体として認識される対象

  • 事柄・現象・存在一般

重要なのは、「物=物質」ではない点です。

たとえば、

物音
物事
物語
物理法則

これらは触れません。
重さも、形もありません。

それでも私たちは、違和感なく「物」と呼びます。

つまり現代日本語における「物」とは、

人が存在として認識し、区別できるものすべて

を指す言葉なのです。


2章|「物」は、具体から抽象へ広がった言葉


「物」という言葉は、最初から抽象的だったわけではありません。

もともとは、

  • 見える

  • 触れる

  • 区別できる

具体的な存在を指す言葉でした。

しかし日本語は、そこに留まりません。

出来事を「物事」と呼び、
心の動きを「物思い」と呼び、
世界の仕組みを「物理」と呼ぶ。

こうして「物」は、

具体物 → 現象 → 事柄 → 概念

という拡張を経て、
存在一般を受け止める言葉へと変化していきました。


3章|漢字「物」が示す、本質的なポイント


漢字の「物」は、一般に

から成る形声文字と説明されます。
「勿」は音を表す要素とされ、「牛」は意味を示す部首です。

ここで注意したいのは、
「牛=万物の象徴」と断定できるわけではないという点です。

漢字学的には、

牛は、家畜の中でも
形がはっきりし、価値があり、
人の生活と深く結びついた存在だった

という、生活実感に即した理由から
部首として用いられたと考えられています。

牛は、

  • 大きく目に見え

  • 触れることができ

  • 動き

  • 他のものと区別しやすい

**「具体的で分かりやすい存在」**でした。

そのため「物」という字は、

さまざまな存在を、
ひとまず一つの対象として区別し、捉えるための文字

として成立したと見ることができます。

この段階では、
「物」はまだ抽象概念ではなく、
具体的に認識できる存在を指す語でした。

しかし、
「他と区別できる存在」という感覚は、
やがて出来事や現象、さらには概念へと広がっていきます。

こうして「物」は、
目に見えるものに限らず、
人が存在として捉えるあらゆる対象を指す言葉へと
意味を拡張していったと考えられます。


4章|科学が分けても、「物」は消えなかった


近代以降、世界は科学によって細かく分類されます。

  • 物体

  • 物質

  • 生物

  • 有機物・無機物

しかし、どれだけ分類しても、
その上位には必ず「物」が残ります。

物理学は「物」を扱う学問。
生物学も「物としての生命」を研究する学問。

つまり「物」は、

分類されても、最後まで消えない言葉

なのです。

世界を細かく分解しても、
人間が世界を一つの存在として捉える限り、
「物」は必要であり続けます。


5章|「物」と「者」の違い──人はどこに属するのか


ここで、「者」という言葉を見てみましょう。

  • 研究者

  • 使用者

  • 若者

「者」は、意志・役割・立場をもつ存在を指します。

一方で人は、

  • 人物(物)

  • 人間(間)

  • 者(役割)

という、複数の呼ばれ方をします。

これは、日本語が

人を「物」と「者」のどちらかに固定しない

言語だからです。

身体としては物。
社会的存在としては者。

人はその両方を行き来します。


6章|逆に「物ではないもの」はあるのか?


ここで、最初の問いに戻ります。

物ではないものは存在するのか?

時間、感情、法則、概念。
これらも日本語では、

物事
世の中の物
物理法則

と、自然に「物」に含まれます。

結論は、かなりはっきりしています。

日本語において、
物ではないものは、ほとんど存在しない。

「物」とは、存在を限定する言葉ではなく、
存在を肯定し、包み込む言葉なのです。


まとめ|物とは、存在すべてを回収する概念である


物とは、

  • 見えるもの

  • 見えないもの

  • 出来事

  • 感情

  • 法則

  • 概念

そのすべてを含む、日本語の存在カテゴリです。

形があるかどうかは、問題ではありません。

人が
「そこに何かがある」と認識した瞬間、
それはすでに“物”になる。

だから私たちは、今日も自然にこう言います。

「これは、どういう物なんだろう?」

見えるものも、
見えないものも、
概念ですら──すべて、物。

それが、日本語における「物」の正体です。


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