出来るとは何か?意味・語源・由来──「出て来る」から始まった言葉(出来・しゅったい も)

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0章|導入──「出来る」って、何が出来ているんだろう?


「この人、仕事が出来るよね」
「今日はよく出来た」
「それ、出来レースじゃない?」

あまりにも当たり前に使っている 「出来る」 という言葉。
けれど改めて考えると、不思議です。

出来る=能力がある?
完成した?
うまくいった?

しかも漢字を見ると「出」「来」。
出て、来る。

能力の話なのに、なぜ動きのある字なのか。
この記事では、「出来る」という言葉を
意味・漢字・歴史・文化の視点から、ゆっくりひも解いていきます。


1章|出来るの意味──現代日本語での使われ方


現代日本語での 出来る は、大きく分けて次の意味で使われます。

  • 物事が完成する
    例:料理が出来る、準備が出来た

  • 能力や技量がある
    例:彼は仕事が出来る

  • 可能である
    例:今日は参加出来る

  • 状態・結果の評価
    例:出来がいい、出来が悪い

重要なのは、
「出来る」は単なる動作ではなく、結果や評価まで含む言葉
だという点です。


2章|漢字「出来」の成り立ち──「出て来る」から始まった言葉


「出来る」は、
もともと 「出づ(いづ)+来(く)」
あるいは発音の流れを踏まえた 「出(で)+来(く)」 が合わさって生まれた言葉です。

どちらの説明でも、指している意味は同じです。

  • :中にあったものが、外へ現れる

  • :こちら側へ近づき、姿を見せる

つまり「出来る」とは、本来、

内側にあったものが、外へと現れ、目に見える状態になること

を意味していました。

それは、能力の高さでも、成功の度合いでもありません。
まずは 「形として現れること」

頭の中にあった考えが言葉になる。
準備していたものが完成する。
まだ見えなかったものが、はっきり姿を表す。

この 「出て来る」という動き こそが、
「出来る」という言葉の原点なのです。


3章|歴史の中の「出来る」──能力語になるまで


古い日本語では、「出来る」は

  • 物事が起こる

  • 成果が現れる

  • 形になる

といった意味で使われていました。

そこから次第に、

  • うまく出来た → 良い成果

  • よく出来る人 → 成果を出し続ける人

という流れで、
能力や評価を表す言葉 へと広がっていきます。

つまり「出来る人」とは本来、

中にある力を、外に出し、結果として示せる人

という意味だったのです。


4章|文化としての「出来る」──日本語が重視する評価の視点


日本語の「出来る」には、
英語の canable とは違う特徴があります。

それは、
過程よりも「現れた結果」を重視する点 です。

  • 頑張ったかどうかより、出来たか

  • 持っているかより、出せたか

この感覚は、日本文化における

  • 職人の出来栄え

  • 試験の出来

  • 作品の完成度

といった価値観とも深くつながっています。


5章|「出来」の名詞用法──出来栄え・出来不出来・出来レース


「出来る」は、名詞として 「出来」 になります。

出来栄え

完成したものの 仕上がりや質
過程ではなく、結果の評価に焦点があります。

出来不出来

良いか悪いか、
評価が下される前提 の言葉。

出来レース

あらかじめ結果が決まっていること。
ここでの「出来」は、

すでに“出来上がっている筋書き”

を意味します。

いずれも共通しているのは、
外から見て判断できる状態 であることです。


6章|使い方と例文──「出来る」はどこまでを指すのか


  • 準備が出来た
    (→ 形として整った)

  • あの人は出来る
    (→ 成果を出せる人)

  • 今日の出来は70点
    (→ 結果の評価)

  • それは出来レースだ
    (→ すでに成立している構図)

「出来る」は、
可能性ではなく、可視化された状態 を指す言葉だと分かります。


コラム|「出来(しゅったい)」という、もう一つの「出来」


「出来る」は、能力や完成を表す言葉ですが、
同じ漢字 「出来」 には、もう一つの読み方があります。

それが 出来(しゅったい) です。


■ 出来(しゅったい)とは?

出来(しゅったい) とは、

事件・事故・不祥事・問題などが
発生すること、起こること

を意味する言葉です。

現代ではやや硬い表現で、
新聞、公文書、報告書などで使われることが多く、
日常会話ではあまり用いられません。


■ 語源は「出て来る」で同じ

出来(しゅったい)も、
出来る(できる)と同じく、

「出づ(いづ)+来(く)」
あるいは「出(で)+来(く)」
= 出て来る

という語源を持っています。

ただし、

  • 出来る:成果・完成・能力が現れる

  • 出来(しゅったい):事件・事態が現れる

というように、
「何が出て来たか」 によって意味の方向が分かれました。

出来(しゅったい)は、
より古い「出来」の意味を色濃く残した表現だと考えられます。


■ なぜ「しゅったい」と読むのか

これは漢文訓読の影響による 音読み です。

  • 出 → シュツ

  • 来 → タイ(到来 などと同系)

この組み合わせから、
出来 → しゅったい
という読みが定着しました。


■ 使用例

  • 不祥事が出来(しゅったい)した

  • 重大な事故が出来したため、調査が行われた

  • 想定外の事態が出来し、計画は中断された

いずれも、
「結果として事態が発生した」 ことを
客観的に述べる表現です。


■ 「出来事」との関係

出来事(できごと) も、
もともとは 「出来た事」=起こった事 を意味します。

つまり、

  • 出来(しゅったい)

  • 出来事(できごと)

は、意味的に非常に近い兄弟語です。


■ まとめ:二つの「出来」

読み 主な意味
できる 完成・能力・評価
しゅったい 発生・事件・事態

同じ「出来」でも、
評価の言葉になったか、出来事の言葉になったか
その違いが、読みと使われ方に表れています。


まとめ|出来るとは「外に現れ、評価されること」


出来るとは、

  • 中にあるものが

  • 外に現れ

  • 他者から見て判断できる状態になること

です。

能力そのものではなく、
努力そのものでもなく、
結果として「出て来たもの」

だからこそ私たちは、
出来る・出来ないに、
ときに厳しさも、納得感も感じるのかもしれません。

「出来る」という言葉は、
静かにこう問いかけています。

それは、もう外に出ていますか?

※本記事は、漢字「出来る」の意味・語源を中心に解説しています。
「できる」というひらがな表記も同じ意味で使われますが、
表記の使い分けの話は本題ではないため、ここでは触れていません。


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