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第0章|光は脳が作る? 人は“そのまま”見ていないという錯視の真実
世界は本当にその色で見えているのか?
私たちは毎日、当たり前のように世界を「見て」います。
青空は青く、木々は緑に、街のネオンは赤や黄色に光っている──。
でも、その色や形は本当に光そのものなのでしょうか?
日常に潜む錯覚の不思議
例えば、こんな経験はありませんか。
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同じ色の紙でも、昼間は白く、夕方は黄みがかって見える
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グレーの図形が、背景によって黒く見えたり白く見えたりする
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遠くの建物は小さく見えるのに、実際には手前の家と同じ大きさ
これらはすべて錯覚です。
光そのものは変わっていないのに、脳が勝手に補正して「世界をこうだ」と決めつけています。
光を“感じる”科学のはじまり
この「人は光をそのまま見ていない」という事実を、
19世紀に科学として初めて示したのがヘルマン・フォン・ヘルムホルツでした。
彼は単に光を研究しただけでなく、
**「人間の感覚そのものを測定・理解しよう」**とした初期の科学者です。
その研究は、視覚の錯覚や色彩心理を説明する土台となり、
後に心理学・デザイン・色彩理論にまでつながっていきます。
第1章|ヘルムホルツ登場の背景──光学が“見る仕組み”を解く科学へ進化した時代
物理学から心理学へ──科学の視線が変わる時代
19世紀は、光の研究が大きく進んだ時代でした。
ニュートンは17世紀に光をプリズムで分解し、白色光がさまざまな色の光の集合であることを示しました。
その後、18世紀にはホイヘンスやヤング、フレネルらが波動としての光を解明し、
さらに19世紀中盤にはマクスウェルが光を電磁波として統一します。
こうした光学の進歩は、物理学の枠の中で「光そのもの」を追いかける研究でした。
しかし、ある科学者たちはふと疑問を抱きます。
「光は理解できた。でも、人間はその光をどうやって“見て”いるのだろう?」
この疑問が、物理学から生理学・心理学への橋渡しとなります。
人の感覚を科学的に扱う時代が、まさにこの頃に始まりました。
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医学と光学の交差点に現れたヘルムホルツ
そんな時代に登場したのが、医師でもあり物理学者でもあった
**ヘルマン・ルートヴィヒ・フェルディナント・フォン・ヘルムホルツ(Hermann Ludwig Ferdinand von Helmholtz)**です。
彼はドイツで生まれ、医学生としてキャリアをスタートしました。
血流や神経の伝導速度を測るなど、生理学的な実験を得意とし、
次第に**「感覚を物理学的に測る」**という新しい領域に踏み込みます。
19世紀の科学は、まだ「心」や「感覚」を曖昧に扱っていました。
ヘルムホルツはそれを、定量化・実験・理論化の対象に変えた人物です。
つまり、彼は物理学と心理学の中間に位置する新しい科学を切り拓いたのです。
光学が“見る科学”から“感じる科学”へ
この時期の科学の大きな変化は、
光そのものの研究から、光を受け取る人間側の研究へのシフトでした。
-
光がどう進むか → 物理学
-
光をどう感じるか → 生理学・心理学
ヘルムホルツは、この視点の転換を19世紀に最初に示した科学者の一人でした。
ここから、錯覚や色彩心理の研究へとつながる道が開けていきます。
第2章|ヘルマン・フォン・ヘルムホルツとは? 感覚を数値で測った“視覚科学”の先駆者
医師として出発した科学者
ヘルマン・ルートヴィヒ・フェルディナント・フォン・ヘルムホルツ
(Hermann Ludwig Ferdinand von Helmholtz, 1821–1894)は、
19世紀ドイツを代表する科学者です。
彼はもともと医学生としてキャリアをスタートしました。
当時の医学は、血液循環や神経伝達などの仕組みをようやく解明しはじめた段階で、
まだ人体の働きは謎に満ちていました。
そんな中で、若きヘルムホルツは**「目に見えない現象を、測れるものにする」**という姿勢を貫きます。
数値で世界を理解する姿勢
ヘルムホルツは、実験と測定を徹底的に重視する科学者でした。
-
神経の伝導速度を世界で初めて測定
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眼球の焦点調節(調節力)を解明
-
視覚や聴覚の反応を、物理学の法則に沿って説明
これらの研究は、単なる生理学の枠を超え、
**「人間を物理学の延長で理解する」**という新しい科学の形をつくりました。
たとえば、彼が考案した**検眼鏡(オフサルモスコープ)**は、
医療現場で今も使われる目の観察器具であり、
彼の「感覚を測定する」という理念の象徴といえます。
物理学者でもあり、心理学の先駆者でもあった
ヘルムホルツは物理学にも深く関わりました。
光学・音響・熱力学といった領域に足跡を残しつつ、
最終的には**「人は世界をどう感じるか」**に焦点を当てます。
この視点の転換が、後に無意識的推論や錯覚の科学につながります。
つまり彼は、物理学者でありながら心理学の土台を築いた人物でした。
19世紀後半、彼の学問は**「生理学と心理学をつなぐ橋」**として位置づけられ、
ゲシュタルト心理学や現代の神経科学への道を開くことになります。
第3章|ヤング=ヘルムホルツの三色説とは? 色は脳が作り出す“知覚”の世界だった
三色説が示した、色は“脳がつくる”という真実
ヘルムホルツが残した最大のブレークスルーは、
「色は光そのものではなく、人間の感覚が生み出す現象である」
という視点でした。
彼は、先行するトーマス・ヤングの理論を発展させ、
**三色説(ヤング=ヘルムホルツ説)**を確立します。
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人間の網膜には、赤・緑・青に反応する3種類の錐体がある
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光は無数の波長を持つが、脳はこの3つの信号を組み合わせて色を感じる
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つまり、私たちの見ている世界は脳が再構築した色の世界
この考え方は、単に光学の理論ではなく、
**「人間は光をそのまま見ていない」**という根本的な気づきにつながりました。
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錯覚研究への扉が開く
三色説を通して、ヘルムホルツはこう問いかけます。
「私たちが見ている世界は、現実そのものだろうか?」
色は光学的な事実であると同時に、脳がつくる解釈です。
この視点は、後の錯覚研究や色彩心理の出発点となりました。
例えば、背景や明るさによって色が違って見える現象は、
光そのものの変化ではなく、脳が勝手に行う補正の結果です。
ヘルムホルツは、この補正を科学的に説明できる道を開きました。
デザイン・色彩理論への現代的つながり
このブレークスルーは、現代のデザインにも直結します。
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補色・コントラスト・明度差の演出は、脳の補正を利用した錯覚効果
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ブランドカラーや広告デザインは、人間の色覚特性に基づいて成立
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「色彩心理学」は、ヘルムホルツが開いた科学の上に成り立つ応用分野
つまり、19世紀の科学的発見は、
21世紀の広告・UI・空間デザインにも生き続けているのです。
第4章|無意識的推論とは? 錯視を生む“脳の補正”を科学したヘルムホルツの視点
人間は“勝手に解釈する生き物”
ヘルムホルツが残した革新的な考え方が、無意識的推論です。
人間は、目に入った光の情報をそのまま認識しているわけではありません。
過去の経験や状況をもとに、脳が自動的に**「こう見えるはずだ」**と補正してしまうのです。
たとえば、私たちは次のような場面で無意識に推論を働かせています。
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遠くの建物は実際には大きいのに、小さく見える
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暗い中で白い紙は灰色に見えるが、「白いはずだ」と脳が補正する
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影のある部分でも、脳は「この色は明るいはず」と勝手に判断する
これが、錯視の正体です。
光は変わっていないのに、脳が解釈を加えることで“別の世界”が見えてしまうのです。
ヘルムホルツが科学にした“錯視の世界”
19世紀以前、錯覚は不思議な現象として扱われることはあっても、
科学的な研究対象ではありませんでした。
ヘルムホルツは、錯視を視覚の仕組みを解明する手がかりとして捉えました。
代表的な現象には、のちに整理される以下のような錯視があります。
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ポンゾ錯視:遠近感によって線の長さが違って見える
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ムラー=リヤー錯視:矢羽の向きで線分の長さが変わって見える
彼の研究は、こうした錯視を「脳が過去の経験をもとに補正する結果」として説明し、
視覚を単なる受動的な感覚ではなく、能動的な解釈装置として位置づけました。
デザイン・色彩心理への応用
無意識的推論は、現代のデザインにも深く結びついています。
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パッケージデザインで、同じサイズでも縦長にすると“多く見える”
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背景の色を変えると、同じ色でも“鮮やかさ”が変わって見える
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UIデザインで、影やグラデーションを使うと“立体感”が生まれる
つまり、ヘルムホルツが解き明かした錯視の仕組みは、
現代の広告・プロダクト・Webデザインでも活かされているのです。
第5章|色や光は脳が再構築している? 三色説と無意識的推論の原理を解説
光はそのまま届かない──脳が再構築する世界
ヘルムホルツの理論の核心は、こう表現できます。
「私たちは光そのものを見ていない。脳が再構築した世界を見ている。」
物理学的には、世界には無数の光の波長が存在しています。
しかし、人間の目が受け取るのは、網膜に届く光のごく一部──可視光の範囲だけです。
そして網膜には、赤・緑・青に反応する3種類の錐体があり、
この3種類の反応パターンから、脳が「色」を組み立てます。
つまり、現実の光のスペクトルは一度神経信号に変換され、
脳の中で**“色の世界”として再構築**されているのです。
無意識的推論が生む“錯覚の理屈”
脳は、ただ受け取った信号を並べるだけではありません。
過去の経験や周囲の状況をもとに、無意識的推論による補正を行います。
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影の中でも「白い壁は白い」と認識する
-
遠近感によってサイズや形を自動補正する
-
色の明るさや鮮やかさを、環境光に応じて調整する
このような処理によって、私たちは現実をスムーズに理解できますが、
同時に錯覚や錯視も生まれます。
ヘルムホルツは、この現象を理論として説明し、
「視覚は脳の解釈であり、現実そのものではない」という
心理学と光学の境界をまたぐ概念を打ち立てました。
デザインや色彩理論への示唆
この原理を理解すると、現代のデザインや色彩心理が
科学的に裏づけられることが見えてきます。
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色の見え方は環境によって変化するため、ブランドカラーの再現には背景色が重要
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錯覚を活かせば、立体感・重厚感・高級感を演出できる
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照明や光の演出は、脳の補正を前提に設計すると効果的
ヘルムホルツが示した理屈は、150年以上経った今も、
広告、建築、UIデザイン、印刷物の色設計にまで息づいています。
第6章|ヘルムホルツの理論はどこに生きている? 現代のデザイン・印刷・色彩心理への影響
科学を心理学につなげたヘルムホルツ
ヘルムホルツの研究は、単なる光学の延長では終わりませんでした。
彼が示した**「人は光をそのまま見ていない」**という発想は、
その後の心理学に大きな影響を与えます。
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ゲシュタルト心理学:人は全体としてパターンを認識するという考え方
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ハベル&ウィーゼルの視覚研究:脳が段階的に視覚情報を処理することを証明
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神経科学・認知科学:視覚は受動的でなく、能動的に構築されるという理解へ
ヘルムホルツが築いた「感覚を科学する」という流れは、
現代の脳科学・認知心理学に直結しています。
デザイン・色彩心理への応用
ヘルムホルツの理論は、科学だけでなくデザインの世界にも生きています。
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色彩設計:背景色や照明による見え方の変化を前提にした配色
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広告・パッケージデザイン:錯視や補色効果を活用した視覚誘導
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UI/UXデザイン:影やグラデーションで立体感や操作性を演出
たとえば、同じ色でも背景を変えるだけで鮮やかさが変わる現象は、
まさにヘルムホルツが科学的に説明した「脳の補正」を応用したものです。
印刷・光学の世界にも息づく影響
印刷や光学の現場でも、彼の知見は無視できません。
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印刷物の色再現:環境光による見え方の変化を考慮した設計
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カラーマネジメント:人間の色覚特性をベースにしたデジタル処理
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錯視効果を利用したレイアウト:紙面やポスターで注目度を上げる技法
つまり、ヘルムホルツの理論は、150年以上経った今も、
**「科学がデザインを支える」**という形で私たちの生活に息づいています。
第7章|まとめ|錯覚は“誤り”ではなく武器になる──脳と光の関係を解いた科学の力
人は光をそのまま見ていない
この記事を通して見えてきたのは、
「私たちは光そのものを見ているのではなく、脳が解釈した世界を見ている」
という事実です。
ヘルムホルツは、19世紀にこの考えを科学として示し、
光学を「感じる科学」へと拡張しました。
三色説、無意識的推論、錯視の研究はすべて、
**「人間の視覚は能動的な解釈装置である」**という発想に立っています。
錯覚は不便ではなく、むしろ“味方”
錯覚や無意識的推論は、私たちが世界をスムーズに理解するための仕組みでもあります。
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影のある場所でも物体を正しく認識できる
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遠近感をもとに、空間の奥行きを把握できる
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光や色の変化を即座に生活に役立てられる
そして現代のデザインは、この錯覚を逆手に取り、
広告、UI、パッケージ、建築など、あらゆる場面で人の心を動かしています。
**錯覚は不便ではなく、むしろ“デザインの味方”**なのです。
ヘルムホルツがくれた視点は、今も生き続けている
ヘルムホルツが19世紀に開いた道は、
心理学、神経科学、色彩理論、デザインのすべてに影響を与えました。
今日、私たちが色彩設計や視覚効果を考えるとき、
その背景には**「光は感じるもの」**という彼の視点があります。
日常で何気なく目にするポスターや広告の中にも、
150年前の科学者が見抜いた脳と光の物語が息づいているのです。
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