水中で見えやすい色・見えにくい色は?──魚の視覚と深度で変わる“海の色の法則”【水中の色大全】

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0章|導入──水中では色の常識がひっくり返る


海に潜ると、世界は一瞬で青く、静かになります。
けれど、この“青い世界”をそのまま海の本当の色だと思うと、少しだけもったいないかもしれません。

水の中では、陸上で信じていた「色のルール」があっという間に崩れていきます。

  • 赤は数メートルで消える

  • 青だけが深くまで残る

  • 黄色は意外と粘る

  • 白はどの深度でも強く目立つ

  • 赤い魚なのに深海では“黒く見える”

  • 青い魚は浅瀬で背景に溶け込む

  • サンゴ礁の派手な魚が捕食されにくいのには理由がある

水中は、光と色がまったく別の法則で動く“もうひとつの世界”。
この記事は、その不思議で面白い水中の色を、科学と生き物の視点から丸ごと紐解く“完全版”です。


なぜ水中では色が変わってしまうのか?

一番の理由は、水が光を選んで吸収してしまうこと。

水は、赤やオレンジのような“長い波長”から順番に光を奪います。
そのため浅い場所でも赤はあっという間に力を失い、くすみ、暗くなり、ついには黒く沈みます。

さらに、水は空気より圧倒的に密度が高いので光が散乱し、減衰し、真っ直ぐ進めません。
届く光が変われば、当然“見える色”も変わります。

深い場所では青しか残らないため、どんな物体も青い濃淡でしか見えなくなってしまう──
これが海の深さで色が変わる根本のしくみです。


水中は“光が削られた世界”

陸上では、物体の色は「どの波長を反射するか」で決まります。
けれど水の中では、その“反射”そのものが成立しにくい場面がたくさんあります。

  • 反射したくても、そもそもその色の光が届いていない

  • 周囲の光が青系に大きく偏っている

  • 水による吸収が強すぎて、色の差がほとんど残らない

魚の種類によっては紫外線まで感じ取れるものもいて、
人とはかなり違う色の世界を見ていると考えられています。

一方で、深い場所では太陽光が極端に弱くなり、
人間の目にはほとんど色の違いがわからなくなっていきます。

水中で見る色は、物体そのものの色というよりも、
“その場所まで届いて残っている光の色” によって決まっています。

海が青く見えるのは、
青い光が特別に強いからではなく、青系の光だけが比較的生き残りやすかった
という物理現象の結果なのです。


だからこそ、魚たちは“水中の色ルール”で進化してきた

水中の色のしくみを知ると、魚たちの体色の意味が次々に結びついていきます。

  • 浅瀬の青い魚は、海の青い背景に見事に溶け込む

  • 深めの海にいる赤い魚は、赤が黒っぽく見えることで姿を隠せる

  • サンゴ礁では背景がカラフルすぎて、派手な色でも逆に迷彩として働く

一部の魚は、紫外線でしか見えない模様を手がかりに、
お互いを見分けたり“会話”したりしていると考えられています。

こうした環境では、「目立つ色・消える色」の関係が、
陸上とはほぼ逆転してしまうことも少なくありません。

水の中の色は、陸上のセオリーだけでは説明しきれない、
“別世界のルール”で動いているのです。


本記事は「水中の色」完全ガイド

ここから先の章では、
水中の色にまつわる疑問をすべて整理し、科学的に、そして読み物として楽しく解説していきます。

  • 水中で見える色・消える色

  • 深度による色の変化

  • 魚の色覚と紫外線の世界

  • 赤い魚が深海に多い理由

  • 青い魚が浅瀬に多い理由

  • 光源による色の違い(太陽光・LED・懐中電灯)

  • 水中撮影の色補正(赤フィルター)

  • 水中で最も目立つ色とは何か?

“海の色のしくみ”がわかると、世界の見え方が一気に広がります。
では、水中の色の旅を始めましょう。


1章|光は水中でどう変わる?──“色が削られる”科学の核心


海の中で色が変わってしまう根本原因は、たったひとつ。
「水が光をまっすぐ通さない」 という物理的な性質です。

水は、空気と比べて圧倒的に密度が高く、光は途中で散らされ、吸収され、弱りながら進んでいきます。
その結果、色ごとに“生き残る距離”が変わり、水中の世界は陸上とはまったく別の姿を見せるのです。


水中は“光に厳しい世界”──赤から消え、青が残る理由

光は波長ごとに性質が異なります。
長い波長(赤・オレンジ)はエネルギーが弱く、水分子に吸収されやすい。
反対に、短い波長(青・紫)は比較的吸収されにくく、遠くまで残ります。

その結果、海では次のような順番で光が消えていきます。

  1. 赤(650nm〜):最弱。浅い場所ですぐ暗くなる

  2. オレンジ

  3. 青(450nm付近):最強。深くまで届く

この“吸収順”がそのまま、水中での 色の見えやすさランキング を決めています。


水の密度は空気の約800倍──光が散乱し、弱りながら進む

陸上では、光はほぼ直進します。
しかし水中では、光は水分子や微粒子にぶつかって散乱し、向きを変え、かなりのスピードで弱まります。

これを引き起こすのが、

  • レイリー散乱(青ほど散らばる)

  • ミー散乱(濁りによって方向が乱れる)

海の中の“チラチラと白っぽい光の揺らぎ”は、この散乱の産物です。

散乱が強く起こるほど、背景は青みを帯び、赤や黄色のような色は輪郭を失っていきます。


水中は“光の減衰マシン”──距離がわずかでも色が激変する

水中で光が弱まる速度は、空気中とは比較になりません。
水深がたった 3〜5m 程度 変わるだけで、次のような変化が起こります。

  • 赤は失われ、茶色〜黒に沈む

  • 黄色はくすみ、緑に近づく

  • 周囲は青みを帯び、全体が寒色寄りに変化

  • 白は青く染まりはじめる

たとえば、水深3mでの“真っ赤なタオル”は、
水深15mでは ほぼ黒い布 に見えるほど。

これは“物体が変化した”のではなく、
反射してほしい光が 届かなくなった だけなのです。


水中は“届いた光だけが色を作る場所”

陸上では、全ての光が届きます。
しかし水中では、色は「物体の色」ではなく “その場に残っている光の色” で決まります。

たとえば──

  • 赤い光が無ければ、赤い物体は赤く返せない

  • 青い光しかなければ、全ての物体は青く染まって見える

  • 白は“全光反射”なので強く見えるが、深い場所では青白く変化

  • 光の届かない深海では、色という概念がほぼ消える

水の中は、光が削られ、色が変質し続ける世界です。
だからこそ、水中の色を理解するには「波長」と「深度」の知識が欠かせません。


2章|水深で色はどう変わる?──光が静かに消えていく“海のグラデーション”


海は、深くなるほど色が少しずつ力を失っていきます。
まるで、光の階段を一段ずつ降りていくように──
赤、黄、緑、そして白までもが姿を変え、最後には“青が中心の世界”だけが残ります。

ここでは、水深ごとに「どの色がどこまで生き残れるのか」を丁寧に見ていきます。


0〜5m:まず“赤”が消える──一瞬で黒へ沈む色

浅い場所でもっとも劇的に変化するのが赤系の色です。

  • 真っ赤なタオル

  • 赤い魚(ベラ・カサゴ)

  • 赤サンゴ

  • 赤いウェアや器材

これらは、水深3〜5mほどで一気に暗い茶色〜黒っぽく見えるようになります。

理由はシンプルで、
赤の波長(650nm付近)が 水中で最も吸収されやすい ため。

この“浅い深度で赤が力を失う”性質が、
深海の赤い魚が 人間には黒く見える 現象の土台にもなっています。


5〜20m:黄色が弱まり、世界は緑〜青の領域へ

赤がほとんど届かなくなると、次に失速し始めるのが黄色です。

  • 黄色はくすんで緑寄りに変化

  • ライムグリーンは比較的粘る

  • 白は青みが強くなる

  • 周囲は全体的に青緑へシフト

この“中層の色変化ゾーン”では、
海の世界が急速に「緑〜青」へと傾き、暖色の存在感がほぼ消えていきます。

釣りやダイビングでも、この深度に入ると
一気に落ち着いた青緑の世界に切り替わる のがわかります。


20〜40m:青が圧倒的に優勢──白も青みを帯びる世界

ここからは、青系の光がほぼ主役になります。

  • 黄はほぼ力尽きる

  • 緑は弱りつつもわずかに残る

  • 白は青白く、冷たい色調に変わる

  • 赤・橙・黄はほぼ黒く見える

光量そのものも大きく落ちるため、
コントラストが下がり、輪郭がふわっと緩む“やわらかい青”の世界が広がります。

写真や動画で青かぶりが極端に強くなるのも、この深度帯からです。


40〜100m:“青のモノクロ”──色の区別がつきにくくなる世界

40mを超えると、太陽光は急速に弱まり、
人間の目では青以外の色の区別がかなり難しくなります。

  • 暖色は黒〜暗色にしか見えない

  • 白も青系に引っ張られる

  • 視界自体が狭くなる

  • ほとんどが“青〜濃紺”のグラデーション

いわゆる、青の濃淡だけで構成された世界

水中ライトを当てると突然色が戻るのは、
“色が消えた”のではなく、光そのものが足りなかっただけです。


100m以上:太陽光がほとんど届かない世界──色の概念が薄れていく

100mを超えると太陽光はわずかしか残らず、
人間の視覚では色の違いがほぼ判別できなくなります。

  • 太陽光はごくわずか

  • 物体の色はほとんど認識できない

  • 生物は自ら発光するか、残光を利用して生活

  • 深海魚が黒・赤・半透明に多いのはこの環境のため

特に、赤い深海魚が黒っぽく見えるのは、
赤い光が存在しないため “赤を返せない” という物理現象によるものです。


水深ごとの“色の生命線”まとめ

  • 0〜5m: 赤が急速に失われる

  • 5〜20m: 黄色が弱る/世界が青緑寄りへ

  • 20〜40m: 青が優勢/白も青みを帯びる

  • 40〜100m: 青の濃淡が中心の世界

  • 100m以上: 太陽光がわずかしか届かず、色の識別が困難

海は、深くなるほど静かに光を奪い、
そのたびに世界の色を塗り替えていきます。


3章|光源が違うと色も変わる──太陽光・LED・ハロゲンで“海の色”は別物になる


水中の色は、水深だけで決まるわけではありません。
実は “どんな光で照らされているか” によって、まったく違う世界が立ち上がります。

太陽光、LEDライト、ハロゲンライト。
この3つは、光の性質が根本から違うため、水中での色の見え方にも劇的な差が出ます。

特にダイビング・水中撮影・釣りでは、光源の違いが“色の正体”に直結します。


太陽光:本来はフルスペクトル、けれど水中では“青系の光だけが生き残りやすい”

太陽光は人間にとって最もバランスの良い光で、
赤・緑・青すべての波長を含む“フルスペクトル”の光です。

しかし──
水中では、その理想的な光が容赦なく削られていきます。

赤は浅瀬で真っ先に力を失う
黄は中層で徐々に弱る
青や青緑の光だけが比較的遠くまで届く

その結果、どんなに快晴の日でも、
水中では 青〜青緑に偏った“生き残り組”の光 だけが世界を照らすことになります。

浅瀬でも赤いものが黒く沈んで見えるのは、
太陽光が悪いのではなく、「水そのものの性質」が原因なのです。


LEDライト:青が強すぎて“寒色世界”が強調される

最近のダイビングライト・アクションカム用ライトの多くはLED光源。
LEDの特徴は、

  • 青成分が強い

  • 赤成分が少ない

  • スペクトルが鋭く偏っている

ということ。

つまり、LEDを水中で使うと、
もともと青い世界がさらに青寄りにブーストされてしまいます。

結果──

  • 赤は復活せず

  • 黄色は冷たく見える

  • 白も青白く転ぶ

  • 全体的に“寒色の強調バージョン”の海になる

LEDライトで撮った水中写真が全体的に“青っぽい”“冷たい”印象になるのは、このためです。


ハロゲンライト:赤を多く含み“色が復活する”古典的名手

LEDに比べて地味に見えるハロゲンライト。
しかし、水中ではこの“古い光”が実はとても優秀です。

ハロゲンライトは

  • 赤成分が非常に多い

  • スペクトルがなだらかで連続的

  • 物体の色を自然に再現しやすい

という特徴があります。

そのため、水中で当てると──
失われた赤・オレンジ・黄色が一気に蘇る。

赤サンゴが色を取り戻し、
青みがかった魚が本来の色に近い姿を見せはじめ、
白も“白そのもの”に戻っていきます。

ダイビング界で長年“ハロゲンの評価が高かった”のは、この理由です。


懐中電灯を当てると色が突然戻る現象の正体

ダイビング中によくある光景──
ライトで照らした瞬間、赤い魚が“急に赤に戻る”。

これは物体が変化したのではなく、

「そこに赤い光が届いたのが久しぶりだから」

です。

つまり、水中ライトとは
深海の“色の復元装置” のようなものです。


水中写真で“赤フィルター”がある理由

水中カメラ用の赤フィルター(RED FILTER)は、
実は“赤色を足している”わけではありません。

正確には、

青すぎる世界を抑え、画像全体のバランスを整えるフィルター

です。

水中は青が過剰なので、
青成分を減らしてあげることで、本来の色に近づきます。
これが赤フィルターの役割。

“赤を足す”のではなく
“青を引く” というのが本質です。


水中の色は、水深だけでなく“どんな光で照らされているか”で劇的に変化します。
次章では、いよいよ 水中で最も目立つ色・最も隠れる色 に踏み込んでいきます。


4章|水中で見えやすい色ランキング──白・蛍光色はなぜ最強なのか?


水中では、色の強さは「色そのもの」ではなく
“どれだけ光を返せるか” で決まります。

そして、深度によって“王者”が入れ替わるのが面白いところ。
ここでは、水中科学にもとづく“本当に見える色”をランキング形式で整理します。


1位:白──水中の“視認性チャンピオン”

水中で最も目立つのは、どの深さでも「白」。

白は、
ほぼ全波長を反射するため、光が残っている限り視認性が極めて高い。

  • 浅瀬:白はそのまま明るく反射

  • 中層:青く染まりつつも強いコントラスト

  • 深場:青白い光として最後まで残る

ダイバーのフィン・ダイビングフロート・ライフジャケットに白が多いのは、
この“どの条件でも見える”という科学的理由から。


2位:蛍光イエロー──深度に強い“高視認性カラー”

蛍光色が水中でよく目立つのは、
単に「明るい色だから」ではありません。

蛍光色は
「吸収した光を、より明るい光として返す(蛍光)」
という性質を持ち、周囲の光が弱くても視認性を保ちやすい特徴があります。

そのため──

・深度が増えて太陽光が弱くなっても比較的明るさを保つ
・青い光が中心になる環境でも“浮くような明るさ”が残る
・背景の青い海と対比して強いコントラストが生まれる

水難救助の装備やダイバー用フロートに蛍光イエローが多いのは、
**「遠くからでも気づいてもらえる色」**として科学的に信頼されているからです。


3位:蛍光グリーン──深度が増しても“埋もれにくい色”

蛍光イエローほどの派手さはないものの、
蛍光グリーンも水中で非常に視認性が高い色です。

・黄成分が弱っても、緑系は比較的残りやすい
・青い環境光と混ざったときにコントラストが生まれやすい
・暗い場所でも“光って見える”ように感じられる

水中撮影用マーカーや、釣具(サビキ糸など)に
蛍光グリーンが採用されることが多いのは、
人間にも魚にも識別されやすい色として機能するためです。


4位:青──“消えない色”だが背景に溶けるため視認性は低め

海で最も残りやすいのは青ですが、
残る=目立つ ではありません。

青は背景の海と同化してしまうため、
“見えやすさ”という意味では上位ではありません。

ただし、

  • 深度が増しても消えない

  • 光量が少ない中でも発色できる

という意味で「持久力最強」の色です。

浅瀬で青い魚が隠れやすいのは、この性質のため。
青は“海そのもの”の色なので、輪郭を消してしまいやすいのです。


5位:黄色──浅場では強いが、中層以降で急に弱る

黄色は浅瀬ではとても目立ちます。
理由は、太陽光中の黄成分が強く、明度が高いから。

ただし──

  • 5〜20mで黄成分が減少

  • 緑や青に負けやすくなる

そのため、水中写真では「黄色がくすんで見える」現象が起きます。

浅瀬限定では強い色ですが、深度が増すほど目立たなくなります。


6位:赤・オレンジ──浅場限定の“短命な色”

赤系は水中ではもっとも弱い色です。

  • 3〜5mで急に暗くなる

  • 10mでほぼ黒

  • 20mで完全に黒い影

視認性の低さは、魚の保護色としてはむしろ“最強”。

深海魚が赤いのは、
「水中では黒く見えるから」という完璧なステルス戦略。

浅瀬では目立ちますが、深度が少し増しただけで役割が真逆になります。


色の強さは“深度×光源×背景”で決まる

ここまでまとめると、
水中での視認性は次の公式で決まります。

視認性 = 波長の残りやすさ × 明度 × 背景とのコントラスト × 光源の性質

そのため──

  • 白はどの要素でも強い

  • 蛍光色は光源が弱くても発光的に見える

  • 青は残るが背景に溶ける

  • 赤は最弱だが“隠れる能力”は最強

色の性質が深度でひっくり返るのが、水中世界の面白さです。


5章|水中で見えにくい色──赤・黒・青が“姿を消す”理由


水中で“見える色”があるなら、当然 “見えにくい色” も存在します。
そしてそのランキングは、陸上の感覚からすると真逆になります。

特に、
赤・黒・青
この3色は、水中で“姿を消す三兄弟”と言ってもいいほど視認性が低くなります。

それぞれの理由を、科学と背景光の違いから見ていきましょう。


赤──水中最弱。光を奪われ、一瞬で黒に沈む

赤は水中で 圧倒的に見えません。

理由は単純で、
赤の波長が水にもっとも吸収されやすい から。

  • 3〜5m:すでに暗い茶色

  • 10m:ほぼ黒

  • 20m:完全に黒

  • 40m以上:存在しない色として扱われる

つまり、陸上では派手でよく目立つ赤も、
海では真っ先に“色が死ぬ”のです。

この性質は、深海の生き物にとっては大きなメリット。

深海の赤い魚=水中では黒く見える=最強のステルス

という進化戦略が成立します。


黒──背景次第で完全に溶ける“輪郭消失色”

黒はもともと光をほとんど反射しない色。
そのため見え方は 背景光との戦い になります。

水中の背景は青〜濃紺が多いため、

  • 黒は“影”として背景に溶ける

  • 輪郭が消えやすい

  • 少し離れると存在がわからなくなる

黒は、水中ではまるで “海に吸い込まれた影” のように曖昧になってしまいます。

深海魚に黒系・赤黒系が多いのはこのため。
光が少ない環境では、黒は最強の隠れ色になります。


青──海そのものの色だから隠れる

青は水中でもっとも残りやすい色。
……なのに、視認性は低いという矛盾を抱えます。

理由は、
海そのものが青だから。

つまり、青は残るのに、
背景と完全に同化してしまう のです。

  • 浅瀬:背景の青に溶ける

  • 中層:青の濃淡しかない世界で輪郭が消える

  • 深場:最後まで残るが、同じ青の中で見分けにくい

浅瀬に青い魚(ソラスズメ・アジ・ブリなど)が多いのは、
単純に「隠れやすいから」。

青は水中の“迷彩色”として非常に優秀なのです。


その他の“消えやすい色”──オレンジ・黄も深度で失速

黄色・オレンジは浅場では明るく見えますが、
深度が増すと急激に弱くなります。

  • 黄 → 緑っぽくくすむ

  • オレンジ → 赤成分が死んで茶色〜黒へ

赤ほど極端ではないものの、
「暖色は深度に弱い」という法則がそのまま当てはまります。


水中の“消える色”をまとめるとこうなる

水中で消えやすい順に並べると──

  1. 赤(最弱)

  2. オレンジ

  3. 黒(反射なし)

  4. 青(背景同化)

水中で“見えにくい色”は、
吸収されやすい波長 × 背景との同化 × 反射率の低さ
の三重構造で決まります。


6章|魚の色覚──魚は人間とは違う“別の色の世界”を見ている


水中で色が変わる理由を理解したら、次に知りたいのは

「魚にはどう見えているのか?」

という視点。

結論から言うと──
魚は人間が見ている世界とは“まるで別の色の世界”を生きています。

私たちが「派手だな」「目立つな」と思っている魚の色は、
魚同士では「ぜんぜん違う模様」「紫外線のライン」「人間には見えない光のサイン」になっていることが多いのです。

ここでは、その“魚の色覚”の面白い秘密をひとつずつ見ていきましょう。


魚の多くは“紫外線(UV)”が見える世界に住んでいる

人間:赤・緑・青の3色(3色型)
魚:赤・緑・青に加えて 紫外線(UV)(4色型)

つまり魚は、
人間より1色多く「色のチャンネル」を持つ生き物です。

紫外線が見えると何が起きるか?

  • 人間には透明に見える魚にも“模様”が見える

  • 魚同士は紫外線のラインでコミュニケーション

  • サンゴ礁の魚の“虹色の輝き”は、魚にとってはもっと鮮明

魚にとって海は、
人間より色を多く使った“カラフルな交信の場”になっています。


浅瀬の魚は“4色型のスーパー視覚”。深海魚はほぼモノクロ

水深が変わると、魚の色覚の性質も変わります。

◎ 浅瀬の魚

→ 色豊かな世界に生きるため 4色型(UV含む)が多い
→ 求愛・縄張り・警戒など“色のコミュニケーション”が発達
→ 派手な模様は魚同士にとっては意味のあるサイン

◎ 深海の魚

→ 光がほぼ無いため 1色型(モノクロ)
→ 明暗(コントラスト)で世界を認識
→ 色を持つ必要がない(だから深海魚は赤・黒が多い)

生きている環境に合わせて、視覚そのものが進化しています。


魚は“青い世界に強い”。青+紫外線の視界が得意

水中では青い光だけが深くまで届きます。

そのため魚の網膜は
青〜紫の短波長に強い構造をしていることが多い。

  • 青い魚は“見えにくい迷彩色”

  • 紫外線の反射で仲間を認識

  • 緑魚・青魚の模様は魚同士では明確に見えている

人間の目では“なんとなく青い魚”にしか見えなくても、
魚同士ではもっと複雑で情報量の多い模様として見えています。


魚の“UVサイン”──人間に見えないインクで会話している世界

サンゴ礁の魚の中には、
人間の目にはさほど派手に見えないのに、
紫外線(UV)の世界ではまったく別の模様をまとっている種が多く存在します。

特に、スズメダイ類を中心に、
一部のベラや小型の群れ魚など、
“UV反射パターン”を持つ例が複数あります。

こうした魚たちは、紫外線を使って

  • 仲間同士の識別

  • なわばりや順位をめぐる威嚇

  • 求愛の合図

  • 危険を知らせる反応

といった、人間には見えないコミュニケーションを行っていると考えられています。

私たちが見ている海は、実は“可視光の世界”にすぎません。
魚たちにはその上に、紫外線で彩られたもう一つの情報レイヤーが広がっているのです。


深海では“青一色の世界”。だから赤い魚が黒くなる

深海に暮らす魚は、
色を見分ける必要がほとんどありません。

生態系が暗闇で成り立つため、
目は明暗に特化し、色の識別能力はほぼ無くなります。

そのため──

  • 赤い魚は深海で黒く見える

  • 深海魚の捕食者も“赤を知覚できない”

  • 赤い体色は「捕食者に見えない」という最高の迷彩色

この世界は、光がほぼ存在しないため、
“色という概念”がほぼ消えます。

深海で赤が多い理由は、進化的に見れば

「赤=見えない色」だったから採用されたカラースキーム

と言えます。


魚の色覚を知ると、海の見え方が一気に変わる

  • 人間に“派手”に見える魚は、魚同士では全然違う模様を見ている

  • 青い魚は浅瀬では最強の迷彩

  • 赤い魚は深海では黒で存在が消える

  • 紫外線の模様で交信する魚も多い

  • 魚の世界は、人間が想像する以上にカラフルで情報量が多い

つまり、“海の色”というのは
人間の目の事情で見えている世界に過ぎません。

魚は魚で、まったく別の色の世界を生きています。


7章|深海で“赤が最強の迷彩色”になる理由──赤=黒のステルススーツ


深海に行くと、驚くほど“赤い生き物”が増えます。
エビ、クラゲ、魚、プランクトン……多くが赤か赤黒い体をしています。

でも実際に水中で見ると、その赤は まったく赤に見えない。
どれも、黒い影のように溶け込んでしまいます。

これは偶然ではなく、深海の光の性質を100%利用した“究極の迷彩戦略”です。


深海では赤い光が存在しない──だから赤は“黒”になる

深海では、太陽光の赤(長波長)は完全に吸収されます。

深度20m:赤はほぼ消える
深度30〜40m:赤はゼロに近い
深度100m以上:赤の概念が存在しない

つまり深海において赤とは、

「反射しようにも、返せる赤い光がそもそも届いていない」

という状態。

赤い体の生き物は、反射する光がないため
完全に黒い影としてしか見えません。

だから深海では赤は“隠れるための色”として最強なのです。


深海の捕食者には“赤が見えない”──色覚の盲点を突いた進化

深海魚の多くは、色を判別する必要がないため
1色型(モノクロ視) です。

  • 青〜緑の短波長しか感知できない

  • 赤い光は存在しない

  • 暗闇では明暗だけを頼りに生活している

つまり、捕食者の目には赤が見えないどころか、
“赤という概念が無い” と言ってもいいほど。

そのため赤い魚は、捕食者の目には

「黒い影のようなノイズにしか見えない」

という圧倒的な有利を手にします。


深海の赤い体色は“光を吸い尽くす黒布”のような仕組み

深海の赤い魚に限って、
色素の構造もまた特別です。

  • 反射率が極めて低い

  • わずかな光も吸収してしまう

  • 透明感のある体でも赤色を帯びる

  • 表層に比べて“くすんだ赤”が多い

これらはすべて、
光を返さない=闇に溶け込むための進化 です。

赤い体色は、深海では
“光を殺す布”のような役割を果たしていると言えます。


水から揚げると赤に戻るのは、光源が変わるから

深海で黒く見える赤い魚を船の上で見ると、
鮮やかな赤に戻っている。

この現象はよく知られていますが、
原因はとても単純です。

赤い光がある世界に戻ったから。

深海では赤が存在しない → 黒い影
陸上では赤い光がある → 赤が反射できる

魚が変化したのではなく、
“使える光”が変わっただけ。

水中ライトで照らした瞬間に色が戻るのも同じ理屈です。


深海の赤は“究極のステルス技術”だった

まとめると、深海の赤はこうなります。

  • 赤い光が存在しない → 赤は黒になる

  • 捕食者の目に赤の情報が届かない

  • 黒い影のように溶け込める

  • 光が弱い環境では黒が最強の隠れ色

  • 赤色素は光吸収が強い=さらに目立たない

つまり、深海における赤とは

「見つからないために最適化された色」

であり、
“ステルス戦闘機の黒塗装”のような存在です。

赤い深海魚が多いのは、
奇抜だからではなく、
環境光に合わせて進化した“最も合理的な答え” だったわけです。


8章|浅瀬では“青い魚”が最強の迷彩になる──背景と完全同化する色の科学


浅瀬の海を泳ぐと、青い魚の多さに驚きます。
ソラスズメダイ、アジ、ブリ、カマス、グルクン、小型ベラ……。

「なんでこんなに青い魚ばっかりなんだ?」

と感じたことがある人は多いはず。
その理由は、浅瀬という環境が、
“青こそが最強の隠れ色”になる条件をすべて満たしているから です。

派手でも目立たず、動いていても見つからない。
青は浅瀬における“究極の迷彩色”でした。


浅瀬は“青い光が圧倒的に優勢”──背景そのものが青い

浅瀬の光環境の特徴は、とにかく青が強いこと。

理由はシンプルで、

  • 赤・黄の長波長 → すぐ吸収される

  • 短波長の青 → 残りやすい

このため、浅場~中層は
**“青い光に満たされた世界”**になる。

つまり魚の体が青いと、
背景の光とまったく同じ色を返す=完全に溶け込む。

これは迷彩として最強レベルです。


青い魚は“輪郭が消える”ように見える──短波長の特性

青い光は、他の色に比べて散乱しやすい。
水の中では“ぼんやり広がる光”になるため、
青い魚の周りだけ輪郭が曖昧になりがち。

  • 青い魚が突然消えたように見える

  • 動いていても輪郭がつかみにくい

  • 背景の青い水と同化しやすい

つまり青い魚は、
背景の“濃淡グラデーション”に自然に溶けてしまうのです。

人間の目にはただの青い魚でも、
海の中では輪郭消失効果が強い“光学迷彩”に近い働きをしています。


浅瀬の魚は“カウンターシェーディング”で上下からも隠れる

ほとんどの青魚は、
背中が青くてお腹が白い
という配色をしています。

これを カウンターシェーディング と言い、人間の軍用迷彩でも採用されている仕組みです。

  • 上から見られる → 背中の青が海に溶け込む

  • 下から見られる → 白い腹が水面の光と同化する

上からも下からも見つかりにくい、
きわめて合理的な体色なのです。


青い魚は“群れで動くとさらに見えない”──揺らぎと同化

アジやイワシなどの群れを見たことがある人なら、
“群れ全体がひとつの光の塊に見える瞬間”を経験したはず。

これは、

  • 青い光が散乱しやすい

  • 動くたびに光が揺らぎのように見える

  • 背景と混ざり“境界線が消える”

という光学効果が重なるため。

青い魚が群れると、
捕食者から見ると“色のない塊”にしか見えなくなる。

浅瀬で青が支配的な理由は、単に背景同化だけでなく、
“動的迷彩”として優れていることにもあります。


だから浅瀬には青い魚が多い──進化的にもっとも合理的な色

浅瀬の環境条件を整理すると、

  • 青い光が圧倒的に優勢

  • 背景が青〜水色のグラデーション

  • 散乱で輪郭が消えやすい

  • カウンターシェーディングと相性抜群

  • 群れで動くと迷彩効果が倍増

  • 捕食者も“青の揺らぎ”に弱い

これらすべてが、青い魚を“見つかりにくい魚”にし、

浅瀬=青い魚が進化的に生き残りやすいステージ

という構図を作り上げています。

人間の「派手=目立つ」という感覚とは逆で、
海の中では青こそが最強の隠れ色。

浅瀬が青い魚であふれているのは、
海の光学が導き出した“自然の答え”だったわけです。


9章|熱帯魚が派手でも目立たない理由──色のカオスはむしろ武器になる


サンゴ礁に降りた瞬間、
海の色は一気に爆発します。

黄色、青、赤、紫、オレンジ、黒のストライプ、ドット……
まるで絵の具をこぼしたような世界。

「これ、絶対捕食されるやつでしょ…?」
と思ってしまうのは、人間の陸上感覚です。

実際の水中では、
あの派手さこそが“生存戦略として最適解” になっています。


サンゴ礁は“色の密林”──背景が派手すぎて迷彩になる

サンゴ礁の背景は、

  • 赤いサンゴ

  • 青い水

  • 緑の光の散乱

  • 黄色い砂

  • 光の揺らぎ

  • 陰影のパッチワーク

……という、色の洪水みたいな環境。

つまり、背景そのものが“カオスの色パターン”なので、

派手な色=むしろ背景に溶ける色

という逆転現象が起こります。

珊瑚の模様に見える、
岩の陰影と同化する、
光の揺らぎと一致する……

熱帯魚の派手な模様は、
この複雑な背景の中で 迷彩として完璧なのです。


派手な模様は“輪郭を壊す”──捕食者が形をつかめない

自然界の迷彩で一番大事なのは、
「輪郭(アウトライン)を壊す」こと。

熱帯魚の

  • 斑点

  • 縞模様

  • 2色の強いコントラスト

  • 光沢

  • グラデーション

これらはすべて、輪郭をバラすための模様になっています。

捕食者が見ると、

  • 胴体と尾びれの境界がわからない

  • どっちが頭なのかわからない

  • ただの模様の塊にしか見えない

という状態になる。

人間には派手に見えても、
捕食者にとっては「どこまでが魚なのかわからない」という“高性能迷彩”なのです。


魚は紫外線(UV)を“感じ取れる種が多い”──人間には見えないサインが隠れている

熱帯域にすむ魚の中には、
紫外線(UV)を感知できるタイプの視覚(4色型に近い仕組み)を持つ種がいることが知られています。

そのため、彼らの体表には

  • 人間にはほとんど見えないライン

  • UVを反射しやすい細かなスポット

  • 紫外線下でだけ浮かび上がる模様

といった“隠れたサイン”が含まれている場合があります。

これらは、同種間でははっきり認識できる一方で、
外敵には目立ちにくい可能性がある
と考えられています。

派手な体色が水中で機能し続ける背景には、
こうした**「人間には見えない色のレイヤー」**がある、というわけです。


派手さそのものが“強さ”のサインになる魚も多い

サンゴ礁には、
「派手である=私は強い/毒がある/縄張りがある」
という“誇示色(アポセマティズム)”が多く存在します。

例えば、

  • 毒を持つ魚

  • 咬む能力が強い魚

  • テリトリー性がある魚

こうした種類は、むしろ

派手であるほうが生存率が高くなる。

捕食者に
「面倒くさい相手」
と思わせる方が効果的だからです。


熱帯魚の派手さは“生存戦略の集合体”

つまり熱帯魚の派手な色は、

  • 背景が派手 → 迷彩になる

  • 輪郭を壊す模様 → 姿がつかめない

  • UV模様 → 仲間には見えるが敵には見えない

  • 誇示色 → “強い”印象を与える

  • 環境光が青に偏る → 派手でも色が沈む

これらの要因が複合して成立している“総合的な戦略色”。

私たちには「美しい観賞魚」に見える模様も、
魚たちにとってはすべて “生き残るための設計” なのです。


10章|実践編:水中撮影・釣り・ダイビングで“色を味方にする”


ここまで「水中で色がどう消えるか・どう変わるか」を科学的に見てきましたが、
実はこの知識、実生活の“水に関わる活動”でめちゃくちゃ役立ちます。

水中写真も、釣りも、ダイビングも、
「色の仕組み」を知っているだけで一段上の世界が見えてきます。

ここでは、実際に使える“色の選び方”をまとめます。


水中写真(カメラ)──赤は消える、青は残る。だから“光を足す”が正解

水深10〜20mになると、
赤・オレンジ・黄色の順に光が減っていき、青〜緑だけが残ります。

そのため、赤い魚や赤いサンゴは
黒っぽく沈む/くすむ/色が抜ける

水中カメラで色が正しく写らない理由は、
カメラの性能ではなく 光が存在しないからです。

✔ 対策:ライト or ストロボを使う

水中写真の基本戦略はこれ。

「失われた赤を、人工光で取り戻す」

  • 赤いサンゴ

  • 黄色い熱帯魚

  • オレンジのイソギンチャク

これらは、強めのライトを当てるだけで
水中とは思えないほど色が復活します。

✔ 赤フィルターは“浅場限定”

赤フィルターを使えば赤成分を補正できますが、
効果があるのはせいぜい 〜10m程度

20mを超えると、
そもそも赤の光がゼロなのでフィルターでは補えません。


釣り──“見える色=釣れる色”ではない。水質×深度×魚の視覚で変わる

最も誤解しやすいポイントがこれ。

魚に見える色は、人間に見える色と違う。

水深・水質・濁り・時間帯で、
ルアーや餌の色の見え方は劇的に変わります。

✔ 基本ルール:深いほど青〜緑だけが残る

  • 赤 → すぐ黒くなる

  • オレンジ → 早く消える

  • 黄色 → やや残るがくすむ

  • 緑 → 強い

  • 青 → 最後まで強い

  • 白 → 光を拾って意外と良い

  • 黒 → 輪郭が強調される

✔ 海の“青い世界”では青はむしろ目立たない

青は最後まで残りますが、
背景も青いのでカモフラになるという逆転現象が起きます。

青い魚(アジ、サバ)が捕食されにくい理由と同じですね。

✔ 白・メタリックは“光の揺らぎ”を真似できる最強カラー

水中では太陽光が揺らぎながら届くので、
白や銀は “光のきらめき”に見える

多くの魚が白系のベイトを追う理由はこれ。


ダイビング──安全のための色選びは“赤はNG、白・蛍光が最強”

「もしバディとはぐれたら?」というテーマでも
色の知識は本気で役立ちます。

✔ NG:赤いフィン・赤いマスク・赤いグローブ

赤は水深5〜10mであっという間に消え、
黒い物体としてしか見えません。

バディに発見されにくい色の代表。

✔ OK:白・蛍光色(イエロー、ライム、シアン)

これらは光を拾いやすく、
どの深度でも比較的“輪郭が残る色”。

特に白は

  • 光の反射が強い

  • 影でもコントラストが残る

  • 青い背景と区別しやすい

という理由から、
安全色としてダイバーの定番になっています。

✔ 青は逆に“消える”ことも多い

なぜなら、背景が青だから。

暗がりや深場では、青は自然に溶けてしまい、
バディに見つけてもらいにくくなります。


サンゴ礁の色が美しいのは“浅い光”のおかげ

サンゴ礁で色が爆発する理由は、

  • 深さが浅い(1〜10m)

  • 太陽光が豊富

  • 赤・黄・緑などの波長がすべて届く

という特殊条件が整っているから。

逆に20mを超えると、
サンゴを含めて多くの色が沈黙し始めます。


“見える色”を理解すると、水の世界は全く違って見える

水中世界は、

  • 光の吸収

  • 散乱

  • 深度

  • 水質

  • 魚の視覚

これらのバランスで色が変わる、
地上とはまったく別次元の世界。

だからこそ、

  • 釣りのルアーカラー

  • ダイバーの装備色

  • カメラの撮影設定

  • 水族館の照明演出

すべてに“科学的な最適解”が存在しているのです。

知ってしまえば、
海の世界が「色の理不尽」に見えるどころか、
むしろ“ロジック通りに色が動く場所”に変わっていきます。


11章|まとめ──水の色とは“光が失われていく現象”である


海の中で起きていることを、一言で表すならこうなります。

水中とは“色が消えていく世界”である。

赤から順に、
オレンジ、黄色、緑…と波長が次々に吸収され、
最後に青だけがしぶとく残る。

私たちが知っている“色の世界”は、
実は地上の空気の中でしか成立していない特殊環境で、
水中はまったくの別ルールで動いています。

だからこそ、水中の色はときに“直感の逆”に見えるのです。


赤は消える、青は残る──水中の色は光の物理で決まる

水中では wavelength(波長)の短い光ほど生き残り、
波長の長い光ほど早く死んでいきます。

  • 赤(波長が長い) → 数メートルで消失

  • 青(波長が短い) → 深場でも残る

この“光の選別”が、水中の世界に独特の色階層を作り、
深度によって世界が青く沈んでいく理由です。


魚は人間と違う世界を見ている──紫外線(UV)が“色”として見える生き物たち

水中の主役である魚たちは、種類によっては 紫外線(UV)をとらえる視細胞 を持ち、人間とは異なる色覚を備えています。
さらに、青や緑の波長に強い一方で、赤い光は深度が増すほどほとんど届かなくなるため、赤の情報は水中では急速に弱まります。

こうした性質の組み合わせによって、海の中では地上とはまったく違う“色のルール”が成立します。

たとえば、

  • 赤い魚が深場で暗く見える(光が届かないため)

  • 青い魚は背景の海と一体化して見えやすい

  • 熱帯魚の派手な体色が、実は迷彩として機能する場合がある

  • 人間には見えない“UV模様”を仲間同士で使う種もいる

といった現象が起きます。

地上の感覚で見ると「派手」に見える魚でも、
彼らにとっては “水中に最適化された見え方” をしているだけなのです。

言い換えると──
魚の世界は、人間には存在しない色や模様が満ちている。
水中の色の戦略は、私たちの常識とはまったく違うルールで動いています。


水は“色を奪う”が、魚は“色で生きる”──この矛盾が海を豊かにする

水中は、色を奪う環境です。

しかし魚は、その制約を逆手に取り、

  • 黒く隠れる“赤い体色”

  • 輪郭を壊す“派手な模様”

  • 敵に見えない“UVサイン”

  • 背景と同化する“青の体色”

といった、複雑で巧妙な“色の戦略”を進化させてきました。

色が失われる世界だからこそ、
色をどう扱うかが“生き残る技術”そのものになったわけです。


水中の色を理解すると、世界の“見え方”が変わる

水中撮影では赤を光で取り戻し、
釣りでは白・銀・緑を戦略的に使い、
ダイビングでは白や蛍光を安全色として選ぶ。

水中の色ルールを知っているだけで、
私たちの行動は劇的に最適化されます。

海はただ青いだけの場所ではありません。
そこには

  • 光の物理

  • 生物の視覚

  • 背景環境

  • 色の進化史

すべてが絡み合ってできた“色の別世界”が広がっています。

その世界を知るということは、
海を見る目が、永遠に変わるということです。


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