御納戸色とは?江戸時代のトレンドカラーの意味・由来・歴史を徹底解説

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第0章|御納戸色とは?江戸時代のトレンドカラー


🟦 今では聞かないけど江戸では大人気だった色

「御納戸色(おなんどいろ)」という名前、聞いたことありますか?
現代ではほとんど耳にしない和色名ですが、江戸時代には庶民から武士までが愛した流行色でした。
渋みを帯びた藍染めの青緑で、落ち着きと品格を感じさせる色合いが“粋”とされ、江戸の町を彩っていたのです。


🟦 派手な色が禁じられた江戸で輝いた「渋い藍」

江戸時代は奢侈禁止令によって派手な色が制限され、町人文化の中で渋みのある色が人気に。
御納戸色は華美でないのに洒落て見えるとして、法被・半纏・羽織・裃・浴衣・風呂敷など、あらゆる衣類や布製品に取り入れられました。


🟦 名前の背景にある江戸の暮らし

「御納戸」というのはもともと武家屋敷や江戸城の収納部屋や役職名から来た言葉。
江戸の暮らしや建物の文化そのものが色の名前になっているのが御納戸色の面白さです。
現代では使う機会も減りましたが、この色を知ることは江戸のファッションや価値観をのぞく小さな歴史旅でもあります。


第1章|御納戸色の由来と意味|なぜ部屋の名前が色名に?


🟦 納戸=収納部屋。その名前が色に?

「納戸(なんど)」は、今でも和室の奥にある収納部屋を指す言葉。
でも、なぜこの“ただの部屋の名前”が色名になったのでしょうか?
江戸時代、納戸には衣服や調度品が整然としまわれ、布張りの棚や幕には藍染めの落ち着いた布が多く使われていました。
部屋の暗がりと藍の渋さが重なり、この青緑がかった深い藍を「納戸色」と呼ぶようになったという説があります。


🟦 「御」がついて格上げされた色名

武家屋敷や城では、納戸は単なる収納ではなく、格式を象徴する空間でした。
御納戸役という役職もあり、ここで扱われる衣服や布は高級な染物ばかり。
「御」をつけた「御納戸色」は、藍染の中でも特に品格ある色名として扱われたのです。


🟦 色そのものの特徴

御納戸色は、藍染の鮮やかさを抑えた渋い青緑色
光の下では深みを増し、屋内では控えめな印象になる絶妙な色調でした。
江戸っ子の美意識「派手じゃないけど洒落ている」を象徴する色で、羽織・裃・風呂敷などに幅広く使われたのです。


第2章|江戸文化と藍染ファッション|庶民も武士も愛した御納戸色


🟦 贅沢禁止令が生んだ「渋い色ブーム」

江戸時代、幕府はたびたび奢侈禁止令(しゃしきんしれい)を出し、庶民や町人が派手な色や高級品を身に着けるのを制限しました。
その結果、鮮やかさを抑えた落ち着いた色合いが“粋”とされる文化が花開きます。
御納戸色のような深い藍や渋みのある青緑は、華美ではないのにおしゃれで品がある色として人気になりました。


🟦 藍染の発達と江戸の町の風景

江戸時代中期から後期にかけて藍染技術は飛躍的に進歩し、
町人や農民でも手軽に藍染の衣服を楽しめるようになります。
御納戸色は藍の中間〜濃色の絶妙なトーンで、町のあちこちでこの色の着物や帯、風呂敷が見られました。
庶民の生活に染み込みつつも、武家の裃や羽織でも用いられ、身分を問わず愛された江戸のベーシックカラーとなったのです。


🟦 浮世絵にも描かれた「御納戸色の町」

浮世絵師の作品を見ても、町人や職人、遊女などの衣服に渋い藍が多く描かれています。
その色合いは、まさに御納戸色をはじめとする藍のバリエーション。
絵の中の江戸の町は、華やかなのに全体として落ち着きのある色調で描かれ、“粋”の価値観を物語っています。


第3章|御納戸系の派生色の世界


🟦 江戸の色彩文化を映す御納戸系

御納戸色は江戸時代を象徴する渋い藍色ですが、そこからさらに細かいニュアンスを表現した派生色がいくつも生まれました。
江戸の染色文化は、わずかな色の違いを言葉に落とし込む繊細さが特徴。
御納戸系の名前をたどると、職人の感性や文化の背景まで見えてきます。


🔹 御納戸色(おなんどいろ)

藍染めの定番色で、暗い青緑系の深みのある色。
華美ではないのに粋でおしゃれとされた江戸時代のスタンダード。
町人から武士まで幅広く支持された江戸文化の象徴。


🔹 御召御納戸(おめしおなんど)

高級織物「御召縮緬(おめしちりめん)」に染められた御納戸色。
将軍や上級武士の礼服に多用され、格調高い御納戸色として知られる。


🔹 鉄御納戸(てつおなんど)

鉄のように黒みが強い深藍色。
渋さと重量感があり、男性向けの装いに好まれた。
江戸後期の“粋”をさらに追求した色名。


🔹 錆鉄御納戸(さびてつおなんど)

錆びた鉄を思わせるさらに深く暗い藍色
「錆」のニュアンスを足すことで古色や枯れた趣を表現し、
渋好みの江戸文化を象徴するカラー。


🔹 錆御納戸(さびおなんど)

鮮やかさをさらに抑えた落ち着きのある藍色。
「錆」がつくことで“控えめで格好良い”印象を強調した色名。


🔹 藤御納戸・藤納戸(ふじおなんど/ふじなんど)

紫味を帯びた御納戸系。
女性の小袖や帯、上品な装いに取り入れられ、柔らかく優雅な印象を持たせる。


🔹 高麗納戸(こうらいなんど)

朝鮮経由で伝わった染色技術や織物をイメージした古称。
輸入文化の影響を色名に残した歴史ある言葉。


🔹 納戸茶(なんどちゃ)

茶味が加わったくすんだ青緑色。
媒染剤や染めの工程で出る自然な茶系の風合いをそのまま名前にした色名。


🟦 洗練された色名文化

御納戸系の色名は、

  • **素材(鉄・錆・藤・茶)**の質感

  • **文化(高麗・御召)**の格付け

  • 職人の感覚的な表現
    が融合した江戸独特の色彩表現です。
    ほんのわずかな色調の違いに名前を付けることで、
    江戸の人々は「粋」を楽しみ、色を身分や趣味のステータスとして楽しんだのです。


第4章|「錆」の意味とわびさび文化


🟦 錆はただの金属のサビじゃない

江戸時代の色名で「錆」がつく場合、それは単に金属のサビの色を写しただけではありません。
「錆」と名付けられた色は、元の色より暗く、くすんだ渋さを帯びた色を意味していました。
鮮やかさを抑えることで落ち着きを感じさせる色は、“派手すぎず控えめなのに美しい”という江戸の粋に通じるものだったのです。


🟦 寂(さび)と錆(さび)の言葉の重なり

日本文化における「わび・さび」で用いられる「さび」という言葉は、「錆びる=古びる」という語感とも深くつながっています。
茶道や俳句の世界では、時間の経過によって風合いが増すことに価値を見出し、「寂(さび)」という美意識が育ちました。
「錆御納戸」や「錆鉄御納戸」といった色名は、史料上は“御納戸色をよりくすませた暗色”を示すものですが、後世から見ればそこに古色や枯淡の趣といった感覚が重なって見えるのです。


🟦 わびさびと江戸の色彩感覚

茶の湯や俳諧、庭園美術などで培われた「わび・さび」の価値観は、江戸時代の人々の色彩感覚とも響き合っていました。
御納戸系の色名に「錆」「鉄」「藤」「茶」などの言葉を重ねることで、

  • 錆=くすんだ渋み

  • 鉄=重厚さや強さ

  • 藤=紫がかった上品さ

  • 茶=自然の風合い
    といったニュアンスを持たせることができます。

こうした名付けは、当時の文献に思想的説明が残っているわけではありませんが、江戸の人々が色を単なる視覚的印象だけでなく、文化や趣味の延長として楽しんでいたことをうかがわせます。


第5章|御納戸色は流行色だった


🟦 江戸後期の色見本帳に見られる御納戸色

江戸後期に作られた染色見本帳や古文献には、「納戸色」や「御納戸色」の名前が登場することがあるようです。そうした記録から、当時の染織文化においてよく知られた色のひとつだったと考えられています。武家装束や庶民の生活道具など、多方面で扱われていた可能性が高いとされています。


🟦 男性衣装や風呂敷に広まったとされる御納戸色

御納戸色は、派手さを抑えながら洒落て見える色として人気があったと伝わります。羽織や裃のほか、帯や裏地、庶民の暮らしに欠かせない風呂敷にもよく使われていたとされ、実用性とおしゃれの両面で重宝された色だったようです。


🟦 武士から町人まで愛好された可能性

「御召御納戸(おめしおなんど)」のように格式の高い染めは武士や上級層に選ばれる一方、町人の法被や半纏にも御納戸系が使われていたとも言われます。身分を超えて共有された“控えめで粋”な美意識を映す色合いだったと考えられます。


🟦 浮世絵に描かれた町の色調

広重や歌麿といった浮世絵師の作品にも、落ち着いた藍や青緑系の衣装がしばしば見られます。必ずしも「御納戸色」と明記されているわけではありませんが、近い色合いとして描かれた可能性があります。絵の中に表れる色調からも、御納戸色が江戸の風景や人々の装いと深く関わっていたことがうかがえます。


第6章|洋装化とともに消えた和色名


🟦 衣類文化に根ざした色名だった

御納戸色は、もともと布や衣服を染めるための色名でした。
江戸時代の和色名は、生活の中で日常的に目にする着物や布製品から生まれた名前が多く、御納戸色もまさにその代表例です。
しかし、明治以降の急速な西洋化で、人々の衣類の中心は和装から洋装へと移り、
こうした和色名は日常の中で使われなくなっていきました。


🟦 化学染料と標準色の普及で名前が不要に

19世紀後半から化学染料が広まり、より多様で鮮やかな色が大量生産できるようになります。
さらに20世紀には、PANTONEやRGBなどの国際的な標準色体系が確立され、
「御納戸色」のように文化や暮らしの背景を持つ色名は工業化された社会では役割を失ったのです。


🟦 「納戸」という部屋そのものも消えた

江戸時代の住宅にあった納戸部屋も、近代以降の洋風住宅にはほぼ見られなくなりました。
部屋の名前が生活から消えると、その色名も自然と忘れられていったのです。
御納戸色はまさに「暮らしがあって初めて生きる色名」であり、文化の変化とともに姿を消した言葉なのです。


🟦 現代での御納戸色の存在

現代では、着物や浴衣、和装小物、インテリアやグラフィックデザインの分野で、
「和色」として御納戸色が再評価されています。
忘れられた名前だからこそ、江戸文化の象徴としての価値が高まり、
古典的なデザインや歴史の魅力を伝えるキーワードになっているのです。


第7章|まとめ|御納戸色で江戸の粋を知る


御納戸色(おなんどいろ)は、江戸時代を象徴する渋い藍色です。
その名の由来は、武家屋敷や城にあった「御納戸」という部屋や役職にあり、
暮らしの文化や身分制度、価値観までも映し出す色名でした。
江戸の町では、御納戸色は武士の礼装から庶民の日用品まで幅広く浸透し、
「派手じゃないのにおしゃれに見える」粋のセンスを表すスタンダードカラーだったのです。

やがて明治の洋装化や化学染料の普及で、
こうした和色名は日常から姿を消し、「御納戸」という部屋そのものも近代住宅から消えました。
しかし、現代では伝統色として再評価され、着物やデザインの世界で江戸文化の魅力を語るキーワードとして注目を集めています。

御納戸色を知ることは、単なる色名の知識にとどまらず、
日本の美意識・暮らし・歴史を色で読み解く小さな旅でもあります。
忘れられた色名をたどることで、江戸の町の息遣いや粋なファッションセンスが鮮やかによみがえるのです。


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