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第0章|導入──「同じ色なのに、違う色?」という不思議
照明の下では同じに見えた2枚の布。
でも外に出た瞬間──「あれ、こっちだけ青っぽい?」。
誰もが一度は経験したことがあるこの現象、
実は**メタメリズム(metamerism)**と呼ばれる“色の錯覚”なんです。
本当は違う色なのに、なぜか同じに見える。
逆に、同じものでも照明を変えるだけで違って見える。
そんな不思議な現象を引き起こすのは、人間の“目の仕組み”そのもの。
脳の思い込みではなく、私たちの視覚が持つ生理的な限界なのです。
第1章|メタメリズムとは?──異なる光が「同じ色」に見える現象
メタメリズムとは、
光の波長構成(分光分布)が異なるのに、同じ色として知覚される現象のことです。
たとえば、印刷物の「赤」とモニターの「赤」。
それぞれの光はまったく違う波長の組み合わせを持っています。
それでも私たちの目には、ほぼ同じ“赤”に見えることがあります。
その理由は、私たちの網膜にある3種類の**錐体細胞(すいたいさいぼう)**の働きにあります。
-
L錐体(赤に反応)
-
M錐体(緑に反応)
-
S錐体(青に反応)
この3種類のセンサーが感じた信号を組み合わせ、
脳が「色」として再構築しているのです。
ただしこの仕組みには弱点があります。
もし異なる光でも3種類の錐体が同じ割合で刺激されると、
私たちには同じ色にしか見えなくなってしまうのです。
これがメタメリズムの正体です。
第2章|視覚による現象か?脳による錯覚か?──答えは“目の限界”
「色の錯覚」と聞くと、脳が勘違いしているように思うかもしれません。
でも、メタメリズムは脳の錯覚ではなく、目の構造による情報の限界で起きています。
👁️ 光の情報を“3つに圧縮する”目の仕組み
自然の光には無数の波長が含まれています。
けれど私たちが識別できるのは、L・M・Sの3つの信号だけ。
つまり、無限の光の情報をわずか3つの数値に圧縮しているのです。
そのため、異なる波長の光でもこの3つの信号が同じ組み合わせになれば、
脳には同一の“色情報”として伝わります。
🧠 脳は「届いた情報をそのまま信じる」
脳は、目から届いた信号をもとに「赤い」「青い」と判断します。
もし2つの光源から同じ信号が届けば、脳にとっては同じ色。
つまり、脳がだまされているわけではなく、
目が見分けられない構造をしているということなのです。
第3章|日常の中のメタメリズム──印刷・照明・デジタルの世界で
この“同じに見える”現象、実は私たちの生活のあちこちで起きています。
💡 印刷とモニターの色が違う
印刷物は「反射光」(CMYK)、モニターは「発光」(RGB)で色を表現します。
仕組みはまったく違うのに、設計次第で“同じ色”に見せることができます。
ただし、照明を変えると微妙なズレが生まれます。
これが「印刷と画面で色が違う」と感じる主な理由です。
💡 布地や塗装の色ズレ
屋内では同じに見えたのに、屋外に出ると違って見える。
これは照明のスペクトル(波長構成)の違いで起こる「照明メタメリズム」です。
蛍光灯やLED、太陽光など、光の性質が変わると見え方も変わります。
💡 カメラやスマホの色再現
デジタルカメラのセンサーもRGBの3色で光を捉えています。
異なる光でも“自然な色”に見えるのは、
カメラが人の目と似た仕組みで信号を再現しているからです。
つまり、カメラにも小さなメタメリズムが潜んでいるのです。
第4章|3種類のメタメリズム──見え方の違いで分類される
種類 | 原因 | 例 |
---|---|---|
照明メタメリズム | 光源のスペクトルが違う | 太陽光と蛍光灯で布の色が変わる |
観察者メタメリズム | 個人の視覚特性・年齢差 | 人によって色の印象が違う |
幾何メタメリズム | 見る角度や反射の違い | メタリック塗装やパール塗料など |
印刷やデザインの現場では、
こうした違いを減らすために**標準光源(D50など)**で色を確認します。
「昼の太陽光」「蛍光灯」「LED照明」──
光が変われば、世界の“色”の姿も変わってしまうのです。
第5章|色の恒常性との違い──錯覚と補正の真逆関係
似た現象に「色の恒常性(Color Constancy)」があります。
どちらも“同じに見える”という点では似ていますが、
働き方はまったく逆です。
比較項目 | メタメリズム | 色の恒常性 |
---|---|---|
起こる場所 | 目(網膜)中心 | 視覚全体(脳を含む) |
原理 | 異なる光が同じ刺激になる | 照明を補正して同じ色に見せる |
性質 | 生理的・物理的な現象 | 認知的・心理的な現象 |
例 | 印刷とモニターが同じ赤に見える | 白い紙が夕焼けでも白く見える |
👉 メタメリズム:目の限界による「見かけ上の一致」
👉 色恒常性:脳の補正による「安定した知覚」
同じ「錯覚」でも、
片方は“物理的に区別できない”ことで起こり、
もう片方は“脳が補正してしまう”ことで起こるのです。
▶併せて読みたい記事 色の恒常性とは?脳が行う色補正の仕組みをわかりやすく解説
第6章|印刷・デザインでの注意点──“同じ色”を作る難しさ
印刷や塗装の現場では、このメタメリズムを理解しておくことが大切です。
なぜなら、同じデータでも光源や素材によって見え方が変わるからです。
主な対策としては次のようなものがあります👇
-
標準光源(D50)で色を確認する
-
分光測色計で反射率を数値化する
-
ICCプロファイルでRGBとCMYKのズレを管理する
-
同一素材・同一インクで再現性を確保する
これらはすべて、「メタメリズムの影響を抑えるためのカラーマネジメント技術」です。
完全に防ぐことはできませんが、理解して設計すれば、色の再現精度を大きく高められます。
第7章|まとめ──“同じ色”とは何か?
メタメリズムは、
人間の目がどのように“世界の色”を見ているのかを教えてくれる現象です。
それは脳の勘違いではなく、
3種類の錐体しか持たない私たちの視覚構造が生み出す、自然な限界。
同じように見える色の中には、
実はまったく違う光の世界が隠れています。
印刷・デザイン・写真──
すべての「色を扱う仕事」は、
この“見かけの一致”と向き合う科学でもあります。
メタメリズムを知ることは、
「色を見る目」をもう一段深く磨くことにつながるのです。
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