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0章｜導入──「ときめく」は恋の言葉だと思っていない？
「この服、ときめく」
「久しぶりにときめいた」
「推しを見てときめく」
ときめく、という言葉は、今ではすっかり
恋やワクワクした気持ちを表す表現として定着しています。
どこか現代的で、若い言葉のような印象を持っている人も多いでしょう。
しかし、ふと立ち止まって考えると不思議です。
「ときめく」とは、いったい何が起きている状態なのでしょうか。
実はこの言葉、
感情をおしゃれに言い換えた現代語ではありません。
むしろ、日本語としてはかなり古く、
その意味も、今私たちが思っているより幅のあるものでした。
1章｜ときめくの意味（現代語）
まずは、現代日本語としての意味を整理します。
一般に「ときめく」とは、
-
心が弾む
-
胸が高鳴る
-
恋や憧れを感じる
-
期待や喜びで心が動く
といった状態を表します。
共通しているのは、
👉 心が一瞬、強く動くこと。
日常の中で、気持ちが跳ねる瞬間を指す言葉です。
ただし、この意味は
後の時代に整理・定着した現代的な用法です。
2章｜語源と由来──「とき」と「めく」
「ときめく」は、
「とき」＋「めく」
という二つの要素から成る言葉です。
●「とき」とは何か
古語における「とき（時）」は、
-
時間
-
機会
-
時勢
といった意味を中心に使われてきました。
一方で、「胸のとき」「ときが早まる」といった表現から、
鼓動や拍子のような感覚と結びついて捉えられることもある
と解釈されてきました。
ただし、
「とき＝脈拍そのもの」と断定できる明確な辞書記述があるわけではなく、
語感や用法からそう理解されてきた側面があるという位置づけとなります。
●「めく」とは何か
「めく」は、
-
〜のようになる
-
その気配が現れる
-
状態が目立ってくる
といった意味を持つ、古い動詞要素です。
（「春めく」「秋めく」などが代表例です）
▶ ときめく＝どういう意味？
これらを踏まえると、「ときめく」とは、
時や気配が際立つような状態になる
あるいは
心や状況に変化の兆しが現れる
といった意味合いを持つ言葉だと考えられます。
現代語の「胸が高鳴る」という意味は、
この語感が感情表現へと特化していった結果です。
3章｜歴史──古語としての「ときめく」
古語の「時めく（ときめく）」は、
平安時代の文献などで、
-
時勢に乗る
-
栄える
-
人から特別に扱われる（寵愛される）
といった意味で使われていました。
ここで重要なのは、
必ずしも個人の内面的な感情を指す言葉ではなかった
という点です。
「ときめく」はもともと、
状態や立場の変化が際立つことを表す語でもありました。
4章｜「今をときめく」という、もう一つの用法
「今をときめく俳優」「今をときめくブランド」。
この表現の「ときめく」は、
感情を表すものではありません。
ここでの意味は、
👉 時代の中で注目を集め、勢いがあること
です。
● この場合の「とき」
この「とき」は、
鼓動や感情ではなく、
👉 時（とき）＝時代・時勢
を指します。
● この場合の「めく」
「めく」は、
-
状態が際立つ
-
目立って現れる
という意味を持ちます。
つまり、
とき（時代）＋めく（際立つ）
＝時代の中でひときわ目立つ存在
という意味になります。
5章｜まとめ──ときめくは新しそうで、実は古い言葉
「ときめく」は、
現代では恋や憧れを表す言葉として親しまれています。
しかしその背景には、
-
時勢や状態の変化を表す古語としての用法
-
感情表現へと意味が整理されてきた歴史
があります。
新しそうで、実はとても古い日本語。
それが「ときめく」という言葉なのです。
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