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0章|導入──「選ばれるのはわかる。でも“手”って何?」
選手と聞くと、
真っ先に思い浮かぶのはスポーツでしょう。
野球選手、サッカー選手、オリンピック選手。
どれも当たり前のように使っている言葉ですが、
ふと漢字を見てみると、少し引っかかります。
選ばれるのはわかる。
でも、「手」って何?
手を使う人?
手が速い人?
技術がある人?
実はこの違和感、とても正しい疑問です。
「選手」の“手”は、手足としての手を指しているわけではありません。
この言葉に使われている「手」は、
古くから 人の役割・担い手・行為の主体 を表すために
比喩的に用いられてきた漢字です。
つまり選手という言葉は、
単なる能力や技術の話ではなく、
**「役割として選ばれた人」**を示す、
少し抽象度の高い言葉なのです。
1章|選手とは?現代の意味と使われ方
現代日本語における選手とは、
競技や試合において
選抜され、実際に出場・プレーする人
を指します。
代表的な使い方を挙げると、
-
プロ野球選手
-
日本代表選手
-
出場選手
などがあります。
ここで共通しているのは、
**「選ばれて、その競技を担っている人」**という点です。
重要なのは、
「能力が高い人」そのものを指す言葉ではない、ということ。
どれほど実力があっても、
選ばれていなければ「選手」ではありません。
選手とは、
選抜された立場そのものを表す言葉なのです。
2章|漢字から見る「選」と「手」
● 選
「選」という漢字には、
-
より分ける
-
適したものを取り出す
といった意味があります。
つまり選手の「選」は、
偶然でも、自称でもなく、
何らかの基準によって選ばれた存在であることを示しています。
● 手
一方、「手」はここが最も誤解されやすい部分です。
この「手」は、
-
手足としての手
-
単なる技能としての手
を直接指しているわけではありません。
日本語では古くから、「手」を
行為を担う人・役割を引き受ける人
という意味で、比喩的に使ってきました。
選手の「手」も、
その延長線上にある用法です。
3章|選手の語源と由来──「手」は人・担い手だった
日本語には、今でも次のような言葉があります。
-
腕利きの手
-
使い手
-
担い手
-
書き手
-
語り手
これらに共通する「手」は、
何かを実際に行う側の人を指しています。
見る人でも、
指示する人でもなく、
現場で動く側です。
この意味を踏まえると、
「選手」という言葉の構造が見えてきます。
選ばれた
行為の担い手
つまり選手とは、
単に「選ばれた人」ではなく、
選ばれて、やる側に立つ人。
この点が、
参加者や観客との決定的な違いです。
4章|歴史の中の選手──いつから今の意味になったのか
「選手」という言葉は、
現在ではスポーツ用語として広く使われています。
この語が確認できるのは明治期以降で、
野球をはじめとする近代スポーツが
日本に定着し始めた時代と重なります。
少なくとも、
近代スポーツ以前の日本語において、
「選手」が競技以外の一般的な役割や立場を指す言葉として
広く使われていたとは言えません。
そのため「選手」という言葉は、
近代スポーツの導入とともに生まれ、
競技に出場し、実際にプレーを担う人を指す語として
定着したものと考えるのが自然です。
5章|選手の使い方と例文
自然な使い方
-
彼は日本代表選手に選ばれた
-
注目の若手選手が台頭してきた
少し不自然な使い方
-
ただ好きで競技をしている人を「選手」と呼ぶ
(※ 選抜されていないため)
コラム|選手・歌手・運転手──「手」は全部同じなのか?
「選手」「歌手」「運転手」。
どれも語尾に「手」がついています。
この「手」は、
すべて同じ意味なのでしょうか。
結論から言えば、
核となる意味は同じで、役割の置きどころが違います。
「手」の共通点──行為を担う人
共通しているのは、
👉 「手」= 行為を実際に行う側の人
という点です。
-
歌う → 歌手
-
運転する → 運転手
-
競技を行う → 選手
いずれも、
見る人でも、指示する人でもなく、
現場で“やる側”に立つ人を指しています。
違い①|歌手の「手」
歌手の「手」は、
歌う技術や表現力と強く結びついています。
違い②|運転手の「手」
運転手の「手」は、
役務や職務を確実に果たすことに重心があります。
違い③|選手の「手」
選手の「手」は、
必ず「選」がついている点が特徴です。
選ばれたうえで、
競技という舞台に立つ担い手。
それが選手です。
まとめ|選手とは「選ばれた役割を担う人」
選手とは、
-
選ばれた
-
競技の場で
-
実際に行為を担う人
を表す言葉です。
「手」とは、
人・担い手・実行者のこと。
だからこそ選手は、
単なる参加者ではなく、
責任と期待を背負って競技の場に立つ存在なのです。
次に「選手」という言葉を見たとき、
ぜひこう考えてみてください。
この人は、何を担う“手”として選ばれたのか?
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