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第1章|はじめに:なぜマクスウェルの写真は「世界初のカラー写真」と呼ばれるのか
色が“写る”とはどういうことか──一枚の写真が生んだ問い
「世界初のカラー写真」と聞くと、多くの人が、風景や人物が色鮮やかに写った一枚の紙焼き写真を思い浮かべるでしょう。ですが、1861年にイギリスの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルが発表したその写真は、少し違った姿をしていました。
写っていたのは、カラフルなタータンチェックのリボン。印画紙に定着されたカラー画像ではなく、3枚の白黒写真を重ねて“色を再現する”という、当時としては極めて異例の方法でした。それでもこの1枚は、「色をどう写すか?」という問いに、科学の力で真正面から挑んだ最初の試みとして、今なお“世界初のカラー写真”と呼ばれています。
RGBの三色で“色”を再現するという発想
マクスウェルの手法は、光の三原色――赤・緑・青(RGB)を使った加法混色の原理に基づいていました。彼は、赤・緑・青の各フィルターを通して、それぞれのモノクロ写真を撮影。さらに、それらを同じ色の光で投影して重ね合わせることで、フルカラーの画像を再構成しました。
このようにして得られた“カラー画像”は、あくまで光の投影によって見えるものであり、1枚の紙やフィルムに色が定着しているわけではありません。けれども、三原色で色を構成できるという科学的な原理を、写真技術で初めて再現したという点において、この実験は極めて画期的でした。
なぜ「世界初のカラー写真」と評価されているのか
当時、写真はすべてモノクロが基本で、色が欲しい場合は後から絵の具で彩色するしかありませんでした。マクスウェルのアプローチはその流れとはまったく異なり、**「光の理論に従って、色そのものを再現しようとした」**点に大きな意味があります。
実際には3枚の白黒画像を重ねて初めてカラーになるという仕組みですが、原理的には、現代のカラー映像やデジタル画像の基礎となる“RGBで色を構成する”考え方と同じです。つまり、手法の完成度ではなく、発想の原点としての価値がこの写真にはあるのです。
写真技術の“起源”としての意義
私たちが普段目にしているカラー画像――フィルム写真も、テレビ画面も、スマートフォンのディスプレイも、その多くはRGBの三色をもとに色を再現しています。マクスウェルが提示した加法混色の原理は、それらすべての**「技術の根っこ」**にあたります。
この1枚が“世界初”とされる理由は、その物理的な完成度ではなく、色を写す仕組みそのものを、科学の言葉で明確に示したことにあります。タータンチェックの写真は、単なる画像ではなく、写真技術の歴史に刻まれた出発点だったのです。
第2章|RGBの理論と、その始まり
見える“色”を理屈で説明しようとした人たち
写真で色を写す前に、まず「そもそも色とは何か?」を理解する必要がありました。
それに挑んだのが、19世紀初頭の科学者たちです。
なかでも、イギリスの物理学者トーマス・ヤングが提唱した理論は、色彩を科学的にとらえる最初の大きな一歩でした。彼は1802年の講演で、「人間の目には赤・緑・青、それぞれに反応する3種類の受容体があり、その組み合わせであらゆる色が見える」と述べています。
さらにその理論を視覚生理学の立場から補強したのが、ドイツの医師・生理学者であるヘルマン・フォン・ヘルムホルツでした。
こうして生まれたのが、後に広く知られるヤング=ヘルムホルツの三色説です。
これは単なる仮説ではなく、私たちが目で見ている色が、たった3つの要素で表現できるという驚くべき事実に迫るものでした。そしてこの発想が、後に「RGB(Red・Green・Blue)」という色再現の原理に姿を変えていくのです。
▶併せて読みたい記事 RGBと三原色の原理──ヤング、ヘルムホルツ、マクスウェルが導いた“色の本質”
マクスウェルが「色の理論」を写真で証明した
この三原色の理論を、“見える形”で証明したのがマクスウェルでした。
彼の革新は、理論にとどまらず、それを具体的な技術として実演した点にあります。
1861年、マクスウェルは赤・緑・青の3色のフィルターを使って、同じ被写体を3枚の白黒写真に撮影し、それぞれを対応する色の光で投影装置から重ね合わせることでフルカラーの画像を再現しました。
それはまさに、「色を光の波長で分けて記録し、再び合成すれば、元の色が戻る」という加法混色の原理を写真で体現した実験だったのです。
このとき彼が用いた理論こそ、まさにヤング=ヘルムホルツの三色説であり、それを初めて視覚的に証明した人物こそマクスウェルだったということができます。
「RGB」という言葉は使われていなかったが──
マクスウェルの時代には、「RGB」という略語はまだ存在していませんでした。
しかし、彼が使った原理は間違いなくRed・Green・Blueという3色の組み合わせでした。
彼の論文や記録にも、フィルターの色として「red」「green」「blue」と明記されています。つまり、「RGB方式」という言葉は後世のものであっても、RGBそのものの考え方と実践は、彼の実験によってすでに完成されていたというわけです。
このRGBの発想は、20世紀に入ってテレビ、フィルム、そしてコンピューターのディスプレイへと応用されていきます。今では当たり前のように使われているこの技術の出発点には、マクスウェルの科学的なひらめきと実験精神がありました。
第3章|1861年の実験:マクスウェルが写した「色の正体」
写真が“色を写す”ことに、世界がまだ気づいていなかった時代
19世紀半ばの写真は、すべてモノクロでした。
現実の形を記録することには成功していても、「色を写す」という考え方は、まだ技術の外にありました。
色を表現したいときは、撮影後の写真に職人が手作業で彩色を施すのが一般的。つまり、色彩は“あとから足すもの”であって、写真そのものが色を持つという発想は存在していなかったのです。
そんな中、光と視覚の仕組みを理解していたマクスウェルは、「色もまた、写真で再現できるはずだ」と考えました。しかもそれは、単なる理論ではなく、実際に目で見ることができるかたちで提示するという挑戦でもありました。
光の三原色を使って3枚の白黒写真を撮影する
マクスウェルが実験を行ったのは、1861年、ロンドンの王立研究所。
使ったのは、赤・緑・青の3色のガラスフィルターでした。
彼は、スコットランド伝統のタータンチェック柄のリボンを被写体に選び、それぞれのフィルターを通して3回白黒写真を撮影しました。この時点で得られた写真は、見た目にはすべてモノクロです。けれども、それぞれには特定の色の光に対する反応――明暗の違いというかたちで、色の情報が記録されていたのです。
次にマクスウェルは、3枚の白黒写真を、それぞれ赤・緑・青の光で投影し、スクリーン上で重ね合わせました。すると、誰の目にも、本来のリボンと同じ色彩が再現されたのです。
この手法は、「加法混色」と呼ばれる光の三原色の理論に基づいたもの。
現代のテレビやスマートフォン、デジタルカメラに使われている色再現の基本とまったく同じ原理です。
被写体にタータンチェックを選んだ理由
この実験の被写体として選ばれたのが、カラフルなタータンチェックのリボンでした。マクスウェルがスコットランド出身だったという個人的背景もあるかもしれませんが、この柄には技術的な意味もありました。
チェック柄は色の境界が明瞭で、赤・緑・青の各成分がはっきりと分離されています。つまり、フィルターごとに異なる光の反応を比較するのに非常に適していたのです。加えて、構造がシンプルで再現の成否が一目でわかるため、実験の被写体としては理想的でした。
マクスウェルは、色の物理的な再構成を示すには、こうした明確なパターンが最も効果的であることを見抜いていたのでしょう。
色は見えたが、写真は「紙の上」には存在しなかった
ここで注意しておきたいのは、マクスウェルのカラー写真は1枚の紙やフィルムに定着されたものではなかったという点です。
3枚の白黒写真は、それぞれ異なる色の光を投影するための素材に過ぎず、最終的な“カラー画像”は、スクリーン上で3つの光を重ねたときにしか見えませんでした。つまり、現代的な意味での「1枚の写真」ではなかったのです。
けれども重要なのは、その仕組みを通じて、人間の目に「色」がはっきりと見えたことです。紙に焼き付けられていなくても、「色は写せる」という原理の実証には、マクスウェルは確かに成功していました。
この実験は、技術的に完全なものではなかったかもしれません。ですが、「色を科学で写せる」という発想そのものが、この一歩から始まったのです。
第4章|現代のカラーフィルムと、マクスウェルの原理的つながり
1本のフィルムに“RGB”が詰まっている
マクスウェルが1861年に示した「RGBの三原色で色を再現する」という原理は、今日の色彩技術の中核をなしています。
それは単なる理論にとどまらず、20世紀の写真技術の中に構造として組み込まれていったのです。
その最たる例が、カラー写真用のフィルム。
見た目には1枚の薄いフィルムですが、内部には赤・緑・青の光に反応する3つの感光層が重なって配置されています。それぞれの層が、対応する光の波長に反応し、色の情報を化学的に記録しているのです。
つまり、マクスウェルが3枚の白黒写真で“分けて”撮ったRGBの情報は、現代のカラーフィルムでは1本の中に垂直方向で積層されている。
仕組みこそ違えど、考え方は驚くほど近いものなのです。
光の強さを“層の深さ”で分けて記録する仕組み
たとえば、コダックの代表的なネガフィルムでは、上から順に青・緑・赤に対応した感光層が並び、撮影された光がそれぞれの層を通過する過程で、色の成分ごとに分解されながら記録されます。
この発想は、マクスウェルがRGBそれぞれの光で被写体を撮り分けた実験と、本質的に同じです。違いがあるとすれば、それを「同時に」「1枚の素材で」行っているという点でしょう。
マクスウェルが示したのは、色の原理そのものであり、その考え方がフィルムという実用品に進化したともいえます。
RGBはディスプレイや映像技術にも生きている
マクスウェルの加法混色の考え方は、写真を超えて、私たちの視覚環境のあらゆるところに広がっています。
たとえば、テレビやスマートフォンの画面。
そこでは1つのピクセルが、赤・緑・青の3つの光を発する素子で構成されており、その明るさを調整することで、あらゆる色を表現しています。
これも、1861年のマクスウェルの実験と同じ。
光の三原色を重ねることで色を作るという基本構造は、150年以上たっても変わっていません。
つまり、私たちが毎日見ている画面の色は、マクスウェルの原理に支えられている。
彼の考え方は、今なお現役で世界中の色をつくり続けているのです。
技術が進化しても、原理は置き換わらなかった
技術の多くは、時代とともに古くなり、やがて新しいものに取って代わられます。
しかしマクスウェルの「色の再現原理」は、どれだけ技術が進化しても変わることがありませんでした。
なぜなら、彼が示したのは視覚と光の構造そのものだったからです。
RGBという三原色、加法混色の仕組み、人間の目の三色受容体――どれも自然現象に基づいた普遍的な事実であり、発明ではなく“発見”に近いものだったのです。
科学の多くはやがて更新されるものですが、マクスウェルの理論は今も土台として生き続けています。
それは彼が、“時代の技術”ではなく、“色そのものの構造”を見抜いたからにほかなりません。
第5章|まとめ:マクスウェルが切り開いた“色を写す”という発想
色を科学で写すという考え方
19世紀の写真は、モノクロが常識でした。
色を加えたいときは、職人があとから手で彩色するしかなかった時代に、光そのものの性質を使って色を再現できるのではないかと考えた科学者がいました。それが、物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルです。
1861年、彼は赤・緑・青の3色のフィルターで被写体を撮影し、それぞれの画像を同じ色の光で投影して重ねるという方法で、世界で初めて「色が再現された写真」を生み出しました。
これは、ただ新しい技術を生んだというだけでなく、写真の役割そのものを変える発明でした。形だけでなく、色まで写せる。そう示されたのは、この一歩が最初だったのです。
写真で“色の仕組み”を証明した
マクスウェルの写真は、私たちが想像するような一枚のプリントではありませんでした。3枚の白黒写真を異なる光で投影し、重ねて色を再構成するという、いわば“見せる実験”でした。
それでも、その画像の中に確かに“色”が見えた――これが決定的でした。
彼は、色はただ感じるものではなく、理論に基づいて再現できる構造であると示したのです。
それは、写真技術が“感覚”から“科学”へと変わっていく転換点でした。
時代が変わっても、原理は変わらなかった
技術は時代とともに進化します。
けれども、マクスウェルが示した**「RGBによる加法混色の原理」**は、今日に至るまで色再現の基礎として使われ続けています。
それは、彼の発想が時代の技術に依存したアイデアではなく、光と視覚に関する普遍的な原理に基づいていたからです。
テレビ、ディスプレイ、デジタルカメラ、スマートフォン――私たちの身の回りにある“色のある世界”は、すべてこの原理の延長線上にあります。
そしてその原点が、1861年のマクスウェルの実験だったのです。
「未完成の写真」から始まったすべて
タータンチェックのリボンを写した、あの写真。
1枚に定着されたわけではなく、商業的な写真でもなく、実用化までには何十年もかかりました。
けれども、それでもなお、マクスウェルの写真は「世界初のカラー写真」と呼ばれ続けています。
理由は明快です。彼が写したのは、リボンではなく、“色の写り方そのもの”だったからです。
RGBという概念を、写真で実証し、科学としての色再現に道を開いた。
それが、マクスウェルの真の功績であり、現代につながる“色を写す”すべての技術の出発点だったのです。
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